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裁量労働制について思うところ。

 この通常国会において、厚生労働省は労働時間制度の見直し等を行う労働基準法改正案を提出する予定です。この法案に関し既に衆参の予算委員会等では野党議員から「残業代ゼロ法案」などとレッテルを張られ、「労働者の過労死や自殺を増やす気か!」などとお叱りを頂く機会が多々ありました。しかし、自分の経験からしてそういった議論にはとても違和感を覚えます。

 僕は、以前の勤めが研究職だったので、入社直後の普通の勤務制度に加え、フレックスタイム制(出社・退社の時間を一定の範囲で柔軟にできる制度。残業代は普通につく)も、裁量労働制(出社・退社に時間的制限がなく、残業代は月40時間分が「みなし残業代」として固定)も体験しました。個人的には、裁量労働制になると時間の自由度が高くなりかえって楽になったと思っています。もちろん締切や打ち合わせのアポなどの範囲内ですが、子どもが急に熱が出たから学校に迎えに行かねばならないといった、家庭における突発的な出来事の対応に勤務時間を気にせずできることはとても助かりました。また、フレックスタイム制の場合は、標準の勤務時間を超えて長時間仕事しているとその分残業代がつきますが、裁量労働制の場合、僕の場合は月40時間(おおむね1日2時間見当)を超えて会社にいてもメリットがないため、テキパキ仕事を片付けてさっさと家に帰ろうというインセンティブが個々人に働きます。例えミスやトラブルを起こして会社に遅くまで残らざるをえなくなっても全く残業代は増えませんから、ミスやトラブルを未然に防ぐことをより強く意識するようになります。

 ですから、野党議員の方々のご主張とは裏腹に、個人の体験としては勤務時間は明らかに減りました。残業代の有無とは関係なく、出社・退社の時間は記録されていたので、長時間在社していると健康管理の面から指導されます。もちろん、デメリットもないでもありません。フレックスタイム制の頃は残業は月40時間どころではありませんでしたので、残業代が減った分年収は減ったのではないかと思います。しかしそれはもともとの残業の多さに問題があるのであって、勤務時間の縛りがなくなったことはそれを補って余りある程度に、仕事も仕事以外の生活も豊かにするものでした。極端な話、仕事のために本を読んで勉強しなければならない時でも、一日のうち一瞬でも職場に顔を出せば、あとはスターバックスで美味しいコーヒーを飲みながら本を読んでいても勤務制度上は全く問題ないわけですから。

 残業代がつく制度の場合、夕方に上司から追加的な仕事を頼まれた場合、「自分にも残業代がついて収入が増えるから、まあやろうか」と思ってしまい、結果として長時間勤務や過労を招く面もあるのではないでしょうか。裁量労働制であれば、人間関係等を抜きにした制度的な面だけ考えれば「自分の仕事はもう済みましたので、帰ります」と断りやすくなります。月40時間以上はタダ働きになるし、上司もそれを知っているからです。

 労働行政が、圧倒的有利な立場にある雇用主から個々の労働者を護るために存在していることは十分に承知しています。個人の権利を踏みにじり労基署の改善命令すら聞かないような悪質なブラック企業などは速やかに駆逐されるべきです。しかし一方で、一から十まで全ての人を同様のルールで縛ってしまうことも、かえって本人の人格や自由度を損なう面もあるのではないかと自分の経験から思うところです。レッテル張りや極論や決めつけではない、そしてできるだけ落ち着いた議論が国会で行われることを期待します。

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