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「グローバル・アピール2015」その2―安倍内閣総理大臣のスピーチ―

1月27日の「世界ハンセン病の日」に、ハンセン病患者・回復者とその家族へのいわれなき偏見・差別撤廃を願うグログーバル・アピールが今年10周年となり、国際看護師協会と132カ国の看護師協会の賛同を得て東京から発表さたことは既に述べた。

その折の安倍総理と不肖私の挨拶文を掲載します。

日本国総理大臣の人権に関する発言は珍しいことで、日本の人権外交にとって、極めて有益なものでありました。

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以下、安倍内閣総理大臣の挨拶文です。

世界各国から参加いただいた皆様、ようこそお越しくださいました。心から歓迎申し上げます。

今日のテーマであるグローバル・アピールを主導してこられた笹川会長は、日本政府ハンセン病人権啓発大使やWHOハンセン病制圧特別大使を務めておられます。これまで、世界のハンセン病問題に対し、長年熱心に取り組んでこられたことに対しまして、改めて深く敬意を表する次第であります。

ハンセン病は、感染力が非常に弱く、治療法も確立されており、今では適切に治療すれば後遺症なく治る病気です。しかし、残念ながら誤った理解により、世界中でハンセン病への差別や偏見は、まだ根強く残っています。我が国でも、かつて採られた施設入所施策により、患者の方々の人権に大きな制限・制約をもたらし、また、社会的偏見や差別を助長したという過去があります。

我々は、その歴史を反省し、約20年前に大きな政策転換を行いました。元患者の方々に謝罪・補償を行い、その名誉を回復するための取組を国立ハンセン病資料館などで行っています。

その一方、現在も、ハンセン病療養所には1700人を超える回復者の方々がいらっしゃいます。平均年齢は83歳を超え、看護や介護を得なければ、日々の生活の維持が困難となっている方が増えています。
私どもは、これからも回復者の方々が安心して穏やかに暮らしていけるよう努め、また、ハンセン病に対する差別・偏見の解消に取り組んでまいります。

本年のグローバル・アピールは、各国の看護協会の賛同を得て行われると伺っています。看護師は、女性の割合が高い職種の代表例ですが、私は「女性の力」が十分に発揮されることが、社会の大きな活性化につながると確信しています。看護師を始め患者の方々に寄り添う皆様が、それぞれの立場でなお一層輝き、大きな力となることを願っています。

ハンセン病への社会的差別をこの世界からなくすため、今日の集いを通じ前進していくことをお祈りし、私の御挨拶とさせていただきたいと思います。

以下、私の挨拶文です。

ハンセン病は世界中で最も誤解されスティグマ(社会的烙印)の対象となってきた病気の一つです。人類の長い歴史の中で、多くの人々が病気とそれに伴うスティグマや差別に苦しんできました。

ハンセン病との闘いは、20世紀半ば、医療面での大きな進展がありました。効果的な治療方法が開発され、治療薬を無料配布することで、世界の患者数が劇的に減少しました。早期発見と早期治療により、身体に障害を残すことなく治る病気となりました。

しかし、このような医療面の進展があったにも関わらず、ハンセン病患者と回復者は今もなお、社会のスティグマや差別に苦しんでいます。彼らは、病気を理由に、教育や就職、結婚の機会を奪われ、彼らの家族さえも社会から疎外されているのです。

日本のように、医療面の問題が解決している国では、ハンセン病は過去の問題であると思われがちです。しかし、このような国であっても、何十年も前に完治しているにも関わらず、家族に受け入れてもらえない回復者がいます。家族は彼らを受け入れることによって、自分たちにも差別の目が向けられることを恐れているからです。回復者は、ハンセン病療養所の中で暮らすことを強制されているわけではありませんが、多くの回復者が療養所の外に出ることを躊躇せざるを得ない状況におかれています。

このように根深く、普遍的な問題を社会に訴えるために、私は2006年にグローバル・アピールという活動をはじめました。それ以降、毎年、ハンセン病患者と回復者の尊厳を取り戻すために、アピール(宣言)を発信しています。多くの人々にメッセージを届け、ハンセン病患者と回復者のおかれている環境を改善していくために、世界の指導者、ハンセン病回復者、宗教者、そして、グローバル企業や国際人権NGO、法曹界などさまざまな分野のリーダーと協力して、アピールを発信してきました。そして、この度、10回目のグローバル・アピールの式典をプライマリ・ヘルスケアの主な担い手である国際看護師協会の皆さまと共に開催する運びとなりました。

ここ日本でグローバル・アピールを発信するのは今回がはじめてです。医療面の問題が解決している日本でも、ハンセン病にまつわる問題は多く残っています。日本の皆さま、特に若い世代の方々に問題意識を持っていただき、長い歴史の中に埋もれてきた出来事が持つ深い意味について考える機会になることを願っています。

グローバル・アピールの式典に加えて、写真展や学生によるシンポジウムなどさまざまなサイドイベントを東京をはじめとする全国各地で開催しています。これらを通じて、ハンセン病に罹ったことにより苦難の道を歩んできた人々の歴史をより多くの人々に知っていただき、この問題を風化させることなく、次の世代につなげていきたいと思います。

ハンセン病患者と回復者は私たちの想像を絶するほどの苦難の人生を歩んできました。私は、WHOハンセン病制圧大使として世界各地に足を運び、壮絶な人生を送ってきた人々にお会いしてきました。心を引き裂かれるような辛い経験を聞くたびに、胸がつまる想いがします。

    家族から強制的に引き離されてしまった人。
    名前を名乗ることさえできず、アイデンティティを失ってしまった人。
    療養所の中で重労働に従事しなければならなかった人。
    愛するわが子を手放さなくてはならなかった人。

このような辛く悲しい経験をした人は、心を砕かれ、ハンセン病という病気を、そして、社会を恨む気持ちを抱くこともあったでしょう。しかし彼らの中には、長い歳月を経て、「もう一度自分の人生を生きてみよう」という前向きな気持ちを取り戻している人もいます。

こうしたハンセン病患者と回復者のライフストーリーは、「人間とは何か」について、あらためて考えさせてくれます。そして、無知や誤解によって引き起こされるさまざまな人間の問題について考えさてくれるに違いありません。

さらに私は、辛い経験をしているにもかかわらず、それでも前向きに歩んでいるハンセン病患者と回復者から、忍耐強さ、人の過ちを赦す心の寛容さなどについて教えてもらっています。

私は彼らから人間の素晴らしさについて学ぶと同時に、多くの勇気を与えてもらいました。スティグマや差別との闘いには、まだ残された課題がたくさんありますが、一人ひとりが努力をすることで社会は変えることができると信じています。

沈黙をしたまま苦しみ続けてきた人々に、そして、今なお、沈黙をしたまま苦しみに堪えている人々の苦悩にしっかりと向き合ってみようではありませんか。

ハンセン病の歴史を風化させることなく、その歴史から学び、新しい未来を切り開き、次世代につなげていけるよう、皆さまと手を携えていきたいと思います。

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