記事

【全文】「72時間は短すぎる。時間をもう少しいただきたい」〜イスラーム法学者・中田考氏がイスラム国の友人たちに呼びかけ

2/2

イスラム国と“コンタクトが取れること”は確認している

―今回の事件で日本政府側から中田さんへの何らかの接触がありましたでしょうか?また、イスラム国とのパイプはまだ健在でしょうか?

中田氏:日本政府から要請は直接にはございません。しかし、コンタクトがないわけではございません。 イスラム国とのパイプにつきましても、冒頭申し上げた通り、なるべくコンタクトを取らないようにしてきましたが、“コンタクトが取れること”は確認している。

―日本政府はこの中東地域全体において、どれぐらいのコネクションを持っていると思うか?

もちろん私自身が、それについて答えられる立場ではないが、一般論として私自身も2年間サウジアラビアで専門調査員という立場で大使館で働いた経験もございますので、日本にはアラビストというシステムがございまして、100人以上のアラブの専門家が働いております。その意味では、アラブに関する知識がないということは、ありません。

しかし、彼ら自身が外務省の中で主流かというとそういうことはないですし、特にイスラム主義、イスラム学の専門家に対するコネクションというのは非常に弱いということは残念ながら申し上げていいと思います。

―今回の人質事件とイスラムは直接結びつかないのではないか?私のムスリム教徒の友人は、イスラム国に参加しているような人たちは、傭兵であったり、社会的な敗者に過ぎないと論評していた。こういう論評についてどう思うか?(フランス人記者)

中田氏:最初におっしゃられた通り、私はカリフ制というものを支持しております。これまでも平和裏にカリフ制というものが樹立されることを世界に訴えてまいりました。そして、当然、その意味では本来イスラムが目指す体系ということなので、それが不在の現在においては、私自身を含めまして、イスラム教徒の行っていることはすべて、ある意味では間違っているということになります。当然、その一つであると私自身は考えています。

―イスラム国の参加者が傭兵であり、社会的敗者であるという私の友人の指摘については?

中田氏:その友人がどういう方か存じませんから、それがどういう根拠に基づくものかわからないので、コメントは出来ません。

先程も言いました通り、私の今までのイスラム国への訪問というのは、私の友人たちを訪ねていっています。その人たちは、そういう人たちではありません。これは長年の経験から言えることです。これはイスラム国に加入する前、彼らの本国での暮らしぶりを見ると、基本的には普通の人たちよりも教養も高い、正直で、信頼できる人たちであったというのが私の個人的な感想です。知らない人間については、私は何も言い様がありません。

―日本の人道支援については、やるのであれば赤新月社とトルコを通じてやるべきだとのことだったが、難民の方たちにどのような形で届くのか?それを説明してほしい。また、そうすればこうした活動はテロの抑止力になるのか?

中田氏:難民と言った場合、国内難民と国外難民がございます。今回の提言というのは、トルコ及び赤新月社を通じて、あくまでもイスラム国の支配地域についての話しですので、その意味では国内難民の話になります。

これはイスラム国からのレポートを読めば分かる通り、イスラム国の生活は非常に苦しいものがございます。それは私自身も見てきたことですけれども、その際の人道援助というのが、どういう形になるのか、それがテロを減らすことになるかどうか、というのは考えないというのが人道援助の基本ですので、それについては直接的な効果は必ずしも期待できないかもしれません。

しかし、先ほど申し上げた通り、元々、イスラム国の前身が出現したのは、イラク及びシリア、特にイラクですが、アメリカの空爆によって難民化した人たちに対する補償がなかったことに対する恨みが発端であるという意味で、間接的には減らすことになるとは言えると思います。

具体的には食糧、医薬品および、シリアも非常に冬は厳しいので暖房器具、毛布、そういった人道支援以外に使えない物資を配るというのが具体的な方法として思い浮かぶことです。

―これから中田さんは日本政府に対して、この提案をすると声明でおっしゃっていたが、今後のスケジュールを教えてほしい。

中田氏:私自身、今必ずしも自由の身ではございませんので、とりあえず、ここで話したことを全世界に伝えてほしいと思います。それはもちろん日本政府にも届くはずですので。

―今日までの報道を見る限り、日本政府は本件に関して、交渉のパイプを持っていないと言われています。今日、中田さんがパイプ役になれるというアピールをしたわけですが、これに政府が反応しなかった場合、政府が人質を救出する気があるとお考えですか?政府の対応についてどのように考えますか?

