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多数決する委員の多数派工作

しばらく前から一部の連中*1が騒いでいた日銀審議委員候補がリークされたようだが、多数決する委員の多数派工作するなら、そもそも審議する意味は希薄なわけで、どうせなら総裁あるいは副総裁の独裁にしてはどうか。その方が人件費の分だけ、(広義の)税金の無駄が減るってもんだ。

政府、日銀審議委員に原田早大教授を起用の方針 - WSJ

http://jp.wsj.com/articles/SB10769343920788724096004580440463656776130

さて先日の朝日新聞のインタビューで、その候補である早稲田大学教授の、相当にエキセントリックな世界観を確認できる。

さらに金融緩和を、国債まだ買える 原田泰・早大教授:朝日新聞デジタル

http://www.asahi.com/articles/ASGDS5TCMGDSULFA034.html

国債には毎年発行される分だけでなく、1千兆円の残高があるからまだ買える。国債は日本人全体の借金だ。それを買っているわけだから、日本人に恩恵を与えている

千兆円の国債を誰が持っているかといえば、我々が銀行預金の先で持っていたり、我々が保険契約の先で持っていたり、我々が年金原資の先で持っていたり、するわけだ。それらの国債を日銀が買い取れと、この早稲田大学教授は主張している。そうなれば我々の銀行預金や保険契約や年金原資は、他の投資先を探す必要が出てくるが、そんな巨額を突っ込む先など存在せず、いずれにせよ結局のところ日銀に預金することになる。日銀から見れば、金融機関から借りて、金融機関の持っていた国債を受け取る形だ。

要するに、我々の「政府への貸し」について、金融機関に加えて日銀を経由しろという話である。もちろんバトンをリレーの形にしたところで大した意味はない。もともと「日本人全体の借金」を支えているのは、概ね「日本人全体の資産」であって、更に日銀を挟んだところで状況は変わらないし「恩恵」が発生する理由もない。敢えて言うなら、段取りの手数料を受け取るブローカーは喜ぶかもしれないが、その費用を広く薄く負担するのも、また日本人全体である。

日銀は国債をコストをかけずにただで買っている。10兆円分の国債を購入して、仮に2割損してももうけは8兆円ある。日銀の利益は国庫に渡ってきた。国債の価格が下がっても、財務省が埋めればそれでいいだけだ

日銀に国債を売り渡した金融機関は、その対価を日銀への預金の形で受け取る。この早稲田大学教授は、これを「コストをかけずにただで買っている」と表現する。日銀への預金は価値がゼロだと言っていることになるが、誰もが知っているように、この預金を我々は「マネタリーベース」と呼び、その残高について日銀は目標を掲げている。

そうしてマネタリーベースを抱えさせられている我々の銀行預金も、当然やはり価値がないという話になろう。シビれてしまう。さらに二文目以降には、コスモさえ感じる。いきなり日銀が兆円単位で儲かってしまうのだ。真面目に読む必要も、考える必要もゼロだが、この文脈で「仮に2割損しても」という数字感だけ取り出しても笑ってしまう。

日銀のバランスシートが傷んだと思われても、信用が失われることはありえない。国はすでに1千兆円もの国債を発行して、バランスシートを傷めているのだから、日銀のバランスシートが傷もうが関係ない。制度上、日銀が財務省に補填(ほてん)を頼むのがいやというのはあるのかもしれないが

全体的に支離滅裂だが、そもそも価値がない負債を発行できるのなら、「バランスシートが傷む」ことの定義すら困難じゃないですか早稲田大学教授。突っ込むにも迷うので、内側の論理くらい整えといて下さいよ早稲田大学教授。コストをかけずに何でも買えるスーパーマンを、誰がどうして補填する話になるのか。どこから突っ込めば面白いのか、そのことに悩んでしまう。自分がヒマ人間に思えてしまう。

なぜか指名は明日に延期されたようだが、21世紀の日本で、制度のスピリットを恥じらいもなく踏み躙る厚顔を、我が総理大臣に見かけるなんて実に悲しい気持ちだ。どのような制度で、どんな仕組みをつくり磨き上げるのか。長年サボってきた仕事のツケを、きっと我々は払っているのだろう。あまり高くつかないことを望むだけだ。

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