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「ロボット産業を軸に、傷ついた福島の再生を図りたい」〜内堀雅雄・福島県知事が語った"復興の光と影"

昨年11月に就任した福島県の内堀雅雄知事が2月5日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見をおこなった。4年前の東日本大震災からの復興について、内堀知事は「しっかりと前に進んでいる」と述べながらも、福島第一原発の事故がいまもなお影を落とす県内の状況を訴えた。また、福島の産業再生の軸として「ロボット産業」を挙げ、知事自らロボットスーツの機能を説明してみせる「トップセールス」も展開した。内堀知事のスピーチの内容を紹介する。(取材・高橋洸佑)

自分の家で正月を過ごせない人が「12万人」

「福島の復興の『光と影』というタイトルで、これからお話をします。『光』というのは、福島県の復興がこの4年の間にしっかりと前に進んでいるということです。『影』というのは、残念ながら原子力災害という重苦しい影が、我々をまだまだ苦しめているということです。

最初に、影の厳しい部分からお話したいと思います。福島県というのは、東京の200~300キロ北にあります。震災前の福島は、穏やかで、とても美しい県でした。自然環境、歴史・文化と、おいしい食べ物。皆さんがほっとできる、落ち着ける場所、それが福島でした。

ところが、その福島を劇的に変えてしまったのが、3月11日の大きな地震、津波。そして、3月11日から15日までの5日間で起きた福島第一原子力発電所の3回の爆発でした。福島の場合、原発の事故のことが、とかく話題になりがちなのですが、震度6強という非常に強い地震が襲ったエリアもありました。さらに、津波も海際の浜通りというエリアを襲いまして、原発事故以外でも地震と津波の両方で、福島県は大きな傷を負いました。

そして、やはり我々が一番つらい思いをしているのは、原発事故の影響です。4年たった今でも、自分のふるさと、自分の家に帰ることができない人がいます。お正月も4回すぎました。4回のお正月を、自分の家で、家族と一緒の当たり前の生活として過ごせなかったというのが、私たちの本当に辛い現実です。

この原発事故で、自分の家を離れて避難生活をした方が、ピーク時は16万4000人いました。ちなみに、福島県の人口は約200万人です。4年たって、ある程度は減りましたが、今でも12万人の方が、福島県や福島県の外で自宅から離れて避難生活を続けている。全人口の6%という非常に大きなウェートの方が辛い思いをされています。

私たちにマイナスの影響を与え続けている東京電力の福島第一原発の事故。この事故が完全に収束するまでに、残念ながら相当長い期間がかかるという問題が、私たちを苦しめています。爆発によって溶け落ちてしまった燃料を安全に取り出すこと、そしてもう一つ、原発から汚染水が出るのを止める。この二つが第一原発の一番重要な課題です。特に汚染水の対策は、我々にとって最も喫緊の課題です。いま国と東京電力は、汚れた水を表に出さないということについて、今年の5月、6月ぐらいまでに何とかしたいということで努力を続けています」

「観光客の落ち込みがまだ戻らない」

「続いて、我々が福島を復興するためにどういう施策を進めているかを、ご説明したいと思います。

一つ目は、私たちの身の回りの環境の放射線量を下げる『除染』という作業です。これは、この4年間にだいぶ進みまして、福島県内で、いま人が住んでいるエリアは落ち着いた状況になっています。

そして、12万人避難されている方がおられますが、そういう方々の見守りであったり、心のケアということにも力を入れています。県民の健康を守るために、全県民を対象にした健康調査、そして、18歳以下の若者たちを対象にした甲状腺検査を続けています。

もう一つ、大事な課題は農林水産業です。福島県の農林水産業は、原発事故によって風評を受けて大きく収入を落としています。桃、アスパラガス、肉牛といった福島の産物は、残念ながら価格の差が非常に開いています。

私たちは放射性物質のモニタリング検査を徹底してやって、福島県の農産物で市場に出回るものについて、基準を超えるものは一切、流通させない対応を続けています。たとえば、お米や福島県の干し柿(あんぽ柿)は全量検査をおこなって、安全なものだけを市場に出回らせています。こういった検査を可能にするために、これまで世界になかった機械をここ1・2年で新しく開発して、みなさんが安心して食べられるような検査体制を進めています。

次は、観光の問題です。福島県にはたくさんの観光客が震災前は訪れていました。ところが原発事故以降、観光客の数が非常に大きく落ち込み、まだその落ち込みが戻らない状態にあります。そのため、私たちは今年の春、4月から6月まで、大型の観光キャンペーンをやって、全国のみなさんに福島に来てほしいとPRをしています。みなさんもよかったら、ぜひ福島までお越しください」

「メイド・イン・フクシマのロボットスーツを世界に」

「福島にとってもう一つ大切な課題は、産業の再生です。再生可能エネルギーとロボット産業についてご説明したいのですが、時間の関係があるので、再生可能エネルギーは省略させていただきます。

福島は第一原発の事故を抱えています。あの原発の事故を収束させるためには、巨大なロボットが必要です。そこで、ロボット技術をイノベーション、革新させるプロジェクトを進めています。このロボット産業を軸にして、傷ついたこの地域の産業の再生を図りたいと考えています。

私たちはロボット産業を2タイプ、考えています。一つは今お話しした原発の廃炉で使うような巨大なロボットです。もう一つは、私たち人間の機能をアシストしてくれるような小さなアシストスーツです。

今日はサイバーダイン社の方に来ていただいて、人間の体をサポートするアシストスーツの一部のパーツを持ってきていただきました。サイバーダイン社は、これから福島県の郡山市に工場を設けて、こういったアシストスーツの生産を始めます。

(アシストスーツの実物を示しながら)こちらは非常に高度な機能を持っていて、頭の中で右手を曲げたいと思うと、その指示で機械が自動的に動く。したがって体に不具合がある方や障害がある方でも、頭で思うだけでサポートしてくれるという、すごい機能を持っています。

今日はヒジのパーツだけを持ってきていただいていますが、腰や足のサポートもできます。したがって、病気で歩けない方がこのスーツを身に付けると、頭の中で歩こうと思うと、機械がサポートして歩くことができる。こういったリハビリに非常に役立つロボットスーツです。

また、これは医療現場だけでなく、たとえば農作業とか建設業など、重いものを運んだり、持ち上げるときにも使えます。したがって、女性の方でも60キロくらいの重いものを簡単に持ち上げることができるようになります。こういった『メイド・イン・フクシマ』のスーツを、これから私たちはどんどん作り上げて、日本に、そして世界に出していきたいと考えています」

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