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アベノミクスの失敗は消費増税のせいではない(1)

みなさんもご存知のように、私は日銀が史上空前の量的緩和を始めた当初から、悪性インフレをもたらすような愚行は絶対にやってはいけないと言い続けてきました。量的緩和をやりすぎてしまうと、たとえ物価を上昇させることができたとしても、国民の実質的な賃金は上がるどころか、むしろ下がってしまうだろうと確信していたからです。

国民にとって大事なのは、名目賃金が上がったかどうかではありません。物価変動を考慮に入れた実質賃金が上がったかどうかであるのです。このことは、アメリカの2000年以降の通貨安に伴うインフレの歴史が証明しています。

アメリカの2000年の名目賃金、実質賃金、消費者物価指数のそれぞれを100とした場合、2013年の名目平均賃金は97.5と下がっているのに対して、消費者物価指数は135.3と上がってしまっています。名目賃金はまったく伸びていないのに、インフレ政策によって物価が伸び続けたために、実質賃金が72.4まで下がり続け、アメリカ国民の暮らし向きは悪化していく一方であったのです。

それでは、安倍政権が誕生してアベノミクスが始動したあとの日本では、国民の実質賃金はいったいどのようになっているのでしょうか。

厚生労働省の毎月勤労統計によると、名目賃金指数を消費者物価指数で割って算出する実質賃金指数(=実質賃金/2010年平均=100)は、2013年7月から直近の2014年11月分まで、驚くべきことに17カ月も連続して減少しています。2013年前半に名目賃金が少しだけ上がったところで、円安によるインフレが進み、実質賃金を大幅に引き下げてしまっているのです。

実質的にアベノミクスが始まった2013年以降の実質賃金がどのように推移しているのかを見てみると、2013年1~6月は2.7増になりましたが、円安による輸入インフレの影響を受け始めた7~12月には1.4%減、2014年1~6月は2.5%減、7~11月は3.0%減と、減少傾向に歯止めがからなくなっています。

とりわけ特徴的なのは、2014年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられたことで、実質賃金が同年1~3月の1.7%減から4~6月には3.4%減と減少幅が2倍にも拡大してしまったことです。安倍首相は名目賃金が上がったのは大きな成果であると言い張っていますが、国民にとって大事なのは、名目賃金ではなく実質賃金であるのです。実質賃金が大幅に下がってしまっては、国民の生活は疲弊するばかりなのです。

ですから、マスメディアではいい加減な情報が跋扈しているなかで、本当にアベノミクスが成功しているのか否かを見極めるためには、アベノミクスが本格的に始動した2013年以降の実質賃金と、それ以前の実質賃金の推移を比べるのが、いちばん正しい方法であると考えられます。

そこで、アベノミクスが始まる前の2010年~2012年の3年間、すなわち民主党政権時代の実質賃金はどうだったのかというと、2010年が1.3%増、2011年が0.1%増、2012年が0.7%減となり、結果的には実質賃金は0.6%増となっています。

正直言って、民主党政権時代の経済政策は目も当てられないほどひどかったのですが、それでも安倍政権下での2013年の実質賃金が0.5%減、2014年が2.7%減(1月~11月の数字)となり、暫定的ながら2年間の成果が3.1%減となっていることを考えると、アベノミクスがあまりにも筋が悪すぎる政策であったことが露見してしまったのです。

次回は、今回の続きについてお話いたします。

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