記事

歯ブラシを定期販売する「GoodMouth」は上手く行くのか?

画像を見る

この間ニュースサイトを見ていたら「50代会社員のやらなくて後悔したこと TOP10」という記事が目に留まった。見てみると第8位に「定期的に歯のメンテナンスを行う」というものがあって、ギクッとした。

ものぐさな僕は歯ブラシのストックを切らしてしまうと、ついつい毛先が開ききった状態になるまで使ってしまう。しかし、これは歯にかなり良くないらしい。歯が悪くなると、様々な病気の原因になるというのはよく聞く話だ。できれば歯医者行きたくない。その割に、歯磨きに手を抜いてしまう。そんな人は多いのではないだろうか。

今回ご紹介する「GoodMouth」は、そうしたストック交換を自動的に行ってくれるサイトだ。同サイトは「良い歯ブラシを最適なタイミングであなたの玄関まで。人々の口内衛生、健康を保つ」をミッションに、歯ブラシやオーラルケア用品を定期的に届けてくれるというサービスを行っている。

同サイトは2013年に米国ニューヨークにおいて設立され、これまでに総額100万ドル(約1億1000万円)の投資を受けている。以前似たようなサービスとしてカミソリのサブスクリプションである「Dollar Shave Club」も取り扱ったが、歯ブラシとサブスクリプションの相性はどうなのだろう? 以下で詳しく見てみよう。

着想から20年、時を経てアイディアを形にする

画像を見る

創業者のCraig Lifschutz(リフシュッツ)氏が歯ブラシのサブスクリプションサービスの着想を得たのは時をさかのぼること20年以上前、同氏がまだ高校生だった時のことだ。

リフシュッツ氏の両親の友人に歯科医がおり、そのつながりから歯ブラシが悪くなっても交換しない人がかなり多いということを知った。古い歯ブラシは病気のリスクを高めるという側面がある、GoodMouthの説明によると歯周病のほかに心臓病や糖尿病などとも相関性があるという。しかし「歯ブラシの交換」は優先順位が低く見られがちで、ついつい後回しにしてしまう人が多かったのだ。

そのことを知った若き日のリフシュッツ氏は、定期的に歯ブラシを交換するための定期宅配サービスがあればいいのにと考えた。ただ当時はビジネスの経験もなく、またインターネットなどがそこまで発達していなかったこともあって、アイディアを実行に移すことはなかった。

その後リフシュッツ氏はジョージワシントン大学に進学し、在学中に映画製作を行う会社を設立。また1996年の大学卒業後も金融などさまざまな業界でビジネスを手掛けるようになる。

常日頃からいろいろなことに考えを巡らせていたリフシュッツ氏は、2010年代に入っても新たなビジネスを手掛けたいと考えていた。そんな時に思い出したのが、20年以上前に着想を得た歯ブラシの定期宅配サービスだ。

既にECサイトもある程度世の中に浸透しており、ECサイトで物を購入する人が増えていた。また自身もこれまでに充分なビジネス経験を積んでいる。これらの条件から、あの頃のビジネスを実行に移せる時期だと判断した同氏は、歯ブラシの定期宅配サービスを実現するサブスクリプションサービス「GoodMouth」を2013年に設立することになる。

歯ブラシのサブスクリプションECサイト

画像を見る

大人向けの歯ブラシのラインナップはヘッドが大きめのサイズで、大きめの口の人に適したThe Jaguar、ヘッドがコンパクトなThe Chameleon、ヘッドがミディアムサイズで大人もしくは大きめの口の中高生の子供向けのThe Toucanの3種。いずれも1本2ドル(約240円)という価格設定だ。

その他中高生を対象としたThe Barracudaや6~10歳の子供向けのThe Koala、2~5歳の子供向けのThe Guppyなど、さまざまな口の大きさ・年齢層に合わせた歯ブラシが用意されている。また年齢、口のサイズ、歯周病の有無、電動歯ブラシの使用などの簡単なチェックでサイトがオススメする歯ブラシを知ることもできる。

画像を見る

またフィリップなどの電動歯ブラシを使用している場合はヘッド部分(電動歯ブラシ本体はフィリップ等の他社製品)を定期注文することも可能。その他歯磨き粉、リップクリーム、フロス、口臭予防のミントなどを取り扱っている。これらはいずれも定期購入を前提としたものだ。

