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Twitterの歴史と思想、4人の創業者たちのドラマ~Twitterはどこから来て、どこへ向かうのか~【前編】

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Twitterは誰かひとりの思想の下で動いている一枚岩のサービスではない

こうして新しくCEOとなったウィリアムズの下、Twitterは「自分以外の誰か」を中心とした設計に変わることとなりました。

つまり、Twitterは誰かひとりの思想の下で動いている一枚岩のサービスではないということです。共同創業者たちによってその思想は二転三転し、ユーザーとしては全く違和感のないままに、裏側ではこんなドロドロの社内政治が行われていたんですね。

ちなみにウィリアムズも2010年にはCEOを退任し、当時COO(最高執行責任者)であったディック・コストロにCEOの座を譲りました。2015年2月現在もCEOはコストロのままです。

これは私見ですが、ベンチャー企業が成り立つまでと、そこからさらなる成長していくための戦略は、同じ「経営」という言葉で括れないほど違うものです。創立者であっても自分の能力が一番活かせる場所をわかっていて、それがCEOでないのなら素直に引くという判断ができるのは単純に凄いなと思いますね(ウィリアムズはサービスの改善や開発に専念し、肩書は共同創業者となりました)。

参考記事:
速報:TwitterのCEO、Evan WilliamsからDick Costoloに交代―Williamsは戦略とビジョンに専念

ソーシャルメディアの歴史における分水嶺となった買収劇

2008年11月、Facebookのマーク・ザッカーバーグが、当時収益がゼロに近かったTwitterを5億ドルで買収しようとしました。現在それぞれが別の道を歩んでいることからもこの買収が失敗に終わったことはわかるかと思いますが、実はこの買収劇にもジャック・ドーシーエヴァン・ウィリアムズが大きく関わっています。

買収を持ちかけられた時期はすでにドーシーがCEOから降ろされ、ウィリアムズが陣頭指揮を執っていた頃ですね。しかしこれは、ザッカーバーグにとっても意外なことだったのかもしれません。ザッカーバーグが当時CEOであったドーシーに買収を持ちかけたのは、この11月より何ヶ月も前のこと。ドーシーは5億ドルという額に興味を引かれていたそうですが、10月にCEOを退任させられたため、ザッカーバーグはウィリアムズビズ・ストーンと交渉することになったのです。

運とタイミングの悪かったザッカーバーグ

5億ドルの中にTwitterの潜在的な成長による価値が含まれていないと判断したエヴァン・ウィリアムズは、この買収を断りました。新しくCEOに納まったばかりであったウィリアムズにとって、Twitterは希望に満ちていたのですね。ザッカーバーグにとっては運とタイミングが非常に悪かったと言わざるをえません。

この買収劇に関して、ウィリアムズはブログでこのように述べています。

その買収提案は巨額だった―投資家始めTwitterの関係者全員にとって大成功を意味した。しかし私には魅力がなかった。当時われわれはまだちっぽけで、将来性を疑う声も依然として多かったが、私はTwitterの可能性は無限だと考えていた。

Twitterの場合、われわれは誰も売る気がなかった。私はCEOになったばかりで、Twitterの成長のために全力で働こうと張り切っていた。われわれのチームは全員そうだった。それに買収を提案してきた会社はわれわれと特に相性が良さそうに思えなかった―もし相性のいい会社だったら皆大喜びしたはずだ。

FacebookはTwitter買収に失敗していた―『Twitterの誕生―金、権力、友情、裏切りの物語』近刊より引用

ちなみにウィリアムズは以前、GoogleにBloggerを売却した経験があるので、買収の意味合いについては理解していたものと考えられます。この買収劇は今につながるソーシャルメディアの歴史における分水嶺と言えるでしょう。

TwitterがFacebookに買収されたとしたら…?

もしもこのとき、TwitterがFacebookに買収されていたとしたら、2015年のソーシャルメディア界隈はどうなっていたのでしょう?ソーシャルメディアラボがその可能性について考えてみました。

・Facebookが世界におけるソーシャルメディアのシェアの内、9割を奪っていたのでは?
・FacebookのタイムラインとTwitterのタイムラインが並列で表示されるUIになっていたかも。
・Twitterの匿名可能性に準じ、Facebookは実名制の姿勢を崩していた?
・アカウントを統合し、実名・匿名を使い分けながらふたつのタイムラインにポストできるようにしていた?
・Twitterの利点をうまく扱えず、結局切り離すはめになっていたのでは?

