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サウジアラビア王国のサラ妃殿下の「教育講演」は宗教でしか王国維持ができない末路を暗示していた

◆サラ・A・ビン・ジャラウィ・アール・サウード王妃殿下が10月24日午後、日本財団(東京都港区赤坂1−2−2)で「サウジアラビアと湾岸諸国の教育」という演題で講演された。これに出席して、話を聞いてきた。主催は「笹川平和財団・笹川中東イスラム基金」である。王妃殿下は、ダンマン女子大学卒、修士(イスラム法学)、博士(イスラム教理、現代の諸学派)となり、シャカーイク誌編集長を経て、ダンマン女子大学学長を務め、現在は、プリンス・アブドルムフンセン・ジルウィー・イスラム学研究センター会長を務める学究である。黒いブルカをすっぽり頭からかぶっておられたので、その容貌については、まったくわからなかった。

 講演は、サウジアラビア王国の学校教育(幼児教育(5歳8か月〜)から初等中等教育(6歳〜18歳)、高等教育=大学教育、成人教育=文盲をなくすための識字教育、初等教育)制度と教育課程、カリキュラムなどを中心に話された。この特徴は、①イスラム教に基づく宗教教育②男女別学③それぞれのスキル・アップということに集約できる。授業料、教科書などは、大学まで無料。大学生には、月額266ドル(2万6600円)支給という。

 サウジアラビア王国の教育は、5つの目的を持って行われているという。それは、以下の通りである。
 
 ①イスラム教の教えの徹底
 ②アラブのアイデンティティと帰属意識を植え付ける。
 ③湾岸諸国の進歩発展の要求に応える。
 ④湾岸諸国の個々人のニーズに応える。
 ⑤現代の特性と次代の方向性に応える。
 
◆講演の後、質疑応答が行われた。質問者は、アラブのテロは、イスラム教の宗教教育と関係があるかとか、女性が車を運転することが禁じられていることについて是非、さらに失業問題などについて言及された。

 これらのやりとりを聞いていると、サウジアラビア王国が、現体制を維持しようと懸命になっていることが窺われた。それは、チュニジアの「ジャスミン革命」から火がついた「中東の革命」が、エジプト〜リビア〜イエーメン〜シリアなどに伝染して、行き着く先は、サウジアラビア王国であることが、だれの目にも明らかであるからだ。

 サウジアラビア王国が、いつまでも「貧富の格差」を抱えたまま、体制を維持できるはずはないからである。しかも、アメリカ文化が流入するなかで、いつまでも、女性にブルカを着用させ続けるのは、難しい。しかし、ムチ打ちの刑を受けようとも、女性が車を運転すると罰せられて、ムチ打ち刑を受ける。それでも運転を止めない女性が増えている。

◆この問題について、王女殿下の明快な 答えはなかった。これは、言うなれば、サウジアラビア王国に対する「抗議」「抵抗」の意味を持っているので、答えられなかったのかもしれない。

 いずれにしても、サウジアラビア王国に対しても、多くの国民が、「中東の春」を求めているのであり、それだけに、体制サイドとしては、いかにして「イスラム教」という「宗教育により、イスラム教え「ドグマ(教義)」に凝り固まった国民を増やすかに腐心せざるをを得ないのである。宗教により国民を呪縛してしまうのは、古来、為政者が得意とする人民統治術であるからだ。

 しかし、教育は、国民が知識と知恵をつけて、やがて体制そのものに疑念を抱いていく道を開く術を与えることになる。その危険な武器を体制自体が、与えているということを意味している。

 パキスタンでオサマビンラディン(ニセモノという説もある)が殺害されて、リビアのカダフィ大佐が殺害されて、「中東の革命」の風は、さらに吹き荒れて、中東が、部族闘争をはじめとして、大戦争のルツボになる可能性は、さらに大になった感がある。すなわち、中東が壮大な火薬庫になるということだ。王女殿下の講演は、その予感を強めるばかりであった。つまり国民を宗教で呪縛するしか王国維持ができない末路を暗示していた。

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