中田氏:(昨年)9月に私がイスラム国を訪問する時に、事前に外務省に間接的にですけれども、お知らせいたしまして、そして、協力することがあれば協力したいという話をしましたけれども、その時外務省からはトルコの空港で「これは自己責任であって、行かないことをお薦めする。行く場合はご自由に」ということで協力は要らないということでした。

それで、もちろん私自身が協力しなくても解放できるのであれば、それで結構なことですが、現在までの展開を見ると、極めて怪しいのではないかと残念ながら思っております。

72時間以内に交渉の糸口をつかむことが重要


―中田さんは、イスラム国のどのような立場の人間と交渉が出来て、どの程度2人が解放される可能性があるのか?また、72時間を過ぎた場合に2人の生命に迫る危険はどの程度のものか?

中田氏:まず第一の点ですが、ウマル・グラバーというのは、最初に秋田先生からも説明がありましたけれども、イスラム国の中で唯一表に出てきている人です。その意味は、まずfacebookとかTwitter上で公式アカウントを持っておりまして、最近つぶやきが減ってはいますが、今は発言を続けております。

本人自身が特定できる、顔も表に出ていますし、今まで日本でいうと常岡さんや横田さんといったジャーナリストもインタビューしています。その2回とも私自身立ち会っております、イスラム国の中で、どこまで主導的な地位にいるのか、私もはっきりとは申し上げられませんけれども、少なくとも イスラム国の行政機関の中で働いている。

そして「司令官」という肩書でよばれている。彼は今、広報というか宣教担当という立場になっておりまして、何度も申し上げているとおり、顔も出していて、特定できる。皆さんでもウマル・グラバーと見ていただければ認識することができる。その意味で、騙される、偽者であるということはあり得ません。しかし、彼自身がイスラム国の代表、スポークスマンとして話せるわけではありませんけれども、あくまでも私はそれをつなぐことができるというだけの話です。

第2の点ですけれども、72時間という非常に短い時間。このことが何を意味するのかということは私もまだ掴み兼ねています。しかし、実際に72時間でお金が払い込まれるというのは、どうやって払い込むのかという交渉その他もありますので、72時間以内にお金が払われなければ、という話ではないと思います。まず交渉の糸口をつかめるかどうか。それが72時間の対応に掛かっていると思います。とにかく、交渉の糸口をつかむことに全力をあげたいと私は考えています。

―身代金を支払うべきかどうかについてはどう考えるか?理由と合わせて教えてほしい。

中田氏:先程も申し上げた通り、身代金を払うというのではなくて、トルコを仲介に赤新月社を通じて、イスラム国の支配下にある地域の国内難民、戦争被害者に対して、人道援助を行うということですね。 彼らに信頼して任せるということです。結局、分配に関しては彼らの信頼によるしかないわけですし、そしてまた現在のイスラム国、あるいはイスラム国の前身となったと言われるヌスラ戦線が、とりあえず支持を広げた大きな理由は、他の軍閥、民兵集団と違って彼らが援助金、援助物資を公正に人々に分配した。そのことによって、他の自由司令軍たちに比べて支持を得たという実績がございます。それを信じて彼らに任せるということであって、テロリストの要求に屈して、身代金に払ったということではなく、あくまでも彼らの要求も、日本政府はアメリカの同盟国を通じて人道援助を行ったので、我々を通じて同じような人道援助をしてほしいということだと、私は理解しています。

―イスラム国の認識の中で、日本はいつからビデオの中で指摘されているような「十字軍に参加した」と考えられるようになったと思うか?

中田氏:まず十字軍の一部になったかどうかについては、もちろんイスラム世界の中での認識は異なっていると思います。特にイラクに関しては日本からは自衛隊を派遣しております。イラクですので、それは当然彼らは知っているわけです。その意味では、今特に新しいことが起きているという認識ではないという風に思います。

ただ、一般的に中東ではいまだに日本というのはアメリカとは違うという認識があります。今回の件に関しても、いままでの人質の首を切られる時も、アメリカに対しては攻撃を辞めろというメッセージだったわけですが、日本に対しては明らかに違う。日本の役割はあくまでもお金を出すことであると。それはやはり直接攻撃するものとは別ということは、今でも維持されております。ただし、質問者の方からも指摘があったように、イスラム国の支配地域に対して人道支援を行うことがテロリズムに対する支援ではないのかという考え方もある。それは彼らから見ても同じことです。

当然、アメリカ軍に対して人道援助という形で支援していても支援していることには変わりはない。しかも、先ほどから何度も申し上げている通り、イスラム国だけを名指しして、それと戦うためにという言い方をしていますので、彼らか見ると、我々と戦っているという認識になってしまうのは仕方ないことだと考えます。

―いままでの脅迫の映像では、英国人のイスラム教徒が英国人の人質を処刑する立場に立つというようなことがあったが、今回は、日本人のイスラム教徒が出てきたわけではなかった。これは日本人のイスラム教徒がいなかったからだと考えるが、もし北大生の渡航が実現していたら、北大生が人質を罰する立場にいた可能性もあるのではないか?その点をどう考えるか?

秋田弁護士:今回は北大生の件については、特にコメントはしないということでここにおります。また、いくつもの仮定が積み重なった質問に回答することは難しいと思います。

―人命を重視した場合、今回他に取るべき方策はないのか?最悪の場合を含め、今後どのような事態が予想されるか?

中田氏:私自身は、先程の方法が唯一の方法だと考えています。最悪の事態というのは、アメリカ軍あるいはシリア軍の空爆によって、殺されてしまうということだと考えています。

―二人が処刑されるというのは、最悪のケースではないのか?

中田氏:まず私が「最悪の場合」といったのは、空爆で殺されるというのは、今この瞬間でも起こりうるわけです。72時間後であるという保証すらない。今現在、多くのイスラム国の住人、民間人が殺されています。それと一緒に殺されてしまうことが私は「最悪」だと考えています。

もちろん、72時間が過ぎて、日本政府からの反応がなくて、殺されてしまう可能性ももちろんあります。

■関連記事
「警察の捜査が、湯川さん後藤さんの危機的状況を引き起こした」 - 午後に行われた、ジャーナリスト常岡浩介氏による会見

あわせて読みたい

「ISIL」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    徴用工判決で世界の信用失う韓国

    NEWSポストセブン

  2. 2

    ロンブー淳「BTSに話聞きたい」

    キャリコネニュース

  3. 3

    服脱ぐ女性ファンも SNSで過激化

    渡邉裕二

  4. 4

    マツコ 人付き合いない方がいい

    キャリコネニュース

  5. 5

    川上量生氏からの「抗議」に反論

    やまもといちろう

  6. 6

    なぜ金持ちはタワマンを嫌うのか

    PRESIDENT Online

  7. 7

    企業の学歴フィルターは当たり前

    永江一石

  8. 8

    音喜多氏 上田都議は対話を拒否

    おときた駿(東京都議会議員/北区選出)

  9. 9

    Tシャツ騒動で悪化する日韓問題

    ヒロ

  10. 10

    林修氏 人脈求めるさもしさ指摘

    キャリコネニュース

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。