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パスポート返納命令に憲法上の正当性はあるか



 シリアへの渡航計画を理由にフリーのカメラマン、杉本祐一さんが、外務省からパスポートの強制返納を命じられた問題で、杉本祐一さんは2月12日、外国特派員協会での会見で、パスポートを取り返すために裁判に訴える意向を表明した。

「パスポートを失うことは、私の人生そのものが否定されるのと同じ」、「他のジャーナリストたちの報道の自由、取材の自由が奪われることを危惧している」。杉本さんはこのように語り、最高裁判決まで戦い抜く決意を露わにしている。
 特派員協会の会見で質問に立った外国人記者たちは一様に、「自分の国ではそのような理由で政府がパスポートを取り上げることはあり得ない」と、ジャーナリストが政府から強制的にパスポートを取り上げられ、海外取材を断念させられたことに驚きを隠さなかった。

 しかし、日本の旅券法にはその19条の1項4号で、「旅券の名義人の生命、身体又は財産の保護のために渡航を中止させる必要があると認められる場合」には外務大臣はパスポートの返納を求めることができる旨が明記されている。杉本さんは外務省の職員が警察官を伴って自宅に現れ、外務大臣の返納命令書を読み上げた上で、返納しない場合は逮捕すると脅されたというが、旅券法違反は5年以下の懲役であることが定められていることを考えると、それもまんざら脅しではなかったとみられる。

 今回の外務省の行動自体は旅券法に則っている以上法律上は合法的に見えるが、一方で渡航の自由を認めている日本国憲法22条に真正面から抵触する可能性がある。また、今回の渡航目的がジャーナリストによる取材だったことを考えると、憲法21条で保障されている表現の自由との兼ね合いも問題になる。

 今回、杉本さんが法廷闘争に訴える意向を明らかにしていることから、そもそも旅券法のこの条文が憲法21条や22条に違反しているかどうかが、裁判における主要な論点になるとみられる。

 取材で危険地域に入ろうとするジャーナリストを、政府がパスポートを取り上げることで行かせない行為は正当なのか。憲法学者の木村草太氏に、ジャーナリストに対するパスポート返納問題の憲法上の論点とその正当性を、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が聞いた。

 
木村草太きむら そうた
(首都大学東京都市教養学部准教授)
1980年神奈川県生まれ。2003年東京大学法学部卒業。同大学法学政治学研究科助手を経て06年より現職。著書に『テレビが伝えない憲法の話』、『憲法の創造力』、『憲法の急所』など。共著に『未完の憲法』など。 リンク先を見る

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