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【読書感想】三つ星料理人、世界に挑む。

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三つ星料理人、世界に挑む。 (一般書)

内容(「BOOK」データベースより)

気鋭の三つ星料理人が、リスクを顧みずパリに魚屋をオープンする理由とは?日本料理を通じて真の日本文化を世界に広める信念を波乱の半生とともに描く。本物の日本料理を世界へ!


 2007年秋に、レストランガイド『ミシュラン』で3つ星に輝いた『銀座小十』の店主である著者の、「パリに本物の日本料理店をつくる」という挑戦の記録。

 2007年秋、日本の外食業会はザワザワと心落ち着かない日々を迎えていました。

 というのも、フランスで百年の歴史を誇るレストランガイド『ミシュランガイドブック』の東京版が、11月に創刊されることが決まっていたからです。

「ミシュランの東京版が出るらしい」という話は、2006年には業界内に流れていました。そして2007年2月、創刊を発表するプレスパーティーの招待状が関係者のもとに届き、これが単なる噂でないことがわかりました。

 招待状はなぜか、私のところにも届きましたが、「欠席」として返事を出しました。興味はあったものの、店の営業もありますし、何より14人も入ればいっぱいになってしまうような、うちのような小さな店には「関係のない話」と思っていたのです。

 ところが予想に反し、私の店<銀座小十>はこの年、栄誉ある三つ星をいただくことになりました。

 静岡から一念発起して、銀座八丁目に店を開いたのは、2003年7月のことでしたから、わずか4年しか経っておらず、私はまだ37歳でした。

 それが、<ジョエル・ロブション><ロオジエ><玄治店 濱田家><すきやばし次郎>といった名だたる名店と肩を並べることになったのです。


 僕は『銀座小十』という店のことは全く知らなかったのですが、地元・静岡の人気店から、一念発起して銀座に出店し、試行錯誤の末に、世界に認められたという著者の立志伝は、なかなか興味深いものでした。

 三つ星、をもらうようになる料理人の店でも、必ずしも順風満帆、というわけではないのだなあ、とか。


『ミシュラン』の調査員について、著者は、こんな話をしています。

 三つ星候補に挙がった店には、覆面調査員が7、8回は訪れるという噂も聞きます。季節ごとの料理のチェックはもちろん、常に安定したクオリティの料理を提供できているのか、ありとあらゆる場面で査定されているのです。

 たとえば、初めて日本を訪れた外国人が夜6時に来店したら、どんなふうに対応するのか。ラストオーダー30分前の9時に訪れたらどうか。その状況でも、6時に来店した客と変わりなく、対応できるのか。

 日本版では、調査員も日本人が多いので、こちらとしては他のお客様と見分けることはできません。

 マスコミに取り上げられることも多いミシュラン総責任者だけは、気付く店は気付いてしまいますが、そこで特別扱いなどしようものなら大変です。赤の他人のふりをして別のテーブルについている調査員が対応や料理の違いなどをしっかりとチェックしているという話も聞きます。

「高いクオリティの料理を、いつでも、どんな客に対しても安定して提供できる店」が、ミシュランが評価する店なのです。

 通常は、取材も審査期間の終盤になって行われるので、そこまでは調査員が来ているかどうかすら定かではありません。パリで開店早々に取材が行われたのは、単にこちらの開店が遅れに遅れ、9月になってしまったからだと思います。

 そうして後日、取材にやってきた調査員がこんなことを言いました。

「ミシュランとしては、外国人の好みに合わせたような日本料理は評価しません。評価するのは、あくまでも日本の正統なスタイルに則った日本料理です。先日いただいた料理は、審査の対象に入れるべきものと判断しました」

 加えて、

「パリのフランス料理店と比べて、優劣をつけるようなことはしません。日本料理店である<OKUDA>の基準は、あくまでも日本にある日本料理店です。


 実際に調査員と話したこともあるという著者による、「ミシュランの調査の実態」。

「覆面調査員のさまざまな噂」というのは、僕もネット上などで見かけるのですが、実際にこんなふうにして調査をしているんですね。

 総責任者が出てきて「おとり調査」みたいなことまでやっているのか……

「ミシュラン」って言っても、フランスの人たちが、自分たちの好みでやっているんじゃないの?

 そう思い込んでいたのですが、日本の店の場合、調査員の多くは日本人で、他の客との見分けはなかなかつかないそうです。

 そして、もしわかったとしても、「特別扱い」すると、かえって評価は下がってしまう。

 味の評価は、「フランス人の舌に合うか」ではなくて、「日本料理として、他の店と比較してどうか」に統一されてもいるのです。

 これなら、ミシュランがグルメガイドの「権威」として君臨するのも理解できます。

 日本の「グルメ記事」の場合、そのお店の宣伝込み、というのが多いですしね。


 著者は、「世界に対して、本物の日本料理をアピールしたい」という意欲から、料理の世界の「本場」であるパリはの出店を決意するのです。

 ところが、地元の工事業者が、日本のように期日を守って動いてくれなかったり、地元の魚を使おうにも、魚の「新鮮さ」の概念が、日本とフランスとでは違いすぎ、良い魚を手に入れるため、料理人だけではなく「魚屋」として、自ら新鮮な魚の輸送システムの構築に乗り出さなければならなくなったり……

 日本でやっていれば、「予約の取れない、『ミシュランの三つ星レストラン』として、悠々と経営していけるはずなのに、著者は、それを良しとせず、挑戦を続けているのです。

 そして、その意欲は、日本政府をも動かそうとしています。

 「新鮮な魚を手に入れるシステムをつくる」というのは、フランスにとっても新しい産業や雇用を生み出すチャンス、でもあるのです。

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