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主要コミック誌がいよいよ電子版を強化しはじめている

大手の出版社が、コミックの電子配信強化の動きを見せている。これまでは、まず週刊(月刊)本を買って、気に入ったタイトルを単行本でまとめて揃える、という読者のスタイルが、マンガ文化や市場を形成してきた。筆者も結構、貢献してきたと思う。電子版に関しては、いろいろ意見があるのだが、今回の決定が、出版界全体のオンライン配信強化を加速させることだろう。デジタル環境下でも、たくさんのタイトルを集めて楽しむ方法がうまく見つかれば、ファンの心を掴んでいけそうな気がする。

(なお、この原稿は、YOMIURI ONLINEに掲載したコラムの「メディアランドスケープ」《2015年1月15日掲載》に一部加筆したものである)。

主要コミック誌が配信強化へ

講談社が、コミック誌の電子版事業に本腰を入れ始めた。

主力の「マガジン」系の3誌(週刊と月刊)を、紙の発売と同時に、ネット上でも公開する。そこでは「まるごと試し読み」が可能で、気に入れば、さまざまな電子書店(オンライン配信サイト)での購入ができるようになった。この6月までに、同社のコミック22誌の全てを電子書籍化する計画らしい。これでまた、電子書籍の動きが勢いづいた感がある。

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筆者も「電子書籍」への意見を求められることも多いので、いくつか、配信サイトやアプリなどに、ときおり目を通している。例えば「LINEマンガ」の場合、プッシュ方式でひんぱんにコンテンツが届く。詳しく読み込むわけではないが(心動かされる作品とはあまり出会えないのが正直な気持ちだが)、便利だし、若いコミックファンたちは、きっと重宝しているだろう。

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自己史と重なるマンガ市場の拡大

実は筆者はまさに、マンガ文化の発生と成長とともに、人生を過ごしてきた世代に属している。子どもの頃は、小遣い銭をやりくりしながら、週刊マンガ誌を熱心に購読していた。親からの視線は厳しかったが、その後もマンガとは親密な関係にあったと言っていい。

学生から社会人になる過程でも離さなかったので、「電車の中でいい大人がマンガを読んでいる」という社会的批判を(個人的にではないが、世代として)まともに受けたりしたこともあった。

週刊本は読み飛ばし、気に入ったタイトルの単行本が発売されれば買い揃えているうちに、書架が、コミック(いつの間にか、呼称が変わっていた)で溢れかえっていたのだが、たいせつに持ち続けた時期が続いた。

ただ、家庭を持ってからは、(伴侶も同世代なのでそれなりの理解はあったが、スペースやその他の事情から)ため込んでいたコレクションを、しぶしぶ売り払うことも多くなった。身近からなくなると不思議なもので、愛着も控えめになってしまっている。今は、仕事の関心から目を通すくらいなので、コミックファン心理に関しては、あまり偉そうなことは言えない。

そしていまでも、友人のなかには、これまで購入したマンガ本を全て保有していることを誇りにしている(それゆえに住居がマンガで占拠され続けている)筋金入りのコレクターもいる。学者や文筆業のひとたちの書物コレクションとは、また一味違う情熱を、感じてしまう。

デジタルの環境でのコレクション価値

電子ビューワーの進化が、コミックを楽しむうえでの新しいリテラシーを作りつつある。出版側も対応をせざるを得ない(作家の中には、まだ、電子配信を受け入れていない人もいるが)。

この動きはどうなるのだろう。まず、マンガ(コミック)への愛着は、コレクションの価値と、不可分のように思える。友人を尊敬するだけに、それなりの巻数の紙の本が揃っている迫力を、どうしても想起してしまうのだ。

とは言え、これは単なるリテラシーの問題で、デジタル機器で最新の連載を読むことがあたりまで、気に入ったタイトルをクラウドに保存し、必要なときに読むというスタイルが普及してくれば(たとえいまは苦難のときに思えても)、可能性は大きいはずだ。そもそも先行する音楽でも、同じような軌跡を辿ったではないか。例えば、iTunesは今でも進化しながら使いやすくなっているが、アルバムタイトルの画像イメージが、コレクター心をくすぐるように揃ってきたのも一因だと思える。

一方で、テレビ番組視聴の傾向を見ても、スポーツやニュースのように、リアルタイムで放送することに価値があるコンテンツと、逆に、ドラマやバラエティのように、見る側がそれを欲するときに見るために(つまりは「オンデマンドのニーズ」に)ふさわしい番組に分化をする傾向がはっきりしてきている。そして後者は、録画の視聴や、あるいは配信やパッケージにむいていると考えられる。

そうした意味で、コミックは、典型的なオンデマンド型コンテンツとも言えるだろう。モバイルメディアやアーカイブの仕組みとの相性はそもそも悪くない。

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だからこそ、たくさん保有することの喜びを、デジタルの文脈で上手にくすぐる仕組みが、デザインや使い方を工夫して前面にでてくれば、市場はこれからもっと活性化すると思える。新しいインターフェイスの工夫や、コレクション型の購入を促進するようなアイデア開発に、知恵を傾けるべきではないだろうか。

(文中のビジュアルは、アップルストア、および、集英社の間連サイトからキャプチャーさせていただいた)

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