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スイスフラン急騰。社員がFXで大借金を背負った場合の会社の対応 - 榊 裕葵

1/15(木)、スイス中銀が突然為替変動上限ラインを撤廃したことにより、スイスフランが急騰した。インターネットの掲示板などを見ていると、FX(外国為替証拠金取引)を行っていた個人投資家の中には、追証により数千万円の借金を背負ってしまった人もいるようだ。

大きな借金を背負った人の中には、普通のサラリーマンも少なからずいたようだ。

そこで、社会保険労務士として会社側の視点に立ち、「自社の社員がFXによって多額の借金を背負ってしまった場合、会社はどのように対応をすべきか」という観点で本稿をまとめてみた。

■FX自体は悪くない

まず、FXは、確かにリスクが高い投資ではあるが、法的に認められた資産運用手段の一つであり、違法なものや反社会的なものではないことは確認しておきたい。

したがって、賭博のような違法行為と同列に論ずることはできないから、借金の有無に関わらず、FXを行ったこと自体を理由として、懲戒解雇その他の処分をすることができないのは言うまでもない。(もっとも、勤務時間中にスマートフォンなどでFXを行っていたら、職務専念義務違反として懲戒は可能)

だが、次のような影響が考えられる。

■気が動転して仕事に手がつかない

社員が多額の借金を背負ったショックにより、気が動転して業務上に必要な集中力を欠くような場合だ。業種が運送業や保健衛生業のような場合は、取り返しのつかない事故につながる可能性があるので、とくに気をつけなければならない。

このとき、会社は出勤停止を命じることが可能であると考える。仕事が正常にできないのだから当然のことだ。もちろん、本人の責任によるものであるから、出勤停止期間の賃金は支払う必要はない。

その後、本人が気を取り直して通常の心理状態を取り戻したならば出勤を許可すればよいし、長期間に渡り心神喪失の状態が続くようであるならば、普通解雇も視野に入ってくるであろう。ただ、解雇は後々訴訟の問題にもなりかねないので、会社としては、本人に退職届を出させる対応が望ましい。

■会社にまで借金の取立てが来る

また、借金が払えない場合は、会社にまで督促の電話が来ることもあるだろう。場合によっては、債権回収会社や弁護士などが来社してくるかもしれない。

このようなときは、本人に適切な対処をさせるようにし、それでも事態が改善しない場合は、やはり自宅待機を命ずることができると考える。私生活上の出来事を処理できず、職場を混乱させているという理由である。やはり、本人の責任であるから、自宅待機期間の賃金を支払う必要はない。

■社員の賃金を闇金融に払ってはならない

次に、会社と借金の債権者との関係についてだ。

社員が返済のために苦し紛れに闇金融的な業者から借金をすると、業者が会社に対して、「本人の賃金をこっちへ払え」と言ってくる可能性も想定される。

だが、このような場合、会社は決して応じてはならない。労働基準法には賃金は直接本人に支払わなければならないと定められており、闇金融へ賃金を払ったことをもって社員本人には対抗できず、会社は2重払いをしなければならなくなってしまうからだ。

ただし、裁判の結果として給与債権の差し押さえが行われた場合は、法律に定められた範囲で、債権者に直接支払うことが許される場合がある。

なお、会社が本人を守る意思があるのであれば、本人が消費者金融や闇金融に手を出して、さらなる蟻地獄にはまらないよう、可能な範囲で借金を立替え、毎月の給与から返済をさせていくことも可能であろう。

■福利厚生として会社が「お金」の教育をするという提案

今回のスイスフランの件は終わってしまった話であるが、そもそも、相場では何があるか分からないのだから、一般の人が、場合によっては借金まで背負うようなリスクの高い投資をしてはならないと私は思う。

ただ、私が懸念をしているのは、理解した上で高いリスクを取るのであれば完全に自己責任であるが、現在はFXの口座も株式の信用取引の口座も簡単に開設できてしまうので、自分がいかに高いリスクを背負っているのかを無自覚のまま投資を行い、大きな相場変動があったときに全財産を吹き飛ばして、はじめてリスクが表面化してしまうようなケースである。

ここで私が提案したいのは、会社が福利厚生の一環として、外部からファイナンシャルプランナーなどを講師として招き、社員に資産運用の研修を行うというのはどうかということだ。

本当は学校教育の必修科目くらいの位置づけで「お金」の勉強は教えるべきだが、まだまだそのような動きは一部であるし、現在既に大人になってしまっている人は、「お金」についての教育を受ける機会を逸してしまっている。

かといって、銀行や証券会社のセミナーで勉強しようとしても、彼らは顧客を獲得するのが仕事なのだから、床屋に「私は髪を切ったほうが良いですか?」と聞くのと同じくらいバイアスがかかってしまう恐れがある。

だからこそ、職場において中立な立場で「お金」について勉強の機会を与えるというのは、福利厚生としては素晴らしいことではないだろうか。

そうすれば、社員の生活のプラスにもなるし、求人をする際のアピールポイントにもなる。

会社としても社員が私生活でお金の問題で悩みをかかえると、出勤停止とまではいかなくても、集中力を欠いてミスをおかしたり、表情が暗くなったりして、業務上マイナスであるから、そのような事態はできる限り防ぎたいであろう。

20世紀は豪華な社宅や社用車などが福利厚生の花形であったが、21世紀においては、社員のライフプランを豊かにするような情報や教育を与えることも、立派な福利厚生になるのではないだろうか。

《参考記事》
■東京都内の企業が有期社員を正社員へ転換したら助成金100万円支給へ! 榊 裕葵
http://ore-no-jyoseikin.blog.jp/archives/20377991.html
■“myamya”の眼鏡が1本5万円でも次々に売れる理由 榊 裕葵
http://sharescafe.net/41144431-20141003.html
■「クラウドママ」を普及させて、働く女性が子育てをしやすい国にしよう! 榊 裕葵
http://sharescafe.net/41752066-20141106.html
■銀座久兵衛式!?社員に黙々と仕事をさせないから繁盛するステーキ屋さん「然」の秘密 榊 裕葵
http://sharescafe.net/42065984-20141125.html
■ライフネット生命は「保険」を「貯蓄」という足かせから解放した。 榊 裕葵
http://sharescafe.net/41835101-20141111.html

あおいヒューマンリソースコンサルティング代表
特定社会保険労務士・CFP 榊 裕葵

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