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日本のマスメディアが取り上げない海外インフルエンザ情報

 世界のマスメディアが取り上げているパンデミックインフルエンザ情報の多くが、国内に伝えられていない。国民の大多数が日本語以外のニュースを目にしない我が国では、海外情報が日本語に訳されて、国内に伝えられない限り海外情報鎖国国家といえる。 

国内マスメディアがほとんど取り上げていない、パンデミックインフルエンザに関する世界的情報を以下にまとめた。マスメディア関係者、医療関係者、さらに行政関係者がどれだけ知っているかは疑問である。 


  • (1)WHOに関連する専門家達の”利益相反(conflict of interest)”問題




この問題は、2010年3月から6月にかけて、ドイツ”シュピーゲル誌”特集(3月)、英国医師会雑誌(BMJ)論説(6月)、およびヨーロッパ評議会報告書(6月)で取り上げられた。欧米、および途上国の報道機関の多くがウエブで報道した。 

その論点は以下の通りである。  


  • ■豚インフルエンザ(A/H1N1インフルエンザ)は巨大製薬企業の影響下で過剰に煽られ、WHOは”偽りのパンデミック宣言”を行った可能性がある。その宣言で世界の製薬企業は巨額の利潤を得た。


  • ■WHO顧問の専門家達は、巨大製薬企業から経済的供応を受けていた事実がある。


  • ■多くの国は、WHOの過剰なパンデミック対策勧奨により巨額の公共予算を浪費した。



 

BMJの長大論説の概要を紹介する。

「BMJと調査報道ジャーナリスト協会(Bureau of Investigative Journalism)の共同調査により、WHOにパンデミックインフルエンザに関してアドバイスする専門家達の”利益相反(conflicts of interest)”にある立場を、WHOが公正に対処していなかった疑い、そしてWHOの各国政府に対するアドバイスの背景にある不透明な科学性に、問題があることを示す根拠が明らかになった。 

インフルエンザワクチンや抗インフルエンザ薬を開発している企業から経済的供応を受け、そして共同研究を行っている専門家達からWHOがアドバイスを受けていたことは適切であったのか? 

なぜWHOの基本的パンデミック対策ガイドラインが、ロッシュ社とグラクソスミスクライン社から、他の共同研究で経済的供応を受けていた専門家により作成されたのか? 

さらにチャンWHO事務局長が答申を求めた緊急会議メンバーの名前が秘密にされ、WHO内部でしか公表されていないのはなぜか? 

我々はWHOが医科学内部に内在する利益相反(conflicts of interest)を効果的に対処する能力を保有していることに疑問を抱いている。」 


論説を発表したBMJ編集部に数日後、マーガレット・チャンWHO事務局長が、事実を否定する内容を記したメールを送り、それがWHOのウエブに掲載された。そして各国の報道機関がそれをニュースとして報道している。 

WHOに対する批判に対して、現在WHOの外部検証委員会が調査中である。 

事の真偽は別として、なぜ日本のマスメディアはこれらの事実を報道しないのだろうか?その理由を筆者は以下のように推察している。 

ヨーロッパにおける、”WHOによるパンデミック宣言の必要性はあったのか”というWHO批判問題を日本国内に持ち込むことは、日本における新型インフルエンザ対策の根本的検証につながる。 

昨年、マスメディアの報道内容で日本の新型インフルエンザ騒動が生じた可能性が高い。 

マスコミ報道で新型インフルエンザを心配する保護者達の動揺が、病院への負荷量を過剰なものにした。特に夜間および休日の当番医療機関へは、史上初ともいえる数のインフルエンザ様症状の子供達が殺到した。当初から通常の季節性インフルエンザよりも軽症で死者数も非常に少ないことが分かっていたにも関わらずにだ。 

様々なマスクや空気清浄機などの過剰な新型インフルエンザグッズは凄い勢いで売れ、経済関係の報道機関は、”新型インフルエンザ特需”なる表現も用いた。 

”新型インフルエンザありき”から日本の全ての対策と報道が始まった。 

”新型インフルエンザ”であるから”怖い”という恐怖感が社会の中に広がった。 

社会の中に広がる不安感をマスメディアは色々な角度から報じ、それはパニック化した。発生しているインフルエンザがそれほど怖いものではないと言うことは、あまり報じなかった。 