編集部でいろいろと考えてみましたが、私たちにザッカーバーグのような発想力はないとはいえ、どうもFacebookとTwitterがうまく親和するとは思えませんでした。現状うまく住み分けている(ように見える)この2つのソーシャルメディアが、別々のサービスとして存在してくれてよかったなと思いますね。

隠れたキーマン、ビズ・ストーンが描くTwitterのコミュニケーション設計

さて、ここまでTwitterの歴史と思想を振り返ってみて、ひとりだけ全く触れていない共同創業者がいることにお気づきでしたでしょうか。

これだけゴタゴタがあったというのに、全く関わっていないが如く存在するビズ・ストーン。彼は何者で、何を担っていたのでしょう。

実は彼こそが、Twitterのコミュケーション設計思想に大きく関わっている人物だと言われているのです。

人の性質は善、サポートすれば人は善いことをする

ストーンが担っていたのは「伝えること」

自分が何をしたいのか、会社が何をしたいのか、会社内で今何が起こっているのか。それをユーザーや社員に向けて伝えていきました。毎週のようにニュースレターを発行したり、公式ブログでの執筆、場合によっては直接社員と会って話をし、自分たちが取り組んでいることがどれだけ大事であるかについて、あくまで明るく前向きに伝える努力をしていました。

良いことだけではありません。悪いこともしっかりユーザーに伝えようとします。Twitterでは度々システムがダウンしましたが、エンジニアに話を聞いて何が原因だったのか究明し、その結果わかったことは公式ブログで説明しました。

広報部は多少話を盛りながら自社製品をアピールするものですが、ストーンが目指したのはそれとは真逆。良いことばかりを吹き込んで、悪いものにはフタをしておくようなサービスにユーザーは人間味を感じません。例え失敗したことでもきちんと理由を説明し、今後どういった解決策を考えているのかを詳らかにすれば、ユーザーはサービスを信頼しようとするものです。

「究極的な人間の性質は善である」という思想

ビズ・ストーンが人間を信じていたからこそ、ツールでありながら人間味を持ったTwitterは広く受け入れられたのかもしれません。

考えてみればストーンが入社したGoogleは、優先順位としてテクノロジーが第一で、次に人間がくる会社です。しかしストーンは人間がテクノロジーより先にくるべきだと考えていました。

自身のブログが、GoogleにBloggerというサービスを売却したばかりであったエヴァン・ウィリアムズの目にとまり、それが縁でGoogleに入社できたストーンは、プログラミングもできず大したスキルも持っていませんでした。

プログラミングはただの数式にすぎない。その数式に人間味を吹き込むのがストーンの役目だったわけですね。

ユーザーの善意を増幅するツール

人間を信じるビズ・ストーンは、「ユーザーが主役である」ことをコミュニティ哲学のひとつとして置いています。Twitterというコミュニティサービスがどれだけ大きくなったとしても、主役はサービスではなくユーザーにあると説きます。

得てして大きなメディアやプラットフォームを運営していると、自分の手のひらの上で思い通りにサービスを動かしているという、ある種の全能感に陥ってしまうことがあります。Twitterは会社としての意見を持たず、あくまでユーザーをサポートすることに徹するべきであると考えているのですね。

そして、「ユーザーの善意を増幅する」ツールとしてあるべきと捉えているようです。

参考記事:
Twitterのコミュニティ哲学とは?創業者の本の解説を書きました

悪意は長続きしない

「ユーザーの善意を増幅する」と聞いて、首を傾げる方もいらっしゃるかもしれません。Twitterでは度々炎上騒ぎが起こりますよね。

学生がアルバイト先の飲食店で食器洗い洗浄機に入ったり、コンビニでアイスのショーケース入ったりしているところを写真に撮って身内宛にツイートしたところ、あっという間に拡散されて袋叩きにあい、アカウント閉鎖に追い込まれたり自宅や本名を特定されてしまったりする事件が社会問題にもなりました。

こういったセンセーショナルな事件が起こると、どうしてもソーシャルメディアの闇の面がクローズアップされてしまいます。しかし、ほとんどユーザーは良心的な思考でツールを扱っています。そんな普通のことはニュースにならないだけで、ほとんどは良心的なユーザーで回っているものなんです(そうじゃなければ自然に滅びていきますよね)。

悪意を維持するのには多大なるエネルギーが必要です。だから悪意は長続きしません。傍から見ると悪意の巣窟のように見えるインターネット掲示板の代名詞・2ちゃんねるも性善説でつくられていると、創設者の西村博之氏は述べていました。

善意で使うユーザーの多いコミュニティサービスは、自然と自浄作用が働くものです。ビズ・ストーンが目指したコミュニティ哲学はこういったところにあるんですね。

参考書籍:
ツイッターで学んだいちばん大切なこと――共同創業者の「つぶやき」

参考記事:
Twitterのコミュニティ哲学とは?創業者の本の解説を書きました
ツイッター創業者ビズ「僕がツイッターのコードに人間味を付け加えた。」

前半のまとめ

さて、Twitterのコミュニケーション思想を支えているのがビズ・ストーンであることが、なんとなく分かっていただけたのではないでしょうか。上記古川健介氏の解説によると、ジャック・ドーシーは140文字のミニマリズム追求、エヴァン・ウィリアムズは個人のメディア力をエンパワーメントする部分で能力を発揮していたとのこと。

Twitterは幅広いユーザーのリクエストに応えられる自由なコミュニケーションツールですが、様々な考え方を持っているのは共同創業者たちも同じこと。個性と個性がぶつかり合って生まれたのがTwitterといえるのかもしれません。

明日公開する後編では、共同創業者4人全員がTwitter社から離れてしまった今、Twitterはどこへ向かうのか、共同創業者たちはどこへ向かおうとしているのかについてをまとめ、その思想の着地点を探ります。

以上、『Twitterの歴史と思想、4人の創業者たちのドラマ~Twitterはどこから来て、どこへ向かうのか~【前編】』でした。

明日の後編もお楽しみに!

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