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高齢期の社会的孤立の予防策-ニッセイ基礎研究所「長寿時代の孤立予防に関する総合研究」より ‐ 前田 展弘/井上 智紀/久我 尚子/塩澤 誠一郎/中村 昭

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誰にも看取られることなく最期を迎える“孤立死”。その数は年間約3万人と推計される。日本は世界が羨む長寿大国になった一方で、孤立死を含めた高齢期における社会的孤立の問題は深刻さを増している。2010年に「無縁社会」という言葉が注目されたことは比較的記憶に新しい。現在の日本では長生きできているにも関わらず、孤独で寂しい日々を過ごしている高齢者は実に多い。本稿では、高齢化に伴う重要な社会的課題の一つである「高齢期の社会的孤立」の問題について、その解決策を探っていく。

1―社会的孤立化が進む日本

日本においてこの問題が指摘され始めたのは、おそらく1980年代からであろう。高度経済成長を続ける時代の中で、核家族化が進み、長寿化に伴い寡婦(夫)期間も長期化するなかで、孤立死する高齢者が散見され始めた。以降近年に至っては、「個人主義化」「希薄化」といった言葉が象徴するような家族関係を含めた人間関係の質的変容が生じ、結果として高齢期に孤立状態に陥る人が増えてしまった傾向が窺える。
   このことを裏付けるように、例えば、「家族以外の人との交流のない人の割合」をOECDの20カ国と比較してみると、なんと日本が最も多い[図表1]。社会における孤立度が最も高い国になっているのだ。また、生涯未婚率も1980年以降急速に上昇し[図表2]、単身世帯も増加の一途にある[図表3]。やがて2030年には全世帯のうち「3世帯に1世帯」が単身世帯となる見通しにある。単身高齢世帯に限ってみれば、1985年当時は全世帯の中で「33世帯に1世帯」の割合だったのが、2030年には「7世帯に1世帯」の割合まで増える見通しだ。さらに、孤立生活の悲しき末路と言える孤立死の数をみても、ここ10年で3倍に増加した結果を示すデータも確認される[図表4]。孤立死に関する全国的な統計データは存在しないが、その数を独自に推計してみると前述した約3万人といった数がはじかれる[図表5]。前述の未婚化及び単身世帯の増加を踏まえると、この数は今後さらに増加していくことが大いに懸念される。


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2―社会的孤立予防策の追究~特別研究の実施


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1│孤立予防を主眼に置いた研究

こうした問題意識の中でニッセイ基礎研究所では、所内に特別研究プロジェクトを立ち上げ、2013-14年にわたり「長寿時代の孤立予防に関する総合研究」を行った。研究の主眼に置いたのは孤立状態に陥ることを回避するための「予防」策の追究である。これまで社会的孤立の問題に対しては、自治体を中心に「社会的包摂」の理念のもとで、孤立者を外へ導き出す、地域活動等へ参加させる取り組みが懸命に行われてきた。しかしながら、民生委員等の声を拾えば、一度、閉じこもってしまった人を外へ誘うことは容易でない実態が窺える。孤立者を真に産まない社会を実現するには、孤立状態に陥る手前の段階で如何に予防的な対応を本人ならびに地域ができるかが重要と考えたのである。

2│コミュニケーション量にもとづく「孤立リスクレベル」の設定と分析~6世代6500名に対する定量調査より

孤立予防策の鍵を握るのは、人と人とのつながり“縁”であろう。孤立の状態とは「一定の期間、他者との交流がない状態」「人間関係が喪失した状態」である。何らかの原因・理由で途絶えてしまう“縁”をつなぎ止めることが予防策となる。前述の人間関係の質的変容が進むなかで、高齢期において自らが望む“縁”を維持することは、今後ますます困難になるものと考えられる。
   そこで全国の4つの世代((1)ゆとり世代:23-25歳、(2)団塊Jr.世代:39-42歳、(3)団塊世代:65-67歳、(4)75+世代:75-79歳)計6500名に対するWEBアンケート調査を行い、各世代の“縁”の状態を探った。どのような人が、孤立リスクが高いと推定されるか、孤立要因及びプロセス、生活行動や人生設計、社会資源との関係性の側面から多面的な分析を行った。“縁”の状態を測る指標として、他者とのコミュニケーション量にもとづく「社会的孤立リスクレベル」を設定したことは、本研究独自の試みである。以下、一部にはなるが、本研究を通じて明らかにできたことを紹介する。

3―主な研究結果と考察

1│社会的孤立者数の推計

まず、現代社会の中でどれだけ社会的孤立リスクが高い人がいるのかを、前述の孤立リスクレベルをもとに推定してみた。その結果、ゆとり世代、団塊Jr.世代の15%程度、団塊世代、75+世代の5%程度が、社会的孤立が強く疑われる状況にあった([図表6]にあるレベル5の割合)。

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この出現率をもとに各世代の社会的孤立状態が疑われる者の人口を推計すると、全国ではゆとり世代で66万人、団塊Jr.で105万人、団塊世代で33万人、75+世代で36万人が、それぞれ社会的孤立が疑われる状態にある。これら4世代を合わせただけでも、実に240万人が現在、社会的孤立リスクが高い状況にある。

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