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「待機児童全国№1」脱出のために (「太陽のまちから」2015年1月27日)

世田谷区といえば、残念ながら2年連続で「待機児童数ワースト1」とされている自治体です。

 ただ、世田谷区がカウントしている待機児童は、「自宅で求職中」「育児休業の延長」などの子どもたちを含めています。横浜市をはじめ、ほかの政令指定市などがこれらを対象外として「待機児童ゼロ」と発表していますが、これは見せかけの数字ではないか、と私は考えています。(数え方次第で「待機児童」が半減する?

 世田谷区では、「数字のマジック」の誘惑に負けず、「ワースト1」の汚名をかぶってでも、実態により近い数字を発表しています。昨年4月は1109人でした。

 この3年間、私は最優先課題のひとつとして、「待機児童の解消」に取り組んできましたが、残念ながら、待機児童数が減少傾向に転じるまでにはいたっていません。この春には、認可保育所10園、認証保育所2園が完成し、小規模保育や家庭的保育をあわせると1301人分の枠を一挙に増やすことになります。それでも、待機児童の半減さえ難しい状況にあります。

 私が最初に目をつけたのは、復興予算の財源として財務省が売却する方針を打ち出した「国家公務員住宅」でした。霞が関や永田町に働きかけ、「国家公務員住宅跡地」を保育園建設のために20年にわたって賃借させてもらえないかと交渉しました。その結果、6カ所の保育園をオープンすることができました。さらに5カ所の建設を予定しています。

 ただ、国家公務員住宅は、世田谷区でも都心部により近い東部から中央部に集中しているため、区内の全域で保育需要を満たすことはできません。

 そこで、区が土地を提供するか、区が土地を見つけて保育園の運営事業者を公募する方式をあらためることにしました。民間事業者がみずから保育園用地を確保して、区に提案してもらうことにしたのです。ところが、この提案型の応募は不調でした。区内は賃料が割高で、事業者としては二の足を踏んでしまうということが分かったのです。

 さらに知恵をしぼります。民間事業者が用地を探してきた場合に、民間事業者がオーナーに支払う賃料の3分の2を、区が20年にわたって補助するというスキームを導入しました。認可保育園用地だと賃料は平均で年1500万円、20年間で3億円の負担になります。このうちの3分の2、つまり2億円を区が助成することにしたのです。以前の助成額は4千万円ほどでしたから、思い切った判断を下しました。

 また、不動産取引に熟練した専門家に区の担当者になってもらったところ、情報提供は200件を数え、現在、4件で開園準備が進んでいます。それでもなお、保育需要に追いつかないのが実情です。

 世田谷区は「量」の拡大と同時に、「質」の確保にも力を入れています。一言で表すと「子どもの側から発想する」「子どもを中心とした保育」を展開するという内容です。たとえば、0歳児一人あたりの保育面積は国の基準では3.3m²ですが、世田谷区では5.0m²としています。子どもを育てための環境をより広く取るようにしているのです。

 ほかにも、子どもが何を求めているかに常に気を配り、むやみに大声をあげたり、制止したりすることのないよう心がけることや、子どもの成長を保護者とともに喜び、子どもの発達を支援できているかどうかなど、保育の「質」を保つための審査基準を近く、明文化する予定です。このガイドラインで世田谷区が目指すべき保育のあり方を掲げ、子どもの最善の利益を守っていきたいと考えています。

 待機児童の解消は重要ですが、そのために、子どもの放置や虐待につながりかねない「すし詰め保育」や、保育士が次々と離職し、施設長もコロコロ変わるような「無責任保育」が広がることは避けなければなりません。あくまで、子どもの成長・発達をきめこまかく支援できる保育事業者を選択したいと考えています。

 待機児童問題は、保育園などの受け皿をつくれば解決するほど単純ではありません。

 需要と供給のミスマッチもあります。子育て世代の女性たちの声を聞いていると、必ずしもフルタイム保育を望んでいないという人もいます。在宅勤務を採り入れたり、フリーランスで働いたり、あるいは週3日だけ仕事に出たりするなど、さまざまな働き方があります。

 世田谷区には、幼稚園や保育園の一時預かりのほか、理由を問わず乳幼児から預かる「ホットスティ」、研修を受けて登録している住民が子どもを預かる「ファミリーサポート」などの取り組みを続けています。

 とはいえ、保育が必要になる度に申し込みをしなければならず、長期予約ができないため、「毎週、火木金は預かってもらう」というように、決まった予定を立てられないと、フルタイム保育に頼らざるをえないというのが実情です。

 計画的でフレキシブルな預かり方ができる保育の場の重要性を感じ、在宅での子育て支援にも力を入れたいと考えています。

 世田谷区の待機児童問題の原因のひとつに、乳幼児の人口増もあります。5歳までの未就学児童が6年続けて、1千人ずつ増えているのです。住民基本台帳のデータを見ると、転入より転出が若干上回っています。分析してみると、この10年間、出生数は年平均で200人前後増えていることがわかりました。つまり、社会増でなく、自然増だったのです。

 仮の話ですが、さまざまな施策によって待機児童数が減り、保育事情が好転するとしても、今度は区外からの転入が増えてくることが予想されます。そう考えると、こうした構造的な問題を世田谷区だけで解消することはきわめて難しいと感じているのも事実です。

 それでも、保育園づくりを徹底して進めていくことに変わりはありません。2016年4月にはさらに2千人の定員を増やす予定です。

「待機児童全国№1」脱出のために (「太陽のまちから」2015年1月27日)

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