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新年度予算(政府原案)に関する講評

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 平成27年度(西暦2015年)の国家一般会計予算原案が本年1月14日に閣議決定されて目下国会審議中であり、多少の修正はあろうが、与党圧倒的という勢力下では大きく改められることはないから、取り敢えずその講評をしておこう。

ご案内の通り、本年度の政府一般会計当初予算原案では、総額96兆3420億円で、前年比+0.5%となっているが、冒頭にこの数値の語呂合わせで内容を評価し表現すると、「苦労(96)の末の超(兆)目先の人気取りを考えた、差し当たりには(3420)は無難な予算といえる。

 つまり、相変わらずというべきか、本年4月に実施される統一地方選挙対策や、既に予定されている法人課税の実効税率引き下げなど、上層部大企業や富裕層から先ず優遇・支援したり、農政改革や地方支援の強化などをすることで、そのトリックル・ダウン(Trickle・Down=液体が少しづつゆっくり下部に滲むように流出する様)効果で景気が回復するであろうことを念頭に置いた、目先の人気取りや政権の安定的維持を図るといった面に配慮し、飴と鞭、景気浮上のアクセルと財政健全化のブレーキとを散りばめた悪賢い抜け目のない政治家としての戦術的予算編成であるとはいえようが、景気回復の恩恵から取り残されて困窮する中小零細企業者や、庶民、高齢者など票と政治資金源とならず、声を上げない社会的弱者には皺寄せの負担と犠牲を強いるといった冷淡さと、貧富格差は自由・資本主義社会ではある種の発展の刺激剤になるといった固定観念を改めず、その是正には消極的であること、アメリカ追従とタカ派姿勢をより鮮明に打ち出し、世界平和の希求とは逆行すること、将来のわが国のあるべき姿を展望・深慮した未来先取り志向、国民意識の抜本的転換や国家体質の根本的改革を目指す予算(案)とは言い難いものであったことなどは誠に残念である。

 トリックル・ダウンといえば聞こえが良く、このまやかしの美辞麗句に惑わされて、アベノミクスによる景気の急回復に期待する向きも多いようだが、この語句には、「お裾分け」とか「おこばれに預かる」といった消極的な意味も含まれ、その実態は決して、水源の小さな渓流が下流に至るに従い支流の水流を集めて裾野を広げ大河となり、末端まで豊かにするといった「川の流れ」のようなものとはならない。

 むしろ、大きな樽に仕込まれた原酒が、醸成過程で樽板に染込んで次第に減量したり、酒税や流通過程での段階的経費などを見込んで搾りに搾り尽くされ、最後は新酒の風味もアルコール分も抜けてしまいかすかすの残り糟の酒粕となるように、末端にまで上層部と等量の富が公平に分配がされるものではないし、その浸透のテンポは鈍く長期間を要し、末端にまで好況の恩恵が及ぶようになりだす頃には、また次ぎの不況の波が、逆に一番早く襲いかかるということになろう。

 また、昔から「利は元にあり」といわれるように、現在の主流を成すアメリカ流の自由・資本主義、市場競争本位の金融資本主義経済体制の下では、恵まれた資産所得のある富裕者は益々不労所得を得て富むが、元手資本に乏しい貧窮者は、いくら努力し働いても報われず、下層部所得が1割増加した時には資産保有者の所得は約8倍も増加するといった構造になっており、だから余程の幸運に恵まれるか際どい手段を用いない限り、貧しい労働者が人並み以上に儲けることは不可能であり、一生浮かび上がれず、貧富格差は収縮しないばかりか、逆に増大することとなるのは明らかである。

 この点に関しては、近年、脚光を浴びているパリ経済学院のトマ・ピケティー教授が「21世紀の資本」という著書で述べられている、過去200年にわたる欧米経済の統計資料分析から導き出された結論が立証する。教授は、「だから近代の欧米自由資本主義には根本的な矛盾があり、これを是正するには、現代のフロー主体の税制をストックにも課税するように改め、富裕者への応能負担累進税率課税が、低所得者には減税が必要」とも述べておられるが、これは筆者が真理の経済論として20年来主張してきたこととも合致する考え方なので、賛同の意を表したい。

 にもかかわらず、安倍政権の基本姿勢は、さらにこの貧富格差の拡大を助長しようとするものであるから、「今は良い良い、明日が怖い」というものでしかないことを、どうして日本人には見抜けないのか、ちょっと冷静になれば、外観的に背伸びをした大きさや発展より、庶民生活の安定と向上が政治・経済発展の主眼でなければならなず、樹木や、国家や企業や人間も、根っこがしっかりとしてこそ、大きく元気に伸び育つものと誰にでも気づけるこおではなかろうか。

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