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自己責任で何が悪いのか?

今回の人質事件でネット上では「自己責任論」が数多く見られた。まあ、テロリストの要求をのめば今後問題が多く起こることは当然なので当たり前の論理だ。

もちろん、家族や友人の方々の感情を考えれば声高に自己責任論を今叫ぶ必要があるかというと僕は疑問でもある。

だが、どうも自己責任論の高まりに対していろいろと批判的な人もいるらしい。ブロゴスでもこんな記事を発見した。

「自己責任論」で中世に退行する日本

今回、「危険を承知で」あえてイスラム国の近傍に渡航した二人に、全く何の落ち度もないのか、というと、特に湯川さんの方には、経験や知識 という意味で問題がありそうだ。更に、渡航の動機も、「一旗揚げたい」「冒険したい」みたいな想いが、もしかするとあったのかもしれない。が、その「落ち 度」と、「海外で生命の危険に晒されている同胞を国家が救助する」というのは、全く別の問題だ。

「動機が不純だから」とか「当人が危険性を予め承知していたから」などという理由で、「国外で危険に晒されている同胞を助ける必要はない」という結論に達するならば、これはもう「近代国家」の根底が崩壊することになる。(ブロゴスより引用)


これは本当に正しいのだろうか?そして近代国家云々と何か関係しているのだろうか?疑問に思う。そもそもこの方は何か勘違いされているようだし同様の意見をネットでも散見したので少し書かざるを得ないなと思った次第である。

なぜ自己責任論が起こっているのだろうかということを考えないといけないだろう。自己責任だから放っておけ。死んでもいい。助けるな。助かってほしくもない。ざまあみろ。と思って多くの人が自己責任論を述べているわけではないということだ。もちろん、一部にはそんな過激な意見もあるだろうが、自己責任とはいえ同じ日本人として人間としてテロリストに怒りの感情を持つものとしてなんとか助かってほしいと多くの人は望んでいることは間違いない。多くの人間が笑いながら人質となった二人の方に向けて自己責任だといっているわけではないだろう。

だがそのうえでも安易に交渉に乗ることは今後二つの面においてよくないインセンティブを生み出してしまうという観点から自己責任論は唱えられているのだ。

まず、もし日本政府がテロリストの要求する200億円ものお金を払うと決めれば、多くの人が想像するように今後日本人狙いのテロ・人質事件は間違いなく増えるだろう。テロリストにとってこんなにおいしい相手はいないということになってしまう。

ただ、では絶対に交渉に乗るべきではないかといえばもちろんそうではないだろう。たとえば、もし身代金が100万円であれば支払うべきかもしれない。テロリストの実入りは少なく彼らにとってペイしない行動になるからである。あるいは日本国や日本人にとってそれほど痛くない条件。たとえば、いわゆるイスラム国の支配する地域の難民に人道物資の支援を行うなどなら乗ってもいいかもしれない。まあ、テロリストは自分が利益になるという線を望んでそれ以下に譲歩しないだろうからおそらく交渉は事実上成立することはないだろうが。

次に動機の重要性だ。もし交渉に応じ身代金を支払った場合には今後、さらに多くの日本人が危険地に行ってしまう可能性が増える。ジャーナリストであれば危険地で取材することで自分の所得や名声を高めることができるからだ。企業が利益のために危険な地域に社員を派遣するというケースも増えてしまうかもしれない。問題が起こっても自分の身が守られる可能性が高い。政府が解決してくれる。となれば、よくないインセンティブ/動機を誘発し、さらに今後問題が起こる可能性が高まる。

そう考えると自己責任論というのは冷徹さや冷たさからきているのではない。むしろ未来に向けて当たり前のそして同胞たる日本人を少しでも危険な目にあわせないための合理的な視点で語られているのである。

この古谷氏は助けろと言っている。ネットの一部の反応は知らないが自己責任と言っている多くの人たちも助かってほしいと言っているし僕の周りの人たちもそうだ。だが、助かってほしいが身代金を払うのは上記の理由からよくないと考えているだけである。それのどこが世も末なのだろうか?古谷氏は身代金を払えとも言わず対論も出さずに自己責任論を一方的に解釈して涙が出るほど悲しんでいるのだが…。

では、海外で危険にあった場合に一切助けるなということか?といえばそれは違う。納税者という観点から言えば我々は金額の多寡はあれ税金を納めている。現状では海外で問題が起これば大使館や領事館でお世話になることがあるかもしれない。それは我々が納めている税金が一種の保険のような役割も果たしていると考えることができるからで、今回でも政府がいろいろと状況を調査したり何とか交渉の糸口がないかと(どの程度で来ていたかは知らないが)探っていた。それすらやるな。税金の無駄だという極端な意見はほとんど目にしない。

もし、身代金が100万円や500万円で明らかにテロリストにあまり実入りがないというような条件であり、かつ社会通念的にそれくらいならば税金から払ってもよいであろうと合意がとれる金額であるならば、それすら支払うなという自己責任論が横行するとは僕は思えない。

要は多額の身代金を支払うことが今後によくないインセンティブを誘発するということが最大の問題であり、そのうえで社会通念に照らして可能な限り助けるための活動をすることに反対している人はほとんどない。「自己責任」という言葉に過剰な反応を示す前になぜそういうことが言われているのかをもう少し冷静に分析すべきだろうと思う。

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