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日本政府が中田考氏を活用しない理由

 今度の人質解放で、なぜ政府は中田考氏を活用しないのか、という問いが寄せられる。

 確かにその通りだ。私も活用すべきだと思う。

 安倍・菅政権もあらゆる手段を尽くすと言っているのだから活用しないほうがおかしい。

 しかし、少なくとも現時点では、中田氏がみずからメディアに語っているように、政府からの直接の依頼はないという。

 その理由は次の二つにつきる。

 一つは外務官僚のプライドだ。

 常日頃から活用して来た御用学者や有識者ならいざ知らず、見知らぬ民間人に重要な外交の一端をまかせるなどということはあり得ないことだ。

 あの金正日総書記の料理人であった藤本氏の時もそうだ。

 金正恩総書記とあそこまで緊密な関係にある藤本氏を外務省はまったく活用しようとしなかった。

 もう一つの理由は、もっと重要だ。

 そしてこれこそがおそらく政府・外務省が中田氏を使わない、使えない、理由であるに違いない。

 その理由は米国との関係だ。

 米国では、少しでもイスラム国と関係を持った国民はすぐに逮捕され刑を科される。

 なぜならば、彼らこそホームグローンテロリストの危険性があるからだ。

 それは当然と言えば当然だ。

 なにしろ、国内の自爆テロに何度もさらされ、しかもますますその危険性が高まっているからだ。

 ところが日本は幸いにもそのようなテロに遭遇した事は一度もなく、従ってまたテロに対する実感としての脅威はまるでない。

 そのことと関連して、私には次のような実体験がある。

 かつて私がレバノンに勤務して来た時の話だ。

 反米イスラム抵抗組織であるヒズボラの親分であるハッサン・ナスララーという人物に接触することを外務省は許していた。

 だから私もナスララーと直接会って話すことが出来た。

 ところが米国にとってヒズボラは最も警戒すべきテロ集団だ。

 その組織の親分と接触する事自体が国益に反することだ。

 だから米国では政府の方針としてナスララーへの接触が禁じられていた。

 おそらくある時点で米国からねじ込まれたのだろう。

 その時を境に、ナスララーと接触する事が禁じられ、以来私は一度もナスララーに会うことなくレバノンを去った。

 おそらく今も日本の大使はナスララーに会えないはずだ。

 イスラム国と直接のパイプがあり、実際のところシリアを往復してイスラム国と交流があり、日本の若者をシリアに渡航させようと手伝っていた実績のある田中氏は、米国にとってはれっきとしたイスラム国の同志であり、真っ先に逮捕・拘留される人物だ。

 そのような人物に頼み込んで人質解放をはかるなどという事は、米国が聞いたら腰を抜かすほど危険な事なのである。

 今度の人質事件で米国が中田氏を使うなと安倍首相に注文をつけたかどうか知らない。

 しかし、たとえそのような干渉が無かったとしても、米国の意向を忖度して政府・外務省が中田氏を使わない方針を固めていたとしてもおかしくはない(了)

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