- 2015年02月12日 08:28
コーヒー1杯に2時間半! “行列大国ニッポン”の現在 ブルーボトルコーヒーの行列から考える - カツセマサヒコ (プレスラボ)
テレビのニュースには拾われないかもしれないけれど、ネットの一部で盛り上がったあの話題。知りたい人へお届けします。
「ブルーボトルコーヒー」の来日に2時間半の行列
2月6日、アメリカ西海岸を中心に展開しているコーヒーチェーン「Blue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)」が、東京・清澄白河に初進出した。
画像を見るブルーボトルコーヒーのHP
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オープン当日にはコーヒー好きが集まり、最大で2時間半ほどの行列を作った。先頭の人は深夜3時から開店を待っていたという。ここまで長蛇の列を作ることになった理由には、同店が「サードウェーブ」と呼ばれるコーヒーの次世代トレンドを押し出した店であることや、「アメリカ以外では日本が初」という、一見希少価値が高いように見える情報がメディアやSNSで広がったことなどが挙げられる。
スタバを中心に飽和状態となった現在のコーヒーのトレンド(エスプレッソを主流にさまざまなアレンジを楽しめる大衆的コーヒー文化)から脱却したカフェやコーヒーショップを期待する人が多かったのは事実かもしれない。消費者に「飽き」が訪れるスピードは日々早くなってきているし、「スタバよりもおいしい店」を探している人がいるとしたら、ぜひ飲んでみたいと思うのだろう。
しかし「サードウェーブ」に定義される「こだわりの豆を一杯一杯手淹れで、浅煎りするのが主流の地域密着の店」というコンセプトに魅力を覚えているのならば、それは既に日本の古くからの「喫茶店」のかたちとも言える。実際、「ブルーボトルコーヒー」の創業者であるジェームス・フリーマン氏も、創業するにあたり日本の喫茶店にも影響を受けたことを明らかにしており、海外初進出の店舗が日本となった理由の一つも、そこにあると言われている。
「ブルーボトルコーヒー」も影響を受けたとされる日本古来の良質な喫茶店がいくつもあるなかで、それでもあえて多くの人が「ブルーボトルコーヒー」に並びたいと思うのは、「ブルーボトルコーヒー」がアメリカで一定以上の評価を得たうえで「日本第1号店が、世界進出初店舗」という「話題性」があるからだ。「コーヒー好きとしては、ここは行かなきゃならない!」と消費者は奮い立ち、寒空の下、長い行列を作るのだろう。
行列は“好意の象徴”
筆者も、どちらかといえばミーハーな部類に入る。「新しい」ということは十分に価値があるもののように感じられるし、「人よりも先に体験してみたい」と思うこともしばしばだ。もし「ブルーボトルコーヒー」の行列が自分に関心のあるものだったとしたら、きっとこの状況を冷静に見ることはできず、朝から多くの人と行列をつくる当事者の一人として、この「お祭り」に参加していたことだろう。
しかし、ファンが列を形成する一方で、ネットにはこうした行列を冷ややかな目で見る人も少なくない。確かに1杯のコーヒーのために2時間近く並ぶのを異常と思う人がいてもおかしくないし、テレビ中継やネットにアップされた写真や動画を見て、その光景に違和感を覚える人がいるのも無理はないことだ。
だが次のツイートを見て思うところがあった。
島根だったか長野だったかにスタバができた時にすっごい行列ができた時に、都会の人たち爆笑してたよね。今同じことが時を超えてブルーボトルコーヒーで起きてるけどどうよ。
https://twitter.com/deltamouth/status/564634450059726850
2013年4月に島根県に初めてスターバックスができたときも、開店初日の売上が全国店舗の最高額を記録するほどの行列ができたことで、大きな話題を生んだ。歓迎ムードのなか作られた行列を見て、「ブルーボトルコーヒー」と同様に冷ややかな笑いを送った人もいたことだろう。
しかし、このツイートにもあるように、島根県のスターバックスで行列をつくることも、東京の「ブルーボトルコーヒー」で行列をつくることも、俯瞰した立場で見ればそれは同じ「行列」にすぎず、それらに優劣はないものなのかもしれない。
「希少性」と「話題性」で生まれてくる日本の行列文化は、「地域差」や「嗜好性の違い」はあれど、みんな同じような期待を胸に行列に並んでいる。「コーヒー」で並ぶ人も「アニメキャラクター」で並ぶ人も、嗜好が異なるだけで「行列に並んでもいいから欲しい」という欲求や、「その製品やサービスを歓迎したい」という前向きな気持ちに変わりはないのだ。
ネタにされがちな“行列文化”。「たとえ誰かに笑われても」という想いで、今日も開店を心待ちにしている人たちがいる。
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