そうした状況を国や各地の自治体は黙認した。自治体(保健所)によっては、H5N1インフルエンザとの違いを認識できずに、さらに煽りに近い情報を流したところもあった。 

WHOのパンデミック宣言が妥当であったかという、ヨーロッパでのWHO批判問題は、日本では厚生労働省の担当部署を初めとして、保健行政関係者、およびマスメディアには馴染まない可能性がある。 

それは自分たちの自己検証につながるからである。 

上記問題を報じないのは、ある意味でマスメディア自身による報道管制に近いのかも知れない。 

または国の発表する”大本営発表”しか記事にしない姿勢が、マスメディアには定着したのかも知れない。 

日本語の報道しか目にしない国内の多くの人々は、WHOが宣言したパンデミックインフルエンザに、海外でこのような批判が起きていることを知らない。 

真実を知らせる責務はどこに、誰にあるのだろうか? 

 


  • (2)欧米各国で大量の豚インフルエンザワクチンが余り、社会問題となっている事実。




国内でも大量のワクチンが余っている。 

欧米でワクチンの発注量が過剰であることが分かりキャンセル交渉が始まりだした頃(2009年12月〜2010年1月)、日本では大量の海外メーカーのワクチンを発注している。国産ワクチンが約4500万人分しか製造されていないということから、合計1億人分以上のワクチンを用意する計画を立てたようだ。通常の季節性インフルエンザワクチン接種率も3割前後である日本で、新型インフルエンザワクチンの接種率が5割を超える可能性はなかったし、また昨秋には新型インフルエンザが軽症であり、ワクチン接種が必要であるかについて、欧米では批判が出ていた。 

海外メーカーのワクチンには、免疫刺激剤としてのアジュバントなる化合物が加えられている。アジュバントの副作用を恐れて、米国ではアジュバント抜きのワクチンを発注していたし、カナダでは妊婦に対してはアジュバントの加えられていないワクチンを使用している。 

日本ではそうしたことを余り考慮せずに、日本では使用経験のないアジュバント入りのワクチンを大量に発注している。 

結局海外に発注した1億人分近いワクチンは、使用されずに余ってしまった。数百億円レベルの話である。 

そうした事実、さらにワクチンの効果、必要性、欧米での状況など、一切国内のマスメディアでは伝えていない。 

またワクチン接種にも関わらず、6月に沖永良部島の小学校で新型インフルエンザが集団発生した事例も報道されていない。 

 


  • (3)香港で中国産の豚からA/H1N1ウイルスと他の豚インフルエンザウイルスの遺伝子が再集合した、新規豚インフルエンザウイルスが分離された事実。 




幸いに検出されたウイルスは、他の豚や人へは感染はしていなかった。 

しかし豚の中で新規インフルエンザウイルスが誕生する危険性を、米国のニューヨークタイムズ他、多くの海外報道がニュースとして取り上げている。 

日本では完全に無報道であった。 

米国CDC(疾病予防管理センター)のカロリン・B・ブリッジ博士は、タイムズの取材で次の様に語っているが、全く正論である。 

「我々がパンデミックを経験したからと言って、さらに他のパンデミックを経験する危険性が低下したことはない。パンデミックに対する警戒は維持する必要がある」。 

なぜ国内のマスメディアはこれら情報を伝えないのであろうか? 

昨年あれだけ過激にA/H1N1新型インフルエンザを報道したが、それはインフルエンザの拡大とその被害を警戒したからではなかったのだろうか?それとも単に報道争いとして記事を乱立させたのだろうか? 

海外で問題となっている事実が国内に伝えられないことは、ある意味では非常に危険なことである。 

マスメディアによる情報の取捨選択が公正なものであるか、それを監視する機関はない。 英語報道を直接目にする多くの欧米社会では、国際的通信社、各国の報道機関、大手ウエブサイト等で英文による情報が入手出来るから、社会は正しい情報を評価できる機会が多い。 

日本は、日本語という壁で、情報鎖国状況にあるといえる。 

日本語の壁を取り払い、世界の情報が絶えず国内に伝えられる環境にならなければ、日本人はいつまでも国内情報だけで全てを判断する習性から脱皮できない。 

かわら版で黒船来航を知った江戸の人々と基本的に変わらないかも知れない。 

そうした状況は社会危機管理上、大きな危険性をはらんでいる。

--- 外岡立人(医学ジャーナリスト、医学博士)

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