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裁判員制度の意義が揺らぐ? だったら死刑にすべきなのか 岡田成司氏の見解

 毎日新聞に以下のような見解が掲載されました。

 岡田成司氏という文筆業の方のご意見ですが、あまりにその内容に問題があるので、これを題材にして裁判員制度について検討してみたいと思います。全文そのものが批判の対象となりますので、そのまま掲載します。
みんなの広場:薄れる裁判員制度の意義=文筆家・岡田成司・40
(毎日新聞 2015年02月16日 東京朝刊) (北九州市小倉北区)

 裁判員裁判で言い渡された死刑が破棄されたり、懲役22年の判決が差し戻されたりと、市民裁判の存在意義が薄らいでいることに歯がゆさをおぼえる。

 裁判員制度が導入された背景には、社会の常識と良識を司法に反映させるため、判決にいたるまでの迅速な処理、被害者の尊厳回復や遺族の救済を実現させる目的があったはずだ。

 裁判員に選ばれた市民は、被告人を再び私たちの住む社会に迎え入れることができるか、被害者と遺族の立場に立って熟考し、社会正義の遂行を願っているのだ。それを、職業裁判官たちが六法全書や判例を盾にして覆す有り様である。彼らが見ているのは、紙の上の手続きと出来事なのだ。

 市民が持つ、被害者と遺族に寄り添う「思いやり」の精神が欠落しているのならば、裁判員裁判など絵に描いた餅でしかない。裁判官たちには、プロ意識よりも謙虚さを求めたい。
 最高裁が裁判員裁判による死刑判決を破棄した東京高裁の判決を支持し、検察側の上告を棄却しました。

 マスコミなどはこぞって先例重視などという言われ方もしていますが、実質的には法の下の平等の要請です。

 同じような事案で、この被告人は裁判員が死刑にしたのだから死刑、方や無期懲役としたなら無期懲役、というのでは特に死刑事案では、明らかに不合理です。

 岡田氏の思考には、この視点が一切、抜け落ちてしまっているのです。

 それを「職業裁判官たちが六法全書や判例を盾にして覆す有り様」などと主張するのですが、全くもって見当外れの批判でしかありません。

 岡田氏が主張するこの部分も明らかに間違っている部分です。
「裁判員制度が導入された背景には、社会の常識と良識を司法に反映させるため、判決にいたるまでの迅速な処理、被害者の尊厳回復や遺族の救済を実現させる目的があったはずだ。」
「被害者の尊厳回復や遺族の救済を実現」とはどのような意味で用いているのでしょうか。裁判員制度の導入目的は、司法審意見書(2001年6月)には次のように書かれています。
国民は、これまでの統治客体意識に伴う国家への過度の依存体質から脱却し、自らのうちに公共意識を醸成し、公共的事柄に対する能動的姿勢を強めていくことが求められている。国民主権に基づく統治構造の一翼を担う司法の分野においても、国民が、自律性と責任感を持ちつつ、広くその運用全般について、多様な形で参加することが期待される。
要は、国民に対し、今までの国家依存体質を改めて統治に責任を持てということなのですが、それだけのことです。ここに裁判員制度の意義があるということなのですから、岡田氏の主張する裁判員制度は独自の見解でしかありません。

 もとより、いずれの裁判員制度の意義も有害無益でしかなく、さっさと廃止されるべきものであることに変わりありません。

 岡田氏のこの部分は刑事手続きが全く分かっていないということを示しています。
「市民が持つ、被害者と遺族に寄り添う「思いやり」の精神が欠落しているのならば、裁判員裁判など絵に描いた餅でしかない。」
 岡田氏の見解では、裁く側が公正中立な判断者とはほど遠く、もろに被害者に対して感情移入をしてしまっていることを肯定しています。これでは公正な裁判ができようはずもありません。

 仮に被告人の有罪が認定した後であっても同じことです。量刑判断において、感情移入したままで判断することが公平と言えるはずもないのです。

 刑事訴訟手続は憲法31条以下で規定されているように、本来的に罪を犯したと疑われた被告人を刑事手続きに則り、有罪であるかどうかを認定し、有罪である場合には刑罰を科す手続きです。

 要は、刑罰によって本来的に自由であることに対し制約を課すということです。死刑判決は生命を奪う手続きであって、刑事訴訟手続きは、被告人の人権を制約する手続き、即ち、国家 対 被告人の構図になる手続きです。

 岡田氏は、この基本原則がまるで理解できていないのです。

 そして言うに事欠いて、「裁判官たちには、プロ意識よりも謙虚さを求めたい。」だそうですが、刑事手続きの正義が何たるやを全く理解できないことを露呈しているだけなのです。

 この岡田氏の根底にあるのは、裁判官非常識論ですが、マスコミなどが流した俗説をそのまま無批判に受け入れ、垂れ流しているだけのものです。

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