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韓国の財閥3世に向けられる世間の冷たい視線 ‐ 澤田克己

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大韓航空の趙顕娥(チョ・ヒョナ)前副社長(40)がナッツの出し方に激怒して離陸直前の自社機を引き返させた「ナッツ・リターン」事件で、韓国の財閥に対する関心が改めて高まっている。

 日本でも数年前までは「オーナー主導だから意思決定が速い」などと良い面が評価されていたが、今回の事件では財閥オーナーの専横ぶりへの批判が多い。そうした変化の背景に日本での嫌韓感情の高まりがあるのは否定できないが、一方で、これを機に韓国の財閥というのは何かを考えてみるのも悪いことではないだろう。

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「ナッツ・リターン」事件で注目を集めた大韓航空の趙顕娥前副社長
(写真:AP/アフロ)

財閥依存の韓国経済

 韓国経済は、財閥に依存しているといわれる。韓国経済における財閥の存在感というのは、実際にはどの程度なのだろうか。

 気をつけねばならないのは、「10大財閥の売上高合計が国内総生産(GDP)の7割以上」などという比較は不適切ということだ。GDPは、企業の売上高を積み上げたものではなく、国内で生み出された付加価値の合計だ。違うものさしを並べても、比較にはならない。

 ただ、財閥の存在感が非常に大きいのは事実である。財閥情報専門のネットメディア「財閥(チェボル)ドットコム」<http://www.chaebul.com>の調査結果を見ると、それは一目瞭然だ。財閥ドットコムは、サムスンや現代自動車を含む10大財閥の売上高と当期純利益が、国税庁に法人税申告をした企業約52万社の中で占める比率を集計した。ちなみに、大韓航空を擁する韓進グループは、調査時点の資産規模で財閥序列9位に入っている。

 財閥ドットコムによると、10大財閥の2013年の売上高合計が全体に占める比率は24.8%、当期純利益だと41.9%に達した。中でも、サムスンの主力企業であるサムスン電子の存在感は圧倒的だ。サムスン電子の2013年の当期純利益は、1社だけで全体の15.5%を占めた。韓国経済の中では財閥が圧倒的な存在感を持ち、その中でもサムスンが他を圧倒しているという構図だ。

3世への世襲が進行

 サムスンでは昨年5月、李健煕(イ・ゴニ)サムスン電子会長(73)が心筋梗塞で倒れて以降、李会長の長男である李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長(46)が事実上の経営トップとなる体制への移行が進んでいる。李健煕会長の父が1938年に韓国南東部・大邱でサムスン(三星)商会を設立しているから、李在鎔氏は3世経営者ということになる。

 他の財閥でも2010年ごろから、創業者の孫世代がグループ会社の社長や副会長といった要職に就き始めた。韓国の財閥は、日本の敗戦によって植民地支配から解放された1945年前後の創業が多い。創業から70年ほど経って、3代目経営者の時代になってきているということだ。ナッツ・リターン事件の主人公である大韓航空の前副社長も、創業者の孫である。

 解放前後の混乱や朝鮮戦争(1950~53年)という動乱期、戦後復興の中で、必需品である砂糖や小麦粉、セメントなどを扱う企業が成長した。その典型がサムスン商会であり、そうした企業が後に財閥の母体となっていった。

朴正煕が「作った」財閥

 朴槿恵(パク・クネ)大統領は2012年12月の大統領選で勝利した1週間後、日本の経団連に相当する「全国経済人連合会(全経連)」を訪問した。朴氏はこの時、韓国の大企業が成長できた裏には「多くの国民の支援と犠牲があり、国からの支援も多かった。だから、韓国の大企業は国民企業の性格が強い」と強調した。

 朴氏の言葉の背景には、韓国特有の事情がある。韓国の財閥は、朴氏の父である故朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が作り、育てたようなものだからだ。

 1961年に軍事クーデターで政権を握った朴正煕氏は、1979年に殺害されるまで、民主化運動を弾圧する独裁政治を行う一方で、世界最貧国レベルだった韓国に高度経済成長をもたらした。韓国国防大の許南●(ホ・ナムソン、●は「さんずいに省」)名誉教授は、「朴正煕大統領は権力掌握後、安保と経済を最優先課題とした。一言で言えば『富国強兵』だ」と話す。

 しかし、当時の韓国は貧しかったから、内需主導の成長など望むべくもない。必然的に輸出志向の成長戦略を取るしかないのだが、輸出産業を興すための資金も、技術もなかった。

 その状況を覆すべく朴正煕大統領が決断したのが、日本との国交正常化だ。植民地支配に対する謝罪や賠償を勝ち取れないまま対日国交正常化に踏み切るという決断は、「屈辱外交」という強い反発を韓国内で生んだが、朴正煕大統領は戒厳令を敷いてまで押しきった。そして、日本から5億ドルの経済協力資金と技術の供与を受けることで経済成長の基盤を作った。

 ただ、資金面の手当てがついたといっても、余裕があるわけではない。だから、限られた資源を効率的に活用するため、特別な低利融資などといった形で「選ばれた企業」を後押しした。こうした形態が政経癒着に結びつくのは当然だが、それでも「漢江の奇跡」と呼ばれる驚異的な高度成長につながっていった。

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