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菅直人首相は、日本航空人員削減が招く墜落事故多発の危険性に無関心、「政権交代」を後退させるばかりだ

◆日本航空の稲盛和夫会長(前原誠司外相の元後援会長、前原国土交通相の要請で日本航空会長に就任)は、更生計画によりグループでは1万6000人を減らすとしている。だが、更生のための合理化とはいえ、効率性、収益性を重視し、その半面、「安全面」にコストカットを徹底しすぎると、航空機墜落の危険性が高まることを忘れてはならない。

 米国ロナルド・レーガン大統領(第40代、在任1981年1月20日〜1989年1月20日)が停滞していた経済に市場競争原理を取り入れ、「ディレギュレーション」(規制撤廃・緩和)を断行したときのことが思い出される。

 運輸旅客業界では、新進の航空会社が大手の航空会社に取って代わったり、金融業界ではスーパーが銀行を開業し、その窓口をスーパー内に開設したり、エネルギー業界では電気業界が配電や売電の競争を始めたりした。

 ところが、このなかで、たとえば運輸旅客業界では、低価格競争が激化し、弱小の航空会社が相次いで倒産に追い込まれるとともに、安全面でのコストカットをやりすぎた航空会社の航空機墜落事故が多発した。

◆稲盛和夫会長は経営破綻から1年になった1月19日、日本テレビの取材に対し「今後は、人員削減に一切手をつける気はありません。まともに真っ正面から経費を下げる努力をしたい」との考えを初めて示している。つまり、日本航空は更生計画で「グループでは1万6000人を減らす計画」を立て、このうち、すでに5500人を削減していた。稲盛和夫会長の真意は「この計画以上に日本航空本体の人員整理は行わない」という意味である。だが、 日本航空が2010年末に整理解雇したパイロットら約170人のほとんどは、1月19日に解雇の取り消しを求める訴えを東京地裁に起こしている。

◆日本航空は更生計画、とくに50歳以上のベテランのパイロットや40代以上の客室乗務員が整理解雇されている問題について、国会で取り上げた衆院議員は、日本共産党の志位和夫委員長たった1人であった。1月27日の衆院本会議で「日航の『整理解雇』の強行――『4要件』を蹂躙し、『空の安全』を脅かす」と、以下のように代表質問し、ている。

「第四は、違法な退職強要、解雇、雇い止めをやめさせ、解雇規制のルールを強化することです。この点できわめて重大なのは、日本航空が、経営破綻を理由に、1万6千人もの人員削減を強行したうえ、昨年末に165名のパイロットと客室乗務員の整理解雇を強行したことです。この整理解雇は、日航が1460億円もの利益をあげていること、すでに自ら設定した人員削減目標を超過達成していることだけを見ても、判例で確立している「整理解雇の4要件」を乱暴に蹂躙(じゅうりん)するものであることは明白です。

 さらに、世界100カ国以上、10万人の民間パイロットで組織する国際操縦士協会は、日航が、病欠などを整理解雇の基準としたことについて、『このあしき前例が出来上がれば、乗員は体調不良にもかかわらず、職を守るために乗務に就かざるを得ない危険な状況が発生しかねない』と、安全性への深刻な懸念を表明しています。

 総理は、19日、日航の稲盛会長と会談し、『私が期待した以上の成果を上げた』と称賛しました。日航の整理解雇は『整理解雇の4要件』を満たすものだと考えているのですか。『空の安全を危険にさらす』との世界のパイロットの声にどう答えるつもりですか。わが党は、総理が、無法な整理解雇を中止するよう日本航空を強く指導することを求めます。見解をうかがいたい」

 これに対して、菅首相は、こう答弁している。

「具体的な人員削減の進め方については、日航において適切に判断されるべきものだが、整理解雇については司法の場で判断されると理解しており、答えは差し控えたい」

 志位和夫委員長は2月2日午前の衆院予算委員会で、米ニューヨーク市で2009年1月15日午後3時30分(日本時間16日午前5時30分)、離陸直後の旅客機がハドソン川に不時着した事故で、機長がわずか3分の間にハドソン川に不時着すると判断し、機長ら乗務員が、適格な判断や技量を発揮して、乗客を救った話、その後に、機長が米議会公聴会で証言した内容を説明し、衆院本会議場での代表質問と同趣旨の質問を菅首相に、しつこく浴びせていた。

 だが、このときも菅首相は、いつもの眠そうな顔つきで、木に花を括ったような素っ気無い答弁をして、航空機事故の危険性には、まったく関心を示さなかった。自分は、海外出張するときは、政府専用機を使うから関係ないとでも思っているかのようであった。

 しかし、菅首相は、質問者が日本共産党委員長であると侮ったのであろう。だが、いかに日本共産党が嫌いでも、航空機墜落事故の危険性について、まったく素知らぬふりをするのは得策ではない。その「心根」を如実に露呈していて、大多数の国民に誤解と不信感を抱かせてしまっている。群馬県御巣鷹山中への日本航空ボーイング747機墜落事故(1985年8月12日)の国民の記憶はいまも新しい。この配慮に欠ける物言い、態度は、菅政権にとっても大きな損失になったに間違いない。

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