- 2015年02月13日 12:55
たくさんの子どもが被害者になる~貧困層拡大の意味2
■「子どもが被害者になる」社会
僕が担当する当欄でもさかんに日本の格差社会化のことを訴えてきたが、その格差社会化と貧困層拡大による真の問題がようやくわかってきた。
ひとつは前回書いた「生のいきづまり」という問題だが(生(ライフ)のいきづまり)、それをベースにより深刻化して具体化するのは、「子どもが被害者になる」社会だということだ。
この場合の「被害」はふたつの意味がある。
1つめは、児童虐待の被害者、であり、
2つめは、その結果生じる可能性がある「発達障がい」に追いやられる被害者、という意味だ。
児童虐待と発達障がいの連動性については以前から問題提起されてきた。たとえば、杉山登志郎氏著『発達障害のいま』の後半にも触れられているし(発達障害のいま-講談社現代新書-杉山-登志郎/)、杉山氏のこのパワーポイント・レジュメ(児童青年精神医学入門 その4:子ども虐待 浜松医科大学児童青年期精神医学講座 杉山登志郎)においても衝撃的な諸事実に言及している(浜松医大のレジュメとして公開されているものだが、虐待系資料に慣れていない方にはある意味閲覧注意です)。
僕は実は、『発達障害のいま』は出てすぐに買って読みフェイバリット本になっていたのだが、告白すると、後半の児童虐待と発達障がいとの連動性にはピンときていなかった。
これは支援者として恥ずかしい限りではあるものの、当時はまだ僕は困難層・貧困層の青少年支援が中心ではなかったため、発達障がいへの支援は日常的であったものの、両者(虐待と発達障がい)がダイレクトに結びつかなかった。
■たった4年前だが
が、杉山氏の著書が発売された頃は児童相談所で務めており現在は僕の法人(一般社団法人officeドーナツトーク)の共同代表である辻田梨紗などは、そのふたつの連動性に気づき、僕に対してさかんかに指摘していたのだそうだ。
が、当時はミドルクラスからアッパークラスのひきこもり青年を中心に支援していた僕には、この虐待と発達障がいの連動性(虐待によって脳へダメージを与える)はまったくピンとこなかった。そこは大いに反省している。
だが少し言い訳をすると、この本が出版された2011年は、まだたった4年前ではあるが、いまほど「格差社会」が自明化していなかったと思う。もちろん、「すぐ目の前に」それはあった。が、児童相談所で虐待事例に日常的に関わるか、困難な生活背景を抱える子どもたちが通うことの多い学校や施設で働くといった事情がなければ、なかなか「格差社会」や「貧困」を実感しにくかったのではないか、たった4年前であっても。
現在の僕は、経済的にアンダークラスの人々と出会うことが多いので、そうした問題の背景に関して敏感になっているのだろうか。
が、実は、「格差社会」「貧困の拡大」と、子どもが困難な立場に追いやられていることは、まだ我が国ではダイレクトに結びついていないのかもしれない。
■被害者であり当事者、子ども
もしかすると、子どもの支援者もその両者(貧困と、虐待・発達障がい)を結びつけていないのかもしれない。いまは、杉山氏他の先進的取り組みにより、虐待と発達障がいは結びつき始めた。
が、それは、「子どもへの(福祉的・医療的・心理的・教育的)支援」の枠組みのなかで結び付けられていることであって、これら(虐待と発達障がい)と、格差社会・貧困拡大といった社会・経済分析という枠組みとはすぐに結びつかないのかもしれない。
貧困化→保護者に余裕がなくなる→虐待→それによる脳への影響→発達障がいといった一連の流れは、想像力があれば誰でも思いつくし、このユニセフ資料をもとにした論文(ユニセフ調査にみる児童虐待と児童の貧困)でもみられるように、虐待と貧困には相関性がある。
だから誰もが貧困と虐待を結びつけて想像することはできる。また、杉山氏他の報告により、虐待と発達障がいも結びつき始めた。
しかしこれらの3者(貧困・虐待・発達障がい)が、現在同時に進行しており(当然すべてがすべて「虐待→発達障がい」でもなく、発達障がい特有の子の仕草が親の虐待を招くこともある)、その3者にはそれぞれ複雑な問題が絡んでくるため(貧困には非正規雇用等、虐待にはPTSD等、発達障がいにはラベリング問題等)、単純に3つを結びつけて考えることが疎かになることもあるようだ。
そして何よりも、「当事者は語れない」という構図がある(これについては当欄でも度々言及→誰が高校生や若者を「代表」するんだろう?PTSDサバイバーは語ることができるか)。
プラス、格差社会での「被害者/当事者」は子どもだ。
ただでさえ子どもは言語獲得途中のため語れない。そのうえに、被害者/当事者に追い込まれ、語れない。当事者は語ることができず、格差社会の代表的被害者であり当事者とは、語れない子どもだ。★
※Yahoo!ニュースからの転載


