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”ヒトラー時代の教訓”を伝えた「サンデーモーニング」

新聞社もそうだが、テレビ、とりわけ報道番組や情報番組でも新年第1回目の放送はその番組がその年、力を入れるテーマが見えてくる。

テレビ局は今日(1月4日)あたりから”正月モード”を少しずつ離れて”通常モード”に戻ってレギュラー番組の放送が再開されつつある。

どんなテーマに力を入れていくのか、注目したい。

日曜日の番組で報道的な切り口に定評があるのが、TBSの「サンデーモーニング」。

日本国内や周辺で起きている出来事を「国際的な視野」と「歴史的な視点」で切り取るアプローチが大人向けの番組だ。

新春スペシャルでいつもより1時間半拡大して放送した初回は、年末年始の時期にあまり放送されなかったニュースを一挙に伝えた後、北朝鮮、中国、ロシアなどのそれぞれの国の「新年」をたっぷり伝えた。日本の現状もこれらの国々の状況とは無縁でないことがわかる。毎回のことだが、この番組が示す「世界の中の日本」という広い視点は、狭い島国気質が多い他のテレビ番組に比べて視聴していて気づかされることが多い。

2015年の最初の回、TBS「サンデーモーニング」が大きく取り上げたのは「ヒトラー」だった。

ヒトラーの話に行く前に、この日、司会の関口宏が「ここからは特番です」と前置きして、伝えたのは特集「”群衆”と戦後70年」だ。

世界各地で続く、民主化運動、民族独立の運動、地域紛争、台頭する「イスラム国」、移民排斥の動き、日本のヘイトスピーチなどの動きをひっくるめて、”群衆”のうねりとして紹介した。

「あちこちで頻発する群衆の動きは、こうした行き詰まりとどこかでつながっているのでしょうか? 今、世界で起きている群衆の動きを通して、戦後70年の日本と世界を考えます」

「イスラム国」に参加する若者たちを送り出しているインドネシアの団体を取材したのは、TBSの独自取材。

世界中では戦闘員が増えている背景がよくわかった。

この特番のユニークなところは、フランスの心理学者ル・ボンの「群衆」についての分析を示しながら進行していく。

ル・ボンによる「群衆」の特徴は・・・

(1)感染する (2)過激に走りやすい (3)衝動的である (4)暗示に弱い (5)時に高い徳性を示す

だという。

それらをチュニジアやエジプト革命などの「中東の春」や日本の米騒動、中国での反日デモ、関東大震災語のデマによる朝鮮人虐殺、ルーマニア革命、オイルショック、サリン事件などの映像を使って振り返っていった。

さらに番組では、その他の特徴も紹介していく。

(6)国民も群衆化する (7)反復・断言に弱い

ここの(6)と(7)で登場するのがヒトラーだ。

TBSはベルリンでヒトラー政権下を体験した人々を新たに取材した。

ヒトラーの「反復・断言」が多い演説や多くのドイツ国民が熱狂的に支持して、国民が「群衆」と化した歴史を伝えていた。

私自身も2003年まで5年間、ベルリンには駐在しで、ネオナチのデモや外国人への迫害行為などは何度か取材しているだけに映像をリアルに感じることができた。

私がいた頃、ベルリンの象徴といえるブランデンブルク門の脇では政府主導でホロコースト記念碑が建設されていた。

そんな国でもネオナチのデモが繰り返されている。

スタジオでVTRを受けた寺島実郎氏はコメントは、

「耳あたりのいい、この人こそ問題を解決してくれる、という”笑顔のファシズム”がどんな時代にもあると見るべき」

姜尚中氏のコメントは、

「ヒトラーは『わが闘争』で書いている。『大衆は馬鹿で女性的だ。1000回ウソを言うと、それは真実になる』と」

さらに番組は最後に2つ、群衆の特徴を紹介している。

(8)群衆は同一化する (9)群衆は服従する

心理学の実験を通じて、いわゆる「同調圧力」の存在を示し、ふだんは平凡な市民も「命令に従う」ことで、いくらでも残酷になりうることを番組のなかで示した。

番組は「現在の私たちの問題」として提示した。

コメンテーターの岸井成格氏のコメントは・・・

「ドイツのネオナチ、右傾化も他人事ではない。外国人特派員協会に行っても『日本はどうして急速に右傾化したの?』と最近よく聞かれる。でも、そういう状況というのはまた生まれるのかなと」

姜尚中氏が語ったのは、

「(大勢のユダヤ人を収容所に送った)アイヒマンについて、ある女性哲学者が『悪の凡庸さ』と表現したが、大切なのは群衆がいくら過激であっても私たちの日常とは切れていないということ。アイヒマンはたぶん朝起きて食事をした後で妻とねんごろに挨拶した上で、所長として虐殺のボタンを押すなり、命令を下した。日常と連続していた」

「だから・・・」と姜尚中氏が続けた言葉は私たち自身に向けられていた。

「『日本は民主主義社会だ。先進国だ。だからそんなものと完全に切れている』とは思わないで。ドイツでもアメリカでもどんな社会もそうした『悪の凡庸さ』に陥りやすいということ。(中略)それからドイツのような悪によって迫っていく社会は突然現れたわけじゃない。日常の平凡な積み重ねの中からああいう状況が出てきた」

群衆というくくりで、強引なくくり方だった面もあるが、テレビが視聴者と向き合って、考察を求めるという実験的な番組だったともいえる。 

正月に続く日曜日の午前中、しかも民放のテレビ。

反知性主義といわれる言動が跋扈する時代に、知的な刺激にあふれる番組をみせてもらった。

新春から、「ファシズム」について考えさせられる番組だった。

ちなみにこの正月はNHKのBSでも「BS世界のドキュメンタリー」で「ヒトラー 権力掌握の道」(前編・後編)や「迫害に立ち向かったユダヤ人教師」など、ヒトラーやナチの時代について考えさせられるドキュメンタリーの再放送が相次いだ。特に「ヒトラー 権力掌握の道」は最新のデジタル技術でモノクロ映像をカラー化させたことで、過去の歴史的な出来事がつい先日起きた出来事であるかのようにリアルに視聴することができた。

良質な番組をみて、今、自分たちがいる時代について考えてみるのも悪くない。

※Yahoo!ニュースからの転載

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