画像を見る

それぞれの商品を選択すると世帯の人数と配送頻度を問うメニューが表示される。配送頻度は「毎月」「1ヶ月おき」「3ヶ月ごと」の3種類。頻繁に病気になる人、歯周病、歯肉炎持ちの人、妊婦の人は毎月、健康な成人や十代、子どもにとってベストなのが1ヶ月おき、米国歯科医師会が奨励する最低限の交換時期が3ヶ月ごとになるという。

画像を見る

商品の送料は本数に関わらず1.5ドル(約180円)。なお初回購入以降に定期購入したくない場合はキャンセルも自由にできるとのことだ。

GoodMouthでは歯科医と連携し、定期購入を普及させるための試みも行っている。米国の歯科医は無料で歯ブラシを患者にプレゼントするところも多いが、歯科医が歯科業務以外に歯ブラシを業者に注文したり在庫を確認するのも手間となる。そこで代わりにGoodMouthが患者に定期で歯ブラシを届けようというものだ。

画像を見る

この歯ブラシの配達は患者の歯科医院へのエンゲージメントを高める歯科医のため、GoodMouth双方にとってのマーケティングとしての役割を果たしていると言えるだろう。

業者向けのサブスクリプションサービスの可能性

僕が思うに「歯ブラシのサブスクリプション」はやや成功するのが難しいサービスだ。そこには、利用者にメリットや付加価値を提示しづらいという問題がある。

例えばヒゲそりであれば、交換しなければやがて使いづらくなり、ヒゲも剃れなくなってしまうので、交換の必要性も実感しやすい。一方歯ブラシは古くなったとしても使いづらさや効果の低下といった悪影響を感じ取りにくい。例え交換する必要があると思ったとしても、歯ブラシは多くの店にふんだんにあり、単価も安めなので、買い換えが苦になるような商品でもない。

さらにGoodMouthで販売している歯ブラシは市販のものと特にちがっているという説明もなく、1本2ドル、送料1.5ドルという価格設定も市場の製品と比べて安いとは言えない。これらのことから、利用者が定期的な歯ブラシ交換の必要性を感じていたとしても、敢えてこのサービスを選ぶ決定的な要素に欠けているように思うのだ。

そんなGoodMouthの真のターゲットは誰かを考えたとき、一般的な利用者ではなく最後の方に出てきた「歯科医」こそがその候補なのではないかと感じる。患者に適切な歯ブラシの使用を啓蒙する必要がある医師は、GoodMouthのサービスの価値をもっとも理解できる存在だ。また場合によってはかなり定期的に歯ブラシを交換する必要のある患者を扱うこともあるだろう。

その歯ブラシを提供する手続きをGoodMouthが代行するシステムがより整備されれば、歯科医師は自分たちの仕事の一部を簡略化できるようになる。先日も「TrakLight」という弁護士向けの業務効率化サービスを紹介したが、最近は一般的な利用層のみならず、それまで不便で当たり前だった業者や専門家の業務をサポートするようなサービスも増えてきている。「サブスクリプション」というキーワードを専門職向けの業務効率化サービスと位置づけてサービスを考えてみるのも面白いのではないだろうか。

あわせて読みたい

「EC」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    安倍首相 ヤジの原因は憲法改正?

    メディアゴン

  2. 2

    コロナ検査 医師が不利益を指摘

    名取宏(なとろむ)

  3. 3

    銀座商店「震災時より人少ない」

    田中龍作

  4. 4

    韓国の肺炎感染者 4日間で11倍に

    木走正水(きばしりまさみず)

  5. 5

    新型肺炎めぐる過剰な報道に苦言

    かさこ

  6. 6

    北の病院で12人死亡 新型肺炎か

    高英起

  7. 7

    告発した岩田医師の行動は成功

    中村ゆきつぐ

  8. 8

    父逮捕で娘が「お嬢様」から転落

    幻冬舎plus

  9. 9

    みずほ銀行描いた本 衝撃の内容

    キャリコネニュース

  10. 10

    検事長の定年 口頭決裁あり得ぬ

    大串博志

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。