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医者とのチャットアプリ「First Opinion」

医者とのチャットアプリ「First Opinion」

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先日当ブログでは、ガーデニング、日曜大工、家具、インテリアなどに関する問題や相談に対して5分以内に回答してくれるQ&Aアプリ「Fountain」をご紹介した。ネットではさまざまな情報を調べることができるが、検索にかかる時間や手間、その正確性については課題も多い。より専門的な分野では、もっと信頼できる情報を求める人も多いだろう。

今回ご紹介する「First Opinion」も、こうしたニーズによって生まれたアプリのひとつだ。同アプリは小さな子どもを持つか妊娠している保護者をターゲットに、専門の医師が子どもの病気や体調に関する問題や不安に回答するというサービスを行っている。

類似するサービスとして診察を簡単に予約できる「ZocDoc」や訪問診療をオンラインサイトで実現した「Medicast」などがあるが、First Opinionはこれらより早く、安く、簡単に医師に相談できるのが特長だ。

First Opinionは2013年1月に米国サンフランシスコにおいて設立。これまでに総額860万ドル(約10億円)の投資を受け、サービス開始の2013年12月から半年で3万以上の相談がなされたという。

ブラジル移住が起業のきっかけ

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First Opinionの創業者は、高校卒業以来、友人が運営する「ビリヤード台をオンラインで販売するECサイト」の運営を手伝っていたMckay Thomas(以下トーマス)氏。

このサイトは2011年に別の会社に買収されることになり、トーマス氏は何か新しいことにチャレンジしたいと考えていた。そんな折、同氏は知り合いから「Baby.com.br」というECサイトを新たに立ち上げる、という話を持ちかけられる。

Baby.com.brは、経済成長著しいブラジルで赤ちゃん用の衣服や遊び道具、食べ物を販売するECサイトだ。この話に乗ったトーマス氏は、妻と娘を引き連れてブラジルのサンパウロに移住する。しかしその際、妻が2人目の子供を妊娠していることがわかった。

トーマス氏らは妊娠に詳しい医師にかかりたいと思ったが、ブラジルでは英語でなくポルトガル語が一般的に用いられていることから、良い医者を見つけるのに苦労してしまった。

一方、トーマス氏らが運営しているBaby.com.brの掲示板では、親たちによる妊娠中の健康管理や子供の健康状態などの意見交換が積極的に行われた。トーマス氏は掲示板での意見交換を見ていて、医師が専門的な見地からアドバイスを行ってくれるサイトを作ってはどうかと考えつく。

医師に直接相談にいくと、少なくとも30~100ドル(約3500~1万2000円)の診察料と、手間がかかってしまう。ネットで健康問題を調べるのは簡単だが、なかなか症状についての正確な判断を下しにくく、悪い時には「ひょっとして自分は癌なんじゃないか」などと極端な結論に陥ることもあり、信頼性が低い。ここに医者にチャットで相談できるサービスがあれば、患者にとってほどよい選択肢になると考えたのだ。

構想を得たトーマス氏は、早速サービスの肝となる医者の採用にとりかかった。妊娠中、もしくは子供を持つ親にとって役立つサービスにしたいと考えていたため、医師は妊娠、子育てを経験したことのある者に限定。またサービスを低価格で提供するためにインド在住の医師を採用した。

なおトーマス氏によると米国の医師はインドから移住してきた者が多く、人材の質の不安はなかった。トーマス氏自身もインドに渡って人材を採用し、インド人医師の確かさを確認したという。

「母親経験者」の医者によるチャット相談

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First Opinionは現在、iOS向けのアプリとして利用可能だ。ダウンロード後にアカウントを取得すると、年齢、性別、自身が親であるか妊娠中であるか、氏名、eメールアドレスを入力すると相応しい医師とのマッチングが行われる。

マッチング後はFisrt Opinionが提供するサービスの範囲について説明が行われる。Fisrt Opinionでの医師のアドバイスは日常的な内容に適していること、医学的な診断や処方箋などは町医師にかかるのがベターであること、緊急性の高い内容は911に電話を掛けて欲しいことなどだ。これらはサービス利用の前に規約を了解した旨の確認を行う必要がある。

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医師と利用者のマッチングが行われると、相手の簡単なプロフィールを閲覧できるようになる。プロフィール情報では専門分野やこれまで相談に乗ってきた数、いつから医療に携わっているのか、何人子供がいるのか、住んでいる地域を確認することができた。

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なお写真のAnkita氏は一児を持つインド在住の医師で、2006年から一般的な幅広い診療に携わっており、これまでFirst Opinionで1万8000の相談に乗ってきた実績を持つそうだ。

医師への相談としてどのようなものが行われているのかを見てみると、子どもが何か病気の兆候があるときにどのような判断をすべきかを問う内容が多かった。たとえば「息子が数日頭痛だけど、病院に連れて行ったほうがいいだろうか」などだ。「息子に環境に変化はあったのか? 喉は痛いのか?」など、どのような症状であるかを見定めるために掘り下げた質問を医師が行ってくれるので、漠然とした質問でも心配はない。

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なお、First Opinionのサービスは無料版と有料版に分かれている。無料版は24時間以内に医者からの返事をもらえ、月額9ドル(約1000円)の「Plus」では、5分以内に返事をもらうことができるという。また月に最大5枚の写真を医者にチャットを通して送ることも可能となるそうだ。

すぐに体調が変わる子供を持つ親や妊娠中の妊婦などの早く返事をもらいたいというニーズを持っている人にとってアップグレードする価値は十分にあると言えるだろう。

利用者層を絞り込み、特長を際立たせたことで成功。
First OpinionはiTunesのレビュー評価でも5段階評価中4.5を確保しており、ユーザーの満足度も高い。同アプリの成功要因として月額利用料が無料、アップグレード版でも月額9ドル(約1000円)と、非常に安い価格設定であることと、対象ユーザーをうまく絞り込めている点が挙げられるだろう。

子どもを持つ親は、医学的な知識をもっとも欲する利用層のひとつだ。そうした人たちにとって、24時間以内に無料でアドバイスを受けられるサービスは重宝する。またこのサービスの恩恵を受けることで、より身近に利用できるよう、月額9ドルにアップグレードする人たちも多いのではないだろうか。

ユーザーの希望に確実に沿うことができる人材として「母親経験者」の医者を採用している点も特筆すべき点だ。First Opinionは創業者自身の経験を存分に生かし、サービスの満足度を高く保つことに成功していると言える。

顧客も医師も、「母親」というキーワードにガツンと絞り込んだことがFirst Opinionの成功につながったことは間違いないだろう。市場が小さくなってしまうからとなかなか顧客が絞り込めない読者は多いのではないだろうか。そんな時はこの事例を読むと勇気が湧いてくるはずだ。

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