記事

なぜ今、郵政の業務拡大か

日本経済新聞は22日の朝刊で、自民党がゆうちょ銀行の貯金とかんぽ生命の生命保険の限度額引き上げの検討に着手すると報じました。春の統一地方選をにらみ、集票力の強い郵政関連団体に配慮する狙いですが、政府系金融のままでの業務拡大には民業圧迫の疑問がわきます。

 いわゆる「郵政民営化」は小泉純一郎元首相の看板政策で、国民の貯金を吸い上げて非効率な投資に垂れ流す仕組みを廃止するのが主な狙い。貯金や保険は民間の銀行や保険会社でも提供できることから「官から民へ」の流れを加速するという目的もありました。

 しかし、郵政関連団体の支援を得た民主党と国民新党が政権交代を実現。郵政民営化の流れは大幅に後退しました。そうした中で元々収益力の低かった銀行や保険会社からは限度額の引き上げを求める声が出ていました。

 確かにゆうちょ銀行などを傘下に抱える日本郵政は今秋に上場する計画で、政府の保有株も現在の100%から大幅に減る見込み。しかし、上場後も政府が株式の3分の1超を保有し続ける計画で、完全な民営化とは言えません。そして政府系金融には破たん時に政府が補てんしてくれるだろうという強み優位点があります。民間金融機関と同条件ではないのです。

 確かに過疎地にはゆうちょ銀行やJAなどしか金融機関がなく、現在1000万円の貯金限度額では地域住民にとって不便という声もあるでしょう。しかし、都市部には民間の金融機関があり、そうした意見は当てはまりません。地域実情を無視して全国一律に業務拡大すれば、一部の地域では確実に民業圧迫となります。業務拡大は地域を限定するか、完全民営化後とすべきではないでしょうか。

 自民党が業務拡大を検討する狙いは、郵政関連団体の集票力です。いわゆる特定郵便局長会をはじめとする郵政関連団体はかつて100万票の集票力があったとされ、統一地方選を控えて彼らにすがりたいというのが自民党幹部の本音。しかし、それではあからさまに票を政策で「買う」のと同じです。

 経団連の献金再開といい、郵政の業務拡大といい、自民党は相変わらずやり口が古いまま。維新の党は特定の業界団体に選挙で頼らず、政策をゆがめる企業・団体献金を廃止する法案も準備しました。

 声の大きい特定の業界ばかりが優遇される政治から、有権者の声なき声が届く政治へ。その実現には一般の有権者が政治に関心を持ち、投票率を上げることが欠かせません。

あわせて読みたい

「日本郵政」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    河野大臣「ワクチンは十分に足りている」接種状況について説明

    河野太郎

    08月03日 09:13

  2. 2

    在宅勤務で生産性低下した国は日本だけ? 背景に対面コミュニケーション依存の働き方

    非国民通信

    08月02日 15:12

  3. 3

    森林大国ニッポンが木材不足のナゾ ウッドショックは林業に変革をもたらすか

    中川寛子

    08月03日 08:07

  4. 4

    男性視聴者の眼福になっても女子選手が「肌露出多めのユニフォーム」を支持する理由

    PRESIDENT Online

    08月02日 15:27

  5. 5

    この1週間を凌げば、オリンピックが終わります。もうしばらく我慢しましょう

    早川忠孝

    08月02日 14:37

  6. 6

    コロナ軽視派「6月で感染者数減少」予想大ハズレも、重症者数が大事、死亡者数が大事とすり替え

    かさこ

    08月02日 10:29

  7. 7

    来るべき自動車産業戦国時代を勝ち抜ける日本がなぜEVなのか?

    ヒロ

    08月03日 11:52

  8. 8

    何をやっても批判される「老夫婦とロバ状態」の日本

    内藤忍

    08月02日 11:52

  9. 9

    人権尊重、企業は本気か-DHCの不適切文書に批判

    山口利昭

    08月03日 08:42

  10. 10

    「日本の携帯大手と正反対」ネトフリが幽霊会員をわざわざ退会させてしまうワケ

    PRESIDENT Online

    08月03日 16:00

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。