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独断的音楽ビジネス予測2015〜シフトチェンジへ待ったなし〜

新年明けましておめでとうございます。
 本年もよろしくお願いします。

 2012年から3年続けて同じテーマで元旦にブログをアップしてきた今年が4年目だけれど、2014年の予測は、見事に大外れだった。多少は希望的観測は込めていたけれど、振り返ってみて日本の音楽業界の変化の遅さに、心の底から残念だ。 

 昨年の元旦に予測した3つは全く持ってダメだった

●ストリーミングサービスの本格的に普及する
 ご存じの通りだ。全く外れた。驚くべき事だ。
 Spotify の日本法人ができたのは2012年の12月だし、Japan代表として来日したハネス・グレーのウエルカムパーティを渋谷のバーで僕が主宰したのは、20131月のことだ。その時は、まさかJapanのサービスが始まらないままに2015年を迎えるとは夢にも思わなかった。 
 鳴り物入りで発表されたLINE MUSICも始まらなかった。昨年の5月ローンチのはずだった。
 全ての理由は、もちろんレコード会社の許諾がでないことだ。サービス事業者としては、一定以上の作品を揃えて、サービスを開始したいと考える。日本の法律では、音楽ストリーミングサービス事業を行うには、楽曲ごとにレコード制作者と実演家の著作隣接権をクリアーする必要がある。アーティストや事務所がOKでも、レコード会社がNoと言ったら配信できない。レコード会社が許諾を出さなかったことが原因で、ストリーミングサービスが始まらなかった、とても残念な2014年だった。

O2O活用でCD店が活性化する
 もちろん起きなかった。Online to Offlineというのは、ネット上にコンテンツがあって、それをリアルに反映させるという考え方だから、ソーシャルメディア上に楽曲が無いのに、店舗にフィードバックさせようが無い。昨年はCD店側から、「売ろうにも商品がレーベルから出てこない」という悲鳴に近い声を聞いた。
 特に新人アーティストを売り出そうという姿勢がメジャーレーベルに見られないのは、本当に残念だった。

●ストリーミングサービス発のヒット曲が出る
 もちろん、出るわけが無い、以下、同上。

 もう、日本を離れるか、職業を変えるかと思い詰めるくらい、2014年だった。

 ただ、昨年の後半から流れは変わった。
 どういう経緯かは知らないが、大手レーベルの姿勢が変わったのだ。昨年の前半までは、奥深いところで「できるかぎり時計の針を前に進めない」という力学を感じたのが、何故か「来たるストリーミングサービズでもレコード会社が音楽流通の中心を担う。そのために動く」という意思変更が行われたようだ。
 アーティスト側に立って仕事をしている僕の立場で言うと複雑な心境もある。でも、300歩譲って、音楽ストリーミングサービスの普及に取り組んでくれるのなら、それが良いと思う。
 ストリーミングが全てを解決する訳ではもちろんないけれど、音楽シーン活性化に必須の「ソーシャルメディア上で音楽ファンが好きな曲を広める」という状況が成立するためには、ストリーミングサービスへの楽曲許諾がマストだ。理由はともあれ、ともかくサービスを始めて欲しい。そのために役に立てることがあるなら何でもしたい

 LINE MUSICは、LINEとソニーとエイベックスの合弁会社がサービスを行う。アメブロを運営するサイバーエージェントとエイベックスも提携してサービスを始めるようだ。本当に頑張って欲しい。
 心配なのは、呉越同舟、同床異夢な感じが満載なことだ。世界的に有効性が証明されている「フリーミアムモデル」を否定しようとしているらしいのも困ったものだ。無料と有料を組み合わせて、音楽との接点を増やしながら、有料会員を増やして、権利者側に売上の60%〜70%を還元するというストリーミングサービスの仕組みは、21世紀の優れた発明かもしれないのに、「音楽は無料で聴かせない」という原理主義で断罪するのは、新興宗教に固執して外科手術を断る信者のようだ。アーティストと音楽ファンのために、データと経済的合理性に基づいた判断をして欲しい。

 それから、レコード会社の音楽サービスに対する姿勢は「供給者目線」に終始している。「音楽は素晴らしいのだから、聴ける環境さえ用意すればユーザーはお金を払う」と思っているとしたら(ほぼ間違いなく、そう思っているのだけれど)時代錯誤の大きな間違いだ。
 LINEやサイバーエージェントなどのIT企業は、経済的合理性以外の判断をする経営者がいるとは想像もできないだろうし、ユーザー目線しか持ってないだろうから、そのままサービス設計をして欲しい。

 一年後に今の音楽シーンの状況が変わってなければ、僕はおそらくブログを書かなくなっているだろう。もう音楽プロデューサーと名乗ることすらやめているかもしれない。
 もちろんレコード会社だけの責任にするつもりは1ミクロンも無い。今年ダメならもうダメだ。そのくらいの危機感を持って、日本の音楽シーンの活性化のために頑張るつもりだ。

 危機感が勢い余って、次世代型の音楽ビジネスを学ぶための場をつくることにした。遠回りのようで、これをやらないと何も始まらない気がしたんだ。
 尊敬する田坂広志さん著書からの引用で「ニューミドルマン」と名付けて、セミナーを始める。従来のスタッフの職域は変わるけれど、アーティストとユーザーを繋ぐ仕事は必要だというメッセージを込めた。昨年行ったプレ講座に集まってくれた顔ぶれは良かったし、講師をお願いした方々から逆に熱意をいただいたりして、本格的にやる覚悟ができた。意欲のある人と一緒にやりたい。

 2015年が良い年になりますように。

追伸:メールマガジン「コンテンツビジネス・ニュース・キュレーション」の発行ができてなくてごめんなさい。毎週末にニュースをまとめて整理するというのは自分にとっても役に立つことなのですが、11月末のSTART ME UP AWARDSMUSICIANS' HACKATHONから、師走に突入し、12月後半からは2月に出る著作の執筆にと追い立てられていました。立て直して、継続するつもりでいますので、もう少々お待ちください。

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