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日本の企業は守銭奴だから設備投資をしないのか?

 昨日は、麻生副総理の守銭奴発言について考えてみました。賃上げに応じようとしない企業は守銭奴なのか、と。

 ただ、麻生氏の頭の中にあるのは、賃上げのことばかりではないのです。そうなのです、麻生氏は、企業にもっと設備投資をしてもらいたいのです。企業が設備投資に積極的になれば経済成長率が高くなるのに、と。つまり、日本の企業が設備投資に積極的にならないことも、守銭奴と呼んだ理由の一つなのです。

 では、我々は、設備投資になかなか積極的にならない企業をどう評価すべきなのでしょうか?

 ところで、貴方は、この20年間ほど名目GDPが増えていないどころか、減っているという現実をご存知でしょうか?

 グラフをご覧ください。

画像を見る

 かつては520兆円ほどにまで達していた名目GDPが、直近では480兆円ほどにまで落ちています。伸び率でいうと、マイナス7%程度といったところです。

 では、企業の設備投資はどうなのか? 設備投資は、過去78兆円程度にまで達していたことがありますが、直近では68兆円ほどにまで落ち込んでいます。伸び率は、マイナス13%ほどになります。

 如何に企業の設備投資が沈静化しているかがこれで分かると思います。

 ということで、麻生氏は、このように企業が設備投資に積極的でないことが、日本の潜在成長率を押し下げている大きな理由の一つと考えているのでしょう。

 確かにこうして数字だけを眺めていると、企業が設備投資にもっと積極的になったら、日本の経済成長率はもっと高くなるであろうと予想されるのです。

 では、何故、日本の企業は近年設備投資に消極的なのでしょうか?

 はい、そこの貴方! どう思いますか?

 麻生氏が言うとおり守銭奴、もといケチだからなのか?

 私は、これは全く当たっていないと思います。企業がベアに消極的な理由については、企業がケチだからというのは当たっていないこともないでしょう。だって、気前の良い経営陣ならば、従業員にも利益を還元してあげようという気持ちになるからです。

 しかし、設備投資についてはそうではありません。というのも、ケチだとかケチでないだとかが設備投資の判断をそれほど左右するとは思われないからです。

 あれっ、今、貴方は変な顔をしましたね。「ケチな経営者は、そう簡単に社屋の建て替えなどしない」ってですか?

 まあ、そういうことが言えなくもないでしょうが、しかし、それは本質を衝いた議論ではありません。

 昨日も言いましたように、企業は利益を追求するのが目的。つまり、少しでも儲けるために最善の努力をするのが宿命みたいなものですから、少々元手がかかっても儲かるチャンスとみれば、設備投資に対しても積極的になるのが経営者なのです。

 つまり、ここ20年間ほど日本の企業が設備投資に消極的である最大の理由は、企業経営者が守銭奴、もといケチだからというのではなく、儲かるチャンスが少ないと判断したからに外ならないのです。

 ですから、アニマルスピリットではありませんが、企業経営者の判断が劇的に変わることがなければ、幾ら麻生副総理から叱咤激励されたところで、設備投資が急に増えることはないでしょう。

 あれっ、今、貴方はまた変な顔をしましたね。「リフレ政策で実質金利を引き下げることに成功すれば、設備投資は蘇る」ってですか?

 確かに、リフレ派の人々はそんなことを言っていました。デフレで実質金利が高止まりしているので設備投資にブレーキがかかっている。だから、マイルドなインフレを起こして実質金利を低下させることに成功すれば、設備投資は動き出す、と。

 グラフをご覧ください。

画像を見る

 確かに、この2年間ほどで実質金利が大きく引き下げられたのは事実です。その意味では、リフレ派の目論見は半分成功したと言っていいでしょう。

 では、設備投資は動き出しているのか?

 再び前のグラフをご覧ください。

 いいでしょうか? 昨年7-9月の期の民間設備投資は、約68.5兆円(年間換算ベースの数値)レベルしかないのです。つまり、ピーク時の水準には遠く及ばない、と。これだけ実質金利が低下しても、殆ど効果がなかったと言っていいでしょう。

 つまり、リフレ派の政策は失敗したということなのです。株価を引き上げることには成功したとしても、設備投資を動かすことには全く効果を発揮していないのです。

 確かに、日本の大企業は今や多額の現預金を保有しているのは事実。だから、麻生氏のように、そんなにお金を持っているのだから上手に使えよと言いたくなる気持ちも分からないでありません。

 しかし、経営者たちだって、本当は上手にお金を使ってもっともっと儲けたいのです。

 では、何故経営者たちは、設備投資に動かないのか?

 それは、国内で設備投資に動いても、それが儲けにつながるチャンスが殆どないと信じているからです。

 では、何故今の日本では儲かりそうにないのか?

 それは、一つは、少子高齢化の進展で需要が弱いからです。但し、需要というものは、何も国内だけから起こるものではないのです。日本の製品に魅力があれば、当然のことながら海外の需要も期待できるのです。

 では、何故海外の需要を期待できないのか?

 それは、日本企業の商品開発能力が以前ほどではなくなってきているからなのです。

 お分かりになりましたでしょうか? これが日本経済の現実の姿なのです。日本の企業がケチだからなんてこととは関係がないのです。

 というか、どこの国でも企業なんてケチではないのでしょうか?

 トヨタなんて昔からケチで有名ではなかったですか。でも、ケチだから世界一の自動車メーカーになることができたのです。

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