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中国の反日デモは兵法書「指桑罵槐」策で理解でき、中国進出企業は「三十六計逃げるが勝ち」で対処せよ

◆いつの時代に、だれによって書かれたのかは定かではないけれど、中国の兵法書に「三十六計」というのがある。武力ではなく策略で勝つためのノウハウの集大成とされており、最後の「三十六計、逃げるが勝ち」というフレーズは、一般によく知られている。

 この兵法書の「二十二計」は、「指桑罵槐」という言葉で示されている。

「桑の木をさして槐(エンジュ)の木を罵る」と読み、意味は「強者が弱者を屈服させるときに警告する方法」とされている。すなわち本当に注意したい相手を直接名指して注意するのではなく、別の相手を批判することで、間接的に人の心をコントロールしようという作戦」と説かれている。、湯浅邦弘氏は著書『孫子・三十六計』(角川ソフィア文庫)で解釈している。

 東洋史家(満洲史・モンゴル史)の岡田英弘氏は、「指桑罵槐こそは中国人の行動原理である」と主張し、「ある相手を攻撃するように見せて別の相手を攻撃する手段」と解釈している。

 中国本土で2004年前後に起き後激化した反日運動は、「日本を攻撃しているふり」(指桑)をしていながら、実は「中国政府に対する非難や不満を表明」(罵槐)していると解釈された。また、「反日デモ」は、「中国政府に対する非難や不満を表明」と言いながら、実は、北京政府が仕組んだ官製の「反日デモ」であった点を掘り下げれば、日本の自民党のなかで噴出していた「経済成長している中国にいつまでODA(政府援助)を続けるのか。もう止めた方がいい」という中国批判に対する中国北京政府側の抵抗の表れてもあったと理解しなくてはならない。安倍晋三首相は、就任直前からこの問題に取り組み、それまでのODAを止める代わりに、「環境面で支援する」ことで話をまとめ、「環境ODA」として形を変えて、北京政府を納得させたところ、「反日デモ」が、潮が引くように終息したという。

 いま現在、中国各地で起きている「反日デモ」も、基本的にはほぼ同じ構図である。だが、今回は「指桑」=「日本を攻撃しているふり」といのは、変わらないけれど、「罵槐」=「中国政府に対する非難や不満を表明」というところが、かなり違っている。正確には、「罵槐」=「親日派=胡錦濤=李克強(国務院副総理)」である。

 さらにここが大事な点であるのだが、今回の「反日デモ」は、「ポスト胡錦濤国家主席として李克強を担ぐ、上海閥=江沢民前国家主席=在任中、『反日教育』推進=が、全国ネットで展開」していたということである。要するに、「習近平VS李克強」の対立が、それぞれの支持母体どうしの戦いになり、この争いの「出汁」に日本が利用されているにすぎない。はっきり言えば、日本は本質的に無関係なのである。

◆しかし、今回は、あまり呑気にも構えていられない。この中国全土に「反日デモ」が全土の伝染した場合、どうなるかに洞察力と想像力をたくましくしないと、大変なことに対処できなくなる。

 中国は超大国だが、北朝鮮、キューバと並ぶ現代の異物「社会主義独裁国家ないし共産党独裁国家」である。カール・マルクスは、高度に発達した資本主義国から共産主義国家が生まれると言っているけれど、最後には、「国家が死亡する」のだという。だが、封建体ら、高度に発達した資本主義国を経ないで、いきなり「社会主義独裁国家ないし共産党独裁国家」ができてしまい、マルクス理論は、みごとに破綻してしまった。

 ソ連東欧の共産主義諸国が1989年〜1990年に崩壊して、自由・民主主義の国家へ生まれ変わる歩みを続けてきたにもかかわらず、中国は1989年6月4日、共産党1党独裁の北京政府が装甲車と戦車を繰り出して武力制圧、発砲により民衆、学生たちが死傷した「天安門事件」により、自由・民主化に失敗、それから21年を空費してきた。高度経済成長と引き換えに、自由・民主化を犠牲にしたのである。

 しかし、マルクスの理論とは裏腹に、中国も遅ればせながら、ソ連東欧諸国と同様に、いよいよ自由・民主化に踏み出すときが、到来しているのである。ヘーゲルの弁証法を持ち出すまでもなく、「氷(固体)→水(液体)」「水(液体)→蒸気(気体)」へと変化するように、中国も不自由で独裁的な共産主義国から自由で民主的な資本主義国へと、殻を脱ぎ捨てたいと願う国民の欲求が加熱してきている。

◆こうした状況に週刊ダイヤモンドが敏感に反応し、10月30日号で、「まだ誰も知らない中国リスク−レアアース禁輸、反日暴動、人民元安・・・日本企業が直面する中国リスク」と題して大特集を組んでいる。大変化、たとえば、中国民族好みの「革命」が、勃発しないとも限らない。そうした「カントリーリスク」を想定した場合、中国進出企業は、大打撃を受ける危険をしっかりと備えておかなくてはならないのである。不幸は、どこから襲ってくるかわからないからである。最上の策は、「三十六計、逃げるが勝ち」というオーソドックスな策、すなわち、戦術なのである。

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