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中国株の急落、米株は本当に無傷でいられるのか

After China’s Stock Market Plunged, Will The U.S. Stay Intact?

中国証券証券監督管理委員会(CSRC)が16日、証券会社大手に新規の信用取引口座停止を命じ上海総合指数は19日に7.7%もの大幅安で取引を終えました。中信証券、海通証券、国泰証券への措置に反応し2008年6月以来、約6年半ぶりで最大の下げとなっています。一時8.3%も沈んだ背景には信用取引の期日を繰り延べといった業務違反があり、他の証券会社9社にも警告を発していました。

2014年12月11日にCSRCが証拠金取引事業を調査するチームが立ち上げられたとの報道を受け、取り締まり強化観測が流れていたので今回の荒療治は時間の問題だったとも言えるでしょう。2014年に上海総合指数が54%急伸した一因に、証拠金取引の増加が挙げられていましたから、なおさらです。キングストン・セキュリティーズ(香港)で調査部門のエグゼクティブ・ディレクターを務めるディッキー・ワン氏は、AP通信に「証拠金取引は単に拡大し過ぎた。当局は仲介業者にひと息つかせる必要があったのだろう」とコメント。過熱する信用取引の陰で「証拠金取引やショートが何かを理解していなかったにも関わらず、当局の承認を受けてお金を借りて市場に参加できる仕組みに喜んで参入した」と振り返ります。

特に足元の証拠金取引動向は、目を見張るものがありました。クオーツが上海証券取引所の数字として伝えたところ、証拠金取引残高は7670億元(1230億ドル、14兆6160億円)で、3ヵ月前の4440億元から急増していたんです。新規株式公開(IPO)が集中した2014月11月に、中国人民銀行が利下げを断行し流動性不足への関与を余儀なくされたことと、無関係ではないでしょう。利下げ後に株価上昇ペースが加速していた点にも、注目。CSRCが尻拭いとして、早急な対応を迫られたようにも見えます。

上海総合指数、2014年11月21日の利下げ後に上げ足を加速。

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(出所:Stockcharts)

当局はそのほかシャドーバンキングの新たな温床とされる委託融資、すなわち銀行を介した企業間融資の規制案も発表。証券を中心に10%のストップ安をつけるなど銀行、保険をはじめ金融株が急落をけん引しました。

見るも無惨な大幅安を演じたとはいえ、上海総合指数は依然として過去12ヵ月間で55%の上昇、3ヵ月間で33%もの上昇をキープしています。高いところで大鉈を振るい、個人投資家の傷を最小限に抑えようとした意図を感じられなくもありません。クオーツが紹介したバンク・オブ・メリルリンチのストラテジスト、デビッド・クイ氏の言葉が思い出されます——「マーケットの急激な巻き戻しは、大問題となりうるだろう。中国人投資家は相場が下落した時に証拠金取引でどのような事態が発生するのか経験していない。株式相場の下落で個人投資家が証拠金のポジションを売却する羽目になったとき、初期投資より多くの負債を抱える羽目になることに気づくはずだ」。

現状、中国株の急落は局地的現象にとどまっています。AP通信も「中国当局が海外からの投資を制限しており、外国人による中国株エクスポージャーは限定的」と報じるように、連鎖反応を懸念していません。ただAPは香港株が問題と伝え、真価が問われるのは中国10−12月期国内総生産(GDP)が発表される20日としています。

裏読みすると、CSRCによる今回の行動は悪くないGDPを先取りし信用取引の一段の活発化を防ぎたかったのかもしれません。それとも低成長に伴う株安を見込んで、先に膿を出させたのか。後者の場合なら、中国株だけの問題ではなくなるでしょう。商品相場にさらなる打撃を与えかねませんしね。

特にアメリカ人投資家の場合は、上場投資商品(ETP)を通じ中国株に投資しているため無視できません。ブラックロックの”12月版ランドスケープ”によると、世界で中国関連ETPは2014年12月時点で18億ドル、2014年で29億ドルの流出を記録していました。ただし米国でのフローをみると、中国株関連ETPには2014年12月時点で3億5920万ドル、2014年で5億8790万ドルの流入を示していたのです。総資産額は108億7750万ドル(約1兆2800億円)に及び、日本の282億4640万ドル(約3兆3200億円)の約3分の1とはいえ、ドイツの48億4290万ドル(約5705億円)と比較するとその規模の大きさは一目瞭然です。

エマージング諸国との比較でも、中国株への資金流入は顕著。()内は流出額で左から2014年12月、2014年通期、総資産額、ETP数。

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(出所:BlackRock ETP Landscape)

中国へのエクスポージャーをもつ米国投資家なら、米株ポジションを保有していること必至。中国関連で損失が発生した場合、しわ寄せが米株にいかないとも限りません。足元で米株市場がボラタイルなだけに、雪崩現象は見捨てておけないリスクでしょう。スイス国立銀行(SNB)によるユーロ・ペッグ撤廃後の混乱も完全に収束したかは不透明ですし、欧州中央銀行(ECB)の国債買い入れ策が市場を納得させられるかも未知数です。米株が買い戻し歩調を固め、上昇の一途をたどるかは疑問が残ります。

余談ですが奇しくも2月から、アメリカン・ドリームを追う台湾系アメリカ人家族のすったもんだを描いたコメディ・ドラマ「Fresh Off The Boat」が放映を開始します。レストラン経営者で著名シェフで知られる、エディ・ファンの子供時代をフィーチャー。アジア系アメリカ人のドラマは、1シーズンで打ち切られた「All American Girl」以来で初めてだとか。エディの父親役は、映画”ザ・インタビュ—”で北朝鮮の指導者を演じた韓国系俳優、ランダル・パク。移民の数と合わせ米国内でアジア系アメリカ人が台頭してきた片鱗をのぞかせるとともに、TV局や広告主ですらアジア系の潜在購買力に訴求しつつある様子が浮かび上がっています。

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