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米VS北朝鮮 サイバー攻撃と制裁措置の行方 - 岡崎研究所

2015年1月5日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙で、米シンクタンクAEIのオースリン部長が、北朝鮮のサイバー攻撃に対する米国政府の制裁措置に関して、北朝鮮側がどのように対応してくるかを論じています。

 すなわち、1月2日、オバマ政権は、ソニー・ピクチャーズに対する北朝鮮のサイバー攻撃に関し、北朝鮮への新たな制裁措置を発表した。

 制裁の対象は、軍・情報関系機関であり、北朝鮮の主要な武器取引企業を含む会社及び10名の個人について、米国の金融システムへのアクセスを阻止するものである。

 昨年、サイバー攻撃の容疑で中国人5名を訴追した時と同様、今回の制裁は鳴り物入りであっても、効果は余り無さそうである。北朝鮮に対する制裁は、特に効果をあげていない。中露両国が援助や制裁回避の手段を与え、その衝撃を和らげようとするからである。従って、今回の制裁で北朝鮮が態度を変えることは期待できない。

 今後、何が起こるだろうか。北朝鮮は、1998年の日本上空を通過するミサイル発射、2010年の韓国艦船撃沈等、想定外の行動に出る嫌いがある。

 北朝鮮はソニーへの攻撃について無実を主張しているので、制裁の被害者として対抗措置を執る可能性がある。北朝鮮は他の会社やメディアにサイバー攻撃を加えるかもしれない。ソニーへの攻撃を認めた正体不明の「平和の守護者」なるグループは、更なる攻撃の脅しを掛けているからである。新たな核実験やミサイル発射もあり得る。

 更に厄介なのは、船舶に対する軍事攻撃や韓国に対する砲撃、ソウル又は国境の都市・島嶼へのテロ攻撃である。韓国の原子力発電所、電力・水道施設への攻撃もあり得る。

 2010年の事件の後、韓国政府は、今後の攻撃に対しては、全面的かつ無制限の対応を取ると警告している。その後、北朝鮮は韓国の人命や資産に対する攻撃は控えてきたが、今回の米国の制裁について、どの程度の対抗措置であれば、外部世界に容認されるかについて、誤算するかもしれない。

 攻撃が起これば、韓国は対応せざるを得ない。行動をとらなければ信頼性を失うからである。一方、米国は、「イスラム国」に対する中東での作戦、ウクライナ問題などもあり、東アジアでの新たな紛争に巻き込まれることは望まないであろう。米国は韓国に対し報復を控えるよう圧力を掛けることになるかもしれない。

 ここでは、北朝鮮がイニシアティブを握れる。オバマ政権は、これまでの交渉で武力行使の脅しを取り下げており、制裁もあまり効果をあげていないので、北朝鮮との終わりの無い円舞は、新たなサイクルに入ることになる、と論じています。

出典:Michael Auslin ‘New Sanctions Let Pyongyang Play the Victim’ (Wall Street Journal, January 5, 2015)
http://www.wsj.com/articles/michael-auslin-new-sanctions-let-pyongyang-play-the-victim-1420479937

* * *

 オースリンの予測は常識的なものと言えます。1月7日、北朝鮮国防委員会政策局は、米国の追加制裁措置を非難する声明を発表し、全ての制裁の撤回を求めると共に、米国は北朝鮮が「未曾有の超強硬対応戦」に突入した状態であることを忘れてはならないと警告しています(中央日報)。

 一方で、1月1日の金正恩第一書記の「新年の辞」においては、南北関係について、「北と南が争うのではなく、力を合わせて統一の新たな道を切り開いて行くことは同胞の一様な願いである。北と南はこれ以上、無意味な争いや大したことでない問題によって時間と精力を無駄にしてはならず、北南関係の歴史を新たに書き綴っていくべきである」、「我が方は、南朝鮮当局が真に対話を通じて北南関係を改善する立場であれば、中断した高位級会談も再開することが出来ると考える」、「そして、雰囲気と環境が整うのに合わせて最高位会談も行うことが出来ない理由は無い」と述べています(ラヂオプレス)。

 北朝鮮としては、韓国との関係を改善することを通じて孤立状態からの脱出を目指す考えがあるのでしょう。但し、国際社会は、同様の手口で何度も騙されてきたので、そのような働きかけに簡単に乗ることはできないのが現状でしょう。

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