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インテリジェンス機能の強化はどこへ行った?

 イスラム過激派組織とされるイスラム国と名乗る集団が日本人2人を人質に取り、初めは2億ドル、その後ヨルダンで収監されているサジダ・リシャウィ死刑囚の釈放を要求した事件、人質のお二人がともに殺害されるという、惨憺たる結果となった。心から哀悼の意を表したい。

 さて、本件については、このお二人が昨年の8月そして11月に、拘束されたことを政府としては把握し、官邸に連絡室、外務省に対策室、そして現地ヨルダンに対策本部を設置して情報収集や協力要請を行ってきたことが、衆院での民主党の前原氏の代表質問に対する総理の答弁の中で明らかとなった。しかし、そうした体制は整えたものの、結局何の成果も上げられなかった。

 一昨年、アルジェリアで、天然ガス精製プラントがアルカイダ系武装勢力による襲撃を受け、そこで作業をしていた日本人を含む多くの外国人が人質となった。その時、日本政府は独自の情報収集活動ができず、外国政府の情報をあてにして動いていた。事態は10名もの日本人が殺害されるという悲惨な結末となった。

 これを受けて、通常国会での総理の所信表明演説に対する代表質問で、渡辺喜美元衆議院議員は次のような問いかけをおこなっている。
「在アルジェリアの日本大使館が独自の情報収集ができていなかったことが明らかになりました。外国政府の情報にばかり頼るのではなく、我が国自前のインテリジェンス機能を強化する必要があると考えますが、総理のお考えを伺います。」
 これに対する安倍総理の答弁は、
「まず、インテリジェンス機能の強化についてのお尋ねがございました。複雑多様化する国際情勢のもと、我が国の国益を守り、国民の安全を確保するためには、政府全体の情報収集能力の向上を図るとともに、内閣の情報集約機能を強化することが必要不可欠であると認識をしております。こうした観点から、我が国の情報収集・集約・分析機能の一層の充実強化に取り組んでまいります。」
 強化に取り組むとは言ったものの、結果が出ていない。要するに、当時の政権にとって「インテリジェンス機能の強化」とは、国家安全保障局の設置と特定秘密保護法の立法のことであり、情報収集機能そのものの強化ではなかったということであろう。国家安全保障局も特定秘密保護法も情報を管理するためのもの。穿った見方をすれば、独自の情報網を張り巡らすことは認められず、特定の国からいただく情報を大事に大事に扱う体制の構築に専念せよとのご指示があったかのようにも見える。(無論、国家安全保障局のような組織は必要であるし、秘密保護法制もまたしかりである。もっとも、現在の特定秘密保護法のように不十分なものには反対であるが。)

 正しい情報、多角的な視点からの情報がなければ日本として採るべき外交・安全保障政策など企画立案できようはずがない。そうした意味でも、独自の情報網は国家の生命線と言ってもいいだろう。特定の国からの偏った情報にばかり頼っていては、判断を誤り、日本を更なる危機にさらすことにもなりかねないだろう。

 日本人が海外で今回のような事件に巻き込まれた際に、巻き込まれた日本人を救出するために自衛隊を派遣することが取りざたされ始めているようである。他国に自衛隊を派遣し、武力行使をさせることの法的関係の整理もさることながら、人質救出という行為は何活動に当たるのかといったことも議論も整理もされていないのではないか。

 しかしそれ以前に、根本的かつ早急に必要なのは独自の情報網の構築であるはずなのではないか。それなしに自衛隊法の改正や、まして憲法9条改正などあり得ない話である。

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