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防大の五百籏頭真校長が、大震災時に全国で自衛隊員が空っぽになる危険事態を指摘、早期対応が必要

◆文化功労者に選ばれた防衛大学校の五百籏頭真校長(神戸大学名誉教授、東日本大震災復興構想会議議長、専門は日本政治外交史、政策過程論、日米関係論)が10月27日、東京国際フォーラム(東京都千代田区丸の内「ホールD7」)で開かれた笹川平和財団と米国ウッドロー・ウィルソン国際学術センター共催の「第3回日米共同政策フォーラム」で、「東日本大震災後の日米協力:教訓と新たな協働体制の構築に向けて」と題して基調講演を行った。

 このなかで、今回の地震で宮城県にある航空自衛隊松島基地で、空自F2戦闘機18機のほか、T4練習機、U125救難捜索機など10機が水没した被害について、五百籏頭真校長は、「大津波が仙台藩が築いた砂丘と運河を乗り越えて、航空基地に流れ込み、1機150億円もする戦闘機20機を失わせた。格納庫から出して、緊急発進する暇もなく、司令は隊員に『上の階に上がれ』と指示して助けるのが精一杯だった」と話した。単純に計算しても、「3000億円」を消失した計算になるけれど、大津波が予想外の高さで、如何ともできなかったことを力説していた。

 このF2は、五百籏頭真校長が、防衛省改革の最終報告書(2008年7月提出)の内容をめぐって激しく対立した相手である石破茂防衛相が生産中止させたいわくつきの戦闘機であった。

 五百籏頭真校長は、福田康夫政権の町村信孝官房長官が2007年末に首相官邸で防衛省改革に向けて発足させた「防衛省改革会議」の委員となり、最終報告書の実質的な取りまとめ役となり、穏健な提案をまとめた。このため、より急進的な改革構想を持つ石破茂防衛相と激しく対立した。

 先日もこのブログで解説したように防衛省は現在、F2の後継機の選定作業を進めている最中だ。米国ロッキード・マーチン社「F35」、米国ボーイング社「FA18」、英、独、伊、スペインのBAEシステムズなどの「ユーロファイター」の3候補がしのぎを削っている。最有力の「F35」に決まったとしても、開発が遅れていることから、防衛省が納入期限としている「2017年3月」に間に合わない可能性があると憂慮されている。そればかりか、「5年5か月間」は、空の守りが手薄になる危険に付きまとわれる。

◆さらに深刻なのは、東日本大震災・大津波・福島第1原発事故の被災地に、政府は自衛隊10万7000人を動員(陸上自衛隊は全国14万人のうち半分の7万人出動)、米軍は「トモダチ作戦」に海兵を中心に2万人、航空母艦ロナルド・レーガンはじめ艦艇20隻、航空機120機を派遣してくれた。史上初めての最大規模の「日米共同作戦」となった。

 この作戦の成果は大であった。だが、喜んでばかりではいられない。五百籏頭真校長は、「陸上自衛隊は、選別的対応をして、首都を守る第1師団などは派遣しなかったが、このほかの地域では、空っぽという大問題を残した」と指摘した。関東大地震、東海大地震、東南海大地震、何南海大地震が、同時多発したり、最悪の場合、大震災が発生した際に、他国から侵略された場合、日本国土を守れないという事態が起きる危険性があるからだ。この意味での「日米共同作戦」の宿題を残しているのである。

◆五百籏頭真校長は1943年12月16日、兵庫県西宮市で生まれる。1962年、六甲高校を卒業、1967年、京都大学法学部卒業。1969年、同大学院法学研究科修士課程修了。学部・大学院を通じて猪木正道教授(第3代・防衛大学校長)、に師事し、猪木正道教授に勧められ、高坂正堯助教授(当時、後に教授、民主党の前原誠司政調会長の師匠)の自主ゼミにも参加。広島大学政治経済学部助手・講師・助教授を経て、1981年から、神戸大学法学部教授、2000年から2007年まで同法学研究科・国際協力研究科教授を経て現職。1987年、京都大学より法学博士の学位を取得している。

 この間、ハーバード大学(1977〜79年、2002−03年)、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(1990〜91年)で客員研究員、日本政治学会理事長(1998〜2000年)を歴任。政府関係の委員として、小渕恵三首相時代に首相官邸に設けられた有識者会議「21世紀日本の構想」懇談会の外交分科会(第1分科会)座長、小泉純一郎首相時代に設置された私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」委員、福田康夫首相の私的懇談会である「外交政策勉強会」の座長を務めている。1995年1月17日の阪神・淡路大震災で自らも被災している。

 現在は、日中両政府に報告・提言を行なう日中両国の有識者による会議「新日中友好21世紀委員会」委員(2003年12月〜)、2007年12月に設置された政府の有識者会議である「防衛省改革会議」委員を務めている。
 著書『米国の日本占領政策―戦後日本の設計図(上・下)』(中央公論社、1985年)』でサントリー学芸賞受賞。このほかに吉田茂賞(2回)、吉野作造賞を受賞。

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