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【記者100人の声】佐久間 裕美子 氏 PERISCOPE

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自身初となる著書、『ヒップな生活革命』(朝日出版社)が大ヒット中の、ニューヨーク在住ライター・佐久間裕美子さん。サブプライム金融危機に起因したメディアの危機的状況を受けて、自分たちの媒体をと、音楽、動画、活字を融合した新感覚iPadマガジン『PERISCOPE』を立ち上げた背景を聞きました。

自分みたいな人間に、アウトプットできる場所があることに驚いた


Qライターになるまでの経緯を教えてください。
文章を書くことが得意かもと気づいたのは、大学4年生の時です。アメリカのイェール大学大学院に留学する前、大学生活を振り返った少し自虐的な内容のエッセイを書いたのですがこれが予想以上にウケて。英語の通信講座や英語雑誌の『アルク』の関係者に見せたところ、「大学院留学日記」を書いてみない? とオファーをいただき、連載をさせていただきました。

大学院を出た後は、5年ほどニューヨークの新聞社や出版社、通信社で働きながら、副業で雑誌のライターとしての仕事を続けていましたが、会社員が向いていないという自覚から、2003年に独立しフリーライターになりました。

Qアメリカにこようと思ったきっかけは?
画像を見る大学2年時にスタンフォード大学に短期留学していたのですが、その時、サンフランシスコでジャム・バンドの英雄、ジェリー・ガルシアのライブを体験し、アメリカという国に魅力を感じたからです。ジェリーは、日本でもヒットした書籍、『グレイドフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)の題材となった、グレイドフル・デッドのメンバーでもあります。

ライブ会場では、大麻が売られている横で警官が談笑しているなど、日本では考えられない光景がたくさん見られ、変な国だなぁと感じましたが、同時に、アメリカの自由な風土と懐の大きさを感じて、ここに住んでみたいと思いました。

Qニューヨークを選んだきっかけは?
大学院に進学するときは、コネティカット州にあるイェールか、北カリフォルニアのスタンフォードを選ぶかで悩みました。初めて1994年にニューヨークを訪れたときには、治安が今よりかなり悪く、初めは、ニューヨークは人の住むところじゃないと思いました。でも友達に絶対楽しいから! と薦められるままに、もう一度きて、クラブで遊んだりしていたら、これは楽しい! と気づいて。
留学時代からたまに遊びにきたりしていたのですが、卒業時にやっぱりニューヨークで暮らしてみたいと職を探しました。

それから、もう16年もニューヨークにいます。取材でいろいろな場所に行くチャンスがありますが、今のところはニューヨーク以外で、フルタイムで暮らしたいと思うところはないですね。

Q今は日本の雑誌への寄稿を中心にされているようですが、アメリカにいながら日本のメディアとはどうやって関係を築いているのでしょうか?
独立当初は、編集者になった学生時代の友達や後輩経由だったり、マガジンハウスに勤めている妹が、『BRUTUS』特集に推薦してくれたりと、人づてで仕事のチャンスが広がっていきました。独立した年に、『BRUTUS』で仕事を始められたことは、自分の中では大きかったかもしれません。まだ誰も書いていないようなおもしろい出来事や人の動きについて、読者に伝えることの喜びを学びましたから。

以前は報道をやっていましたが、カルチャーへの関心が強くて、雑誌の世界に飛び込むことにしたわけですが、もともと音楽にしても、アートにしても、本流と違うやり方をしているクリエーションに惹かれる傾向がありました。そんな自分の「これはイケている・イケていない」というジャッジがアウトプットできる場所が見つかったことは、ある意味、驚きでした。

独立当初は、ニューヨークの取材が主でしたが、ある時、『BRUTUS』の旅特集でアイスランドのストーリーを提案したところ、その企画が通りました。それ以来、各誌のエディターさんの間で認識してもらえたようで、ニューヨークの外の取材の依頼も入るようになりました。今も月に1週間ほどは、どこかしらに出張に行っています。

「iTunes革命」が本にも来るんじゃないの? で始まったiPadマガジン


Q2012年、iPadマガジン『PERISCOPE』を発売しました。音楽、動画、活字を融合した、見事なまでにiPadの特性を活かしたデジタルマガジンという印象ですが、アイディアはiPadの発売を受け生まれたのでしょうか?

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何か自分たちの媒体をやりたいという気持ちは、iPad発売前から持っていました。ただそれをどう形にしたら良いだろうかとブレストしているタイミングでiPad発売の話を耳にし、うまくデバイスと概念が合致したという感じです。『iTunes』の登場により、音楽界に革命が起きたように、本の世界もガラリと変わるかもしれないと思ったんですね。

ただiPad用のデジタルマガジンを作ろうと実際に動きだすまでは、重厚の紙の本を作ってみようかなど、全く別の案もありました。これは、パートナーの一人のアメリカ人に、「紙のメディアを作るなんて自殺行為」と一蹴され、なくなりましたけれど。

『PERISCOPE』は、潜望鏡のことです。「クリエーションの裏側の熱量を伝える」「人との会話の中で、アイディアが生まれる瞬間を覗き見できる」という意味を込めました。
動画を採用している理由は、いくら活字にしたところで、伝えられることには限界があるからです。その人らしさ、考えていることを表現するには、声のトーンや間合いがそのまま映し出される動画が一番ですからね。動画を使うと、途端にコストがかかってしまうという側面はありますが。

Qところで、どうしてご自身でメディアを立ち上げようと?
サブプライム金融危機後、フリーライターという職業にある種の限界を感じことが発端になっています。危機がやってきて、これまで愛してきた雑誌がなくなったり、誌面上で面白いことができる余地が減ったりしたときに、愚痴を言っていたら、『PERISCOPE』の共同創業者である山口優から、「だったら自分でメディアを作れば?」と提案を受け、一緒にプロジェクトを始めることにしました。

もともと、もう一人の立ち上げメンバーであるアートディレクター、SIMONEのムラカミカイエとも、何か一緒にやりたいね、と話をしていたので、SIMONEのノウハウを借りながら、今の形を作り上げていきました。当時、紙の雑誌をiPadで閲覧できるようデジタル化しているものはたくさんありましたが、インタラクティブ性を利用した媒体はありませんでした。ストーリーを伝えるためにどの形がいいかを再優先に考えながら、縦型にするのか横型にするのかからスタートし、一つひとつ手探りで準備をしていきました。

Q定価は400円。これほど手が込んでいるところを見ると、安すぎるのではと感じますが…
値段については、かなり頭を悩ませたところで、正直今も悩んでいます。これまでPERISCOPEは「予算なし」の方針で作ってきました。立ち上げに際して有料にしたのは、クリエイティブなものがどんどんFreeになっている世の風潮に対し、一種のステートメントを出したかったから。

結局、いくらカッコイイものを作っても、無料で提供されれば、「お金にならない」。それでは、若いアーティストたちのモチベーションにはならないですよね。ただ、そもそもiPadを持っている人しか見られないメディアなので、有料にしていることがさらに制限を加えてしまう。だったら無料にしたほうがいいのではと、今議論しているところです。

Qメディアには、多種多様な方のインタビューが掲載されていますが、インタビュー基準はどうされているのでしょうか?
基準は、主要メンバー全員が合意すること、それから取材対象者がインディペンデントに活動していること、既存のやり方とは違う新しいアイディアを持った人であることです。

書籍第二弾を出すとしたら、「教育」について書いてみたい


Q佐久間さんのライターとしての強みについて、ご自身ではどう分析されていますか?
通信社で働いていたときに、ワールドトレードセンターの同時多発テロが起きたので、世界のマクロな動きがマーケットにどう影響があるのかという大局的な見方を学んだことは、強みになったのではないかと思っています。

たとえばデザイナーを取材するときに、単に商品やお店だけじゃなくて、この洋服はどこの国で生産され、どうしてこの値段が付けられているのか、といった視点で考えるようにしています。バックグラウンドまで見る癖がついているので、体系的な記事が書けるのは強みだと思います。

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Q著書「ヒップな生活革命」も、そうした視点で書かれた書籍なんですね。
自分がこれまで取材してきたことを体系的に考え、文脈をつけるという作業になりました。若い頃は本を出してみたいと思ったこともありましたが、実際にライターになってみると、自分が短距離走者であることがよくわかり、本を書くという長い作業をできるとは思えなかった。
編集者の力によるところが大きいのですが、ひとつの形にできたことは、一つの発見になりました。

Qこれからも本を出していきたいという意欲はありますか?
今、いくつか次作の計画があって、アイディアを練っているところです。トップダウンな既存の「教育」とは違うより受動的な「学び」の方法や、ボトムアップで変化が起きているコミュニティの取材に興味を持っています。国の政府よりも、自治体の行政が、人々の生活により大きな影響を及ぼす時代に、現場でどういう試みが行われているかを取材したいですね。

(取材日時:2014年10月21日/取材と文:公文 紫都)

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