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第1回「出版業界気になるニュース2014年回顧」

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(3)PC向けビューワはリリースされた?

 これは、楽天KoboがPCビューワを第1四半期中に出すと宣言していたので、同じように海外ではPCビューワを提供しているのに日本向けには出していないKindleストアやReader Storeや他社も必ず追随するだろうという予測です。閲覧する画面の大型化や高解像度化と、電子マンガ誌や電子雑誌の盛り上がりとは、表裏一体の動きになると想像していました。

 実際、2013年時点では、Kindleストアや楽天Koboには、まだ電子雑誌があまり配信されていませんでした。なかったのです。6インチの電子ペーパー端末や7インチクラスのタブレットで雑誌を読むのはかなり辛いし、10インチでも文庫本を広げたのとほぼ同サイズ。電子雑誌を読むなら、大画面で見られるPCビューワか、12インチ級タブレットの普及が必要だと考えていました。

 楽天Koboは予告通り、2014年に入ってすぐにPCビューワをリリースします。
 ▶楽天Kobo、PCでも電子書籍を閲覧可能に、デスクトップビューアー機能追加 -INTERNET Watch ※2014年1月24日


 しかし、他社からリリースされるのはブラウザビューワばかりでした。スクリーンショット禁止などDRM(Digital Rights Management: デジタル著作権管理)を施す関係上、PCにインストールするアプリケーション型がまだ主流だろうと思っていたので、ここでは少し予測を外しました。
 ▶シャープ、ブラウザビューワを発表 – ITmedia eBook USER ※2014年1月31日
 ▶セルシスの電子書籍ビューワ「BS Reader for Browser」がソフトバンクの「スマートブックストア」に採用 – ITmedia eBook USER ※2014年4月11日
 ▶コミックシーモアに新機能、専用アプリが不要な「ブラウザ読み」がスタート – ITmedia eBook USER ※2014年6月17日
 ▶Reader Store、ブラウザビューワの提供開始 – ITmedia eBook USER ※2014年6月26日
 ▶GALAPAGOS STOREもブラウザビューワを用意――試し読みから順次拡大 – ITmedia eBook USER ※2014年6月30日
 ▶ブラウザで本が読める「Kindle Cloud Reader」が利用可能に – ITmedia eBook USER ※2014年9月19日
 ▶PCブラウザ版「LINE マンガ」にセルシスとメディアドゥのブラウザビューワソリューションが採用 – ITmedia eBook USER ※2014年10月22日
 ▶GALAPAGOS STOREで「ブラ読み」、試し読みがブラウザビューワで可能に – ITmedia eBook USER ※2014年12月12日
 ▶電子書店「コンテン堂」にブラウザビューワが導入、音付きコンテンツにも対応 – ITmedia eBook USER ※2014年12月25日

 どこも見事にブラウザビューワです。この動きは恐らく、LTE回線の普及が後押ししているのでしょう。つまり、モバイル端末&ブラウザビューワでも、あまりストレスなく閲覧できるほどの通信速度が実現できるようになってきた、ということです。2015年から始まる、docomoの「LTE-Advanced」などの真の4G回線サービスは、こういった動きを加速するのかもしれません。

 もっとも、ブラウザビューワはストリーミング配信であり、ダウンロード型に比べると配信を止めるのも容易であることも無視できません。つまりブラウザビューワは、よく言われる「電子書籍は購入ではなくレンタル」という状態により近いのです。

(4)電子雑誌は盛り上がった?

 PC向けビューワがリリースされるのと同時に、雑誌の電子化が一気に進み、定期購読契約やプッシュ型で自動配信、定額読み放題サービスの普及といった動きが起こると予測していました。実際、そういったサービスが次々投入され、電子雑誌市場も見事に離陸したと言っていい年になったと思います。特に、docomo「dマガジン」はリリースから半年で会員100万人を突破するなど凄まじい勢いで成長しており、出版社にも喜ばれているようです。
 ▶やめたい時にやめられる:Reader Store、「新刊自動購入」など雑誌を楽しむサービス提供 – ITmedia eBook USER ※2014年3月25日
 ▶ドコモ、電子雑誌の定額読み放題サービス「dマガジン」を6月スタート – ITmedia eBook USER ※2014年5月14日
 ▶電子雑誌読み放題サービス「dマガジン」会員数が100万人突破 – ITmedia eBook USER ※2014年12月17日

 電子書籍や電子雑誌をO2O(Online to Offline または Offline to Online)サービスとして提供する動きが次々起きたのも、2014年のトピックスです。Wi-Fiスポットによるエリア限定の閲覧サービスや、書店で紙の雑誌を買うと電子版が付いてくるサービスなど、「こういうのがあったらいいのに」がついに実現され始めた年でもありました。
 ▶GALAPAGOS STORE、イオン幕張新都心店で雑誌閲覧サービス提供 – ITmedia eBook USER ※2014年1月16日
 ▶紙の書籍を買うと電子書籍がもらえる、三省堂が「デジ本プラス」開始 -INTERNET Watch ※2014年3月20日
 ▶首都圏初:楽天Kobo、書店内Koboストアを有隣堂で展開 – ITmedia eBook USER ※2014年4月18日
 ▶楽天とBookLive!が参加――リアル書店で電子書籍が買える「BooCa」 4書店で提供開始 – ITmedia eBook USER ※2014年6月16日
 ▶オタク心わしづかみ、電子書店の聖地 支えるO2O :日本経済新聞 ※2014年7月7日
 ▶NTTソルマーレ、店舗・施設向けのコミック読み放題サービス「シーモアBOOKSPOT」 – ITmedia eBook USER ※2014年7月30日
 ▶【新文化】 – 集英社の主要雑誌15誌、1584書店でデジタル版付録に ※2014年9月16日
 ▶「ViVi」など買うと電子版を無料 講談社の4女性誌:朝日新聞デジタル ※2014年10月29日
 ▶ポット出版、紙書籍に電子書籍を無料で提供する「プラス電書」サービスを開始、まず最新の2作品から ※2014年11月4日
 ▶「Airbook」来週スタート、TSUTAYAで紙の本を購入→自動的に電子版も無料DL提供 -INTERNET Watch ※2014年11月27日

 来年は恐らく、コンビニがこういうサービスの舞台になってくると思います。さしあたって、TカードでCCCと提携しているファミリーマートが最有力ではないでしょうか。

(5)メジャーなマンガ誌は紙と電子を同時配信し始めた?

 この予測は、講談社が2013年の時点で既にモーニングとアフタヌーンの電子版を紙と同時配信開始信していたことを根拠としていました。2014年はいよいよ「週刊少年マガジン」「週刊少年ジャンプ」「週刊少年サンデー」といったビッグネームマンガ誌の電子版配信が始まるだろう、講談社が先行し、集英社と小学館が追随するだろう、という予測をしていました。

 実際のところこの御三家で先陣を切ったのは、集英社でした。しかも、Kindleストアなどの電子書店を使うのではなく、自社アプリによる直接配信です。その上、オリジナルマンガを投稿・公開できるウェブサービス「少年ジャンプルーキー」まで。正直、度肝を抜かれました。まさかