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整備新幹線前倒しの費用は誰が負担するのか

【山本洋一・株式会社政策工房 客員研究員】

 政府・与党は8日、北海道と北陸、九州で建設中の整備新幹線について、開業時期を前倒しすることで合意した。追加費用の大半は「国費以外から調達」するとしたが、間接的には国民負担につながる可能性がある。国家全体にとって何が優先課題か、冷静に判断しなければならない。

 整備新幹線は国の計画に基づいて建設する北海道、東北、北陸、九州新幹線のこと。現在は国が3分の2、地元自治体が3分の1の費用を負担して独立行政法人が建設し、JR各社に有償で貸し出す仕組みだ。JR東海が自前で建設しようとしている中央新幹線(中央リニア)は含まない。

 現在、建設中なのは北海道の札幌―新函館北斗間、北陸の金沢―敦賀間、九州の武雄温泉―長崎間の3区間。政府・与党は8日の作業部会で北海道を2035年度から2030年度に、北陸を2025年度から2022年度に、九州を2022年度から「できる限り」前倒しすることで合意した。

 北陸新幹線は2020年の東京五輪に間に合わせるため、金沢から敦賀に向かう途中駅である福井までの路線のみ、さらに前倒しする方向で、今夏までに結論を出すという。

※前倒しが決まった整備新幹線の路線(日経より)

http://www.nikkei.com/news/image-article/?R_FLG=0&ad=DSXMZO8173185008012015PP8001&bf=0&dc=1&ng=DGXLASFS08H6E_Y5A100C1PP8000&z=20150108

 建設の前倒しには当然、費用がかかる。現在は復興需要や関東圏でのマンション建設ラッシュにより建設費が高騰しているため、なおのことだ。国土交通省は3路線の前倒しで少なくとも5400億円の追加費用が必要としており、このうち900億円を国費で負担し、残り4500億円を国費以外から捻出するとしている。

 日本経済新聞によると、国費以外の費用ねん出策は次の三つ。一つ目は建設主体である独立行政法人、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄建機構)が線路や駅を担保に金融機関から借り入れる。二つ目はJR各社が独法に支払う負担金の一部を建設費に回せるようにする。三つ目は独法の金利負担の想定を引き下げるというものだ。

 借り入れと負担金の使途変更でそれぞれ2000億円、想定金利の見直しで300億円生み出せるとしている。

 ただ、気を付けなければならないのは、財源ねん出策のいずれも、鉄建機構の負担となることだ。借り入れを増やせば当然、金利負担が増す。さらにその2000億円はいずれ鉄建機構の利益から返済しなければならない。負担金の使途変更も本来は違う用途に使えるはずの金を建設費用に回すわけだし、想定金利の引き下げも、本来浮くはずの金利負担の差額がなくなるだけだ。

 鉄建機構の負担は、間接的には国民の負担になる。鉄建機構は独立行政法人であり、基本的には政府の一部。鉄建機構の資産は国民の資産であり、過去には積み上がった利益剰余金を国庫に戻したこともある。機構の負担が増えれば国民に還元されるはずの利益が減ることになる。

 そもそも鉄建機構の前身の一つは国鉄清算事業団であり、国鉄を民営化する際に債務を切り離すために作った組織。国鉄民営化の際には国が24兆円もの借金を穴埋めした経緯があり、鉄建機構が稼いで国民に返すというのは当然のことである。鉄建機構の財政が窮乏すれば、機構から施設を借りるJR各社の負担が増し、乗車料を通じて国民が間接的に負担することにもなりかねない。

 そもそも今回、開業を前倒しする3路線の「収益力」には限界がある。いずれも全国から航空路線や特急列車で行くことができ、新幹線に置き換わったとしても効果が限られるからだ。いずれの路線も国土交通省は投下した費用に対し、得られる効果は同等程度としているが、その試算も怪しい。甘い採算見通しで建設した後、借金が雪だるま式に増えた公共事業の例は数知れない。

 北海道と北陸の前倒しが確定したことを受け、次なる焦点は金沢―福井間のさらなる前倒しや、九州の具体的な前倒し期間の検討となる。ただ、金沢―福井間を先行開業するには福井駅に車両基地が必要となるなど、前倒しだけのために追加投資が必要となる。慎重に検討すべきだ。

 アベノミクスによる企業業績の回復や消費増税による税収の増加を受け、政府・与党内には財政規律に対する“緩み”が散見される。国民は見た目の「国費」だけにとどまらず、総合的な「国民負担」に目を光らせ、国家にとっての優先課題を見極めなければならない。

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