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ダボス会議2015年~6)3つの総括:ネット企業へのパワーシフトとバッシングが始まった、他

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冬のダボス駅に、赤い色のスイス鉄道の列車が到着した。列車に乗り込み、車窓から見える景色を楽しんだ。スイスの景色は、常に僕らをもてなしてくれる。外の景色を見ながら、僕はダボス会議での全ての日程を終えたことを実感していた。

今回感じたことを主に3点にまとめてみよう。

1. ネット企業へのパワーシフトとバッシングが始まった

今回印象に残ったのは、インターネットのスターたちが、守勢に回ったことだ。これまでネット起業家は、もてはやされる存在だった。だが、今回は違う。インターネットが生み出すマイナスの面がかなり取り沙汰されて、それに対して弁解しなければならない雰囲気ができたのが、今回、特徴的だった。

“ダボス会議2015年~2)ダボス会議2日目の風景「ダボス会議の潮目が変わった 」”のコラムにも書いたが、ITセクターへの信頼度が初めて落ちたのだ。アップルの租税回避疑惑、Uberの運転手が各国で起こしている犯罪そして法律違反、ソニーに対するハッキング、「忘れられる権利」に対するグーグルの裁判、プライバシーに対する警戒心によるグーグルグラスの販売停止、テロリストが暗躍する「ダークウェブ」の存在、データの個人情報保護の問題等多岐にわたる課題が提示された。

ニック・ガーウィング氏がモデレートするセッション「In Tech We Trust」には、セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフCEO、ヤフーのマリッサ・メイヤーCEO、WWWを発明したティム・バーナーズ=リー氏、欧州のコミッショナーなどが参加した。

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また、続くメインホールの「デジタルエコノミーの未来」では、マイクロソフトのサトヤ・ナデラCEO、フェイスブックのシェリル・サンドバーグCOO、グーグルのエリック・シュミット会長が登壇した。

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それらのセッションでも話題になるのが、個人情報の課題、データの活用の仕方などだ。

ダボス会議という場は、パワーとパワーとがぶつかる場所である。政治的なパワーを持った政治家。発信力をもったメディア。お金の流れを支配する銀行、プライベート・エクイティ、VCや年金機関、それらを管轄する中央銀行やIMF。知的なリサーチ力とともに卒業生のネットワークを駆使する大学。更には、弱者救済・社会貢献を錦の御旗に存在感を発揮するNGO、そして、急激に力を付け始めたネット企業等だ。僕は、近年急激にパワーがネット企業にシフトし始めたと認識している。そして社会がそれらに疑問を呈し始めたのが、今年のダボス会議だった。

まさに、今、ネット企業と他のパワーとが、ダボス会議の場で火花を散らし始めたのだ。まさに潮目が変わったのだ。ICANNのチェハデCEOは、強い危機意識を持って語っていた。「今年9月の国連総会の主要アジェンダの1つが“インターネットと社会”だ。社会全体がネットに対して批判的になってきた。業界が主導して自主ルールを決めないと世界の政府が規制に乗り出すことになるだろう。」と。だが、ネット企業側はそこまでの危機意識を持っていない気がする。

これからネット企業に対する社会の批判がどう影響するのかは、注視していきたい。

2. 国家の脅威から“得体の知れない”ネットワークの脅威へ

今回議論となったのは、気候変動、ユーロ、ISIS、テロ、ハッカー、エボラ熱などだ。当然、ロシアの問題は依然、脅威として残るが、ある程度は織り込み済みだった。これらの諸問題の特徴は、国家が連携してもなかなか問題を解決できないことだ。つまり、国家の限界が露呈した形となった。

ISISの問題もそうだ。この問題は、政治家がどう意思決定をしても悪い(Ugly)結果となるのだ。だからこそ、どこの国もできたら関与したくない。できれば見て見ぬふりをしていたい。だが、それでは問題解決にならずに、状況を悪化するだけだ。では、「戦う」と言っても世論は、賛成をしない。国民は、「問題が飛び火するから、できたら関わらないで欲しい」と思っている。日本人の人質問題も同様だ。交渉するのもUglyだし、しないのもUglyだ。お金やテロリストを開放しても、抜本的な問題解決にならないのだ。むしろテロを増長させ、テロが続発することになるであろう。

つまり、ISISを撲滅させないと、次も同様の人質問題が起こるだろう。となると、ISISとは戦い、最終的には撲滅させなければならない。だが、そのためには、米国を中心とした先進諸国とアラブ諸国が、連携しなければならない。だが、その選択もUglyだから、気乗りしない。だからこそ、ISISは、好き勝手に暴れられるのだ。では、日本はその戦いの蚊帳の外で良いのだろうか?

気候変動問題も難しい問題だ。国家を超越した意思決定が必要となるからだ。ユーロの問題、エボラも同様に、国家を超越した連携が重要になる。しかも、国家が連携しただけでも解決しないのだ。連携し、実行するためには、世論の支持が重要だ。民主主義においては、世論が鍵を握る。

世論は、どうしてもリスクを回避する方向に向かう。イラク撤退を訴えたオバマ大統領が当選した。だが、その撤退がISISを生んだのだ。世論が問題から逃げると、国家を超越した問題は余計に解決しにくくなる。その世論も、今やマスメディアのみでは、形作られない。ソーシャルメディアが出てきて、マスメディアの力が弱まり、世論形成も複雑化した。ますます問題解決が難しくなっている実感を持つ。

従って、今後とも国家を超越した「得体の知れない」ネットワークが脅威となるであろう。その「得体の知れない」ものから逃げれば逃げるほど、「得体の知れない」ものが増殖する。国家は、連携して取り組む必要がある。

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