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<なんで、これが大賞?>売れっ子放送作家が選んだ「テレビ・オブ・ザ・イヤー2014」が「笑っていいとも・最終回」

吉川圭三[ドワンゴ 会長室・エグゼクティブ・プロデューサー]

***

太田出版のサブカルチャー雑誌「クイック・ジャパン」118号で、年に一度の恒例の座談会「テレビ・オブ・ザ・イヤー2014」を読んだ。去年2014年は「該当する大賞なし」という結論を出し選者である11人の放送作家が骨のある姿勢を見せたが、今年は大賞が「笑っていいとも・最終回」だった。

大物タレント・大物芸人がこれでもか、これでもかと出演し、今まで「ありえない組み合わせ」も沢山あった。出演交渉に、当日のタレント対応にフジテレビ制作関係者は間違いなく胃を痛めただろう。筆者もプロだからこの調整は忍耐もいるし複雑で大変だなあと見ていて思った。

もちろん、大物芸人達のあり得ない面白い芸も目撃できた。でも、テレビ局・芸能界の制作サイドの大変な裏事情はどうあれ、一般の視聴者は「ただタレントと芸人が大勢で何か大騒ぎしてるだけだ。」と思ったかもしれない。

そして、正直言って筆者としては、「なんで、これが大賞?」と思ってしまった。

確かに「オールスター企画」は面白いし、ありえないオイシイ場面もあった。だが、これは「偉大なる長寿番組のお葬式の特別番組」だ。お葬式という特別イベントを大賞に選ぶのは何か今のバラエティ状況を示しているのだろうか?

「新聞・週刊誌・ネットで大変な話題になったから賞が贈られたのか?」

とも思った。大物タレントを集めて「スジ無し」で任せてしまう事がはたして「テレビ・オブ・ザ・イヤー」なのだろうか? それが歴史上無かったことだとしても。

この雑誌の編集者は全く本質を分かっていないと思うし、はっきり言ってありえない選択だと思った。そして準大賞は「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)だった。この番組は大変優れた番組だと思うし、いまでもハイクオリティだ。長寿番組で、確かに目には見えない改革を果たし、最近見事な復活を果たした番組だ。スタート時から関わっている作家の田中直人も語った様に「なにも変えていない」という一言もある。

往年の名選手、王・長島に賞をあげたようなものだと思うし、周りのバラエティ番組がユルーイ制作姿勢に陥ったからしっかりと作っている「ザ!鉄腕!ダッシュ!!」が再評価されたのだろうかと邪推してしまう。やはり再び視聴率が上がったのが選ばれた理由なのだろうか?

筆者もある程度事情は分かる。

今、放送作家の置かれていると状況は結構大変で、しかもほとんどの方がフリーという立場であるので微妙なバランス感覚が要求される。しかも、この11人はその中でも最優秀な部類の連中だ。芸能界の複雑な大人の事情、十人十色の芸人やタレントのクセや指向、時にイケていないディレクターの厄介な思いつきへの対応、邪心を抱いたプロデューサーの無茶な要求、これらを彼らは全て飲みこまなければならない。

または、放送作家が不満のあまり万一、居酒屋などでビールを飲みながらAD等に愚痴の一つでも口に出すと、翌日には全てに広まってしまうということもあるだろう。時には身に覚えのない故無き責任を取らされてクビにされることもあるだろう。

そういう訳で年々上記の様な厄介な傾向が強まるので、このクイック・ジャパンの対談も、みんな明るくふるまっているが、どうしても表層的になり歯切れが悪くならざるを得ない。色んな業界事情を勘案しつつ、デリケートに発言しているのが手に取るように分かる。みんな生活がかかっているし家族もいる。これはある意味、当たり前なことだと思う。

しかし、誰かが言っていたが、

「今は企画が 際立っていないほうがいい、映像の編集技術が上手い番組がいい・・・。」

・・・などという発言。

「何だそれ!」と筆者は思う。

「コンセプト無き番組なんて成立するわけなんかねえじゃねえか!」

と筆者は思うのだ。筆者は優れたコンセプトありきで演出プランをしっかり練りそのうえで適切な演者をキャスティングするのがヒットの王道だと思うからだ。

人気芸人・アイドルを5人ほど連れて鎌倉や箱根あたりに連れて行き、長回しのロケをして上手く編集する。あるいは芸人・アイドル・タレントを大勢連れてきて、ちょっとしたテーマを与えてトークさせ長回しする。上手く編集すれば面白い番組が出来る・・・。

そんな訳がない。これは何かがおかしいのだと思う。しかし「吉川さん。それは正論ですが、今の状況が分かっていないですね~。」と言われそうだが。

しかしながら、このクイックジャパン誌の座談会では、ETVの宮沢章夫の「ニッポン戦後サブカルチャー史」を評価してくれていたのは嬉しかった。実に良い企画だった。故・ナンシー関に関する言及も良かった。選ばれし放送作家11人。みんなもっと本当に好きな事をやってよ!・・・と思うのだが。

彼らが本気でやらせてもらえないとするならある意味、我々の責任もあると思う。

本音を言うと、筆者の関わった「ニコニコ動画・年末衆議院総選挙開票特番・ビートたけし乱入の1時間事件」にも少し触れてほしかったとも思った。・・・でも、ああそうか。あれはネット放送であってテレビ放送じゃなかったから評価対象じゃなかったんだ。

「いいとも・最終回」より面白かったと思うんだけどな。しかしこの一文、最後はちょっと我田引水になってしまい誠に失礼しました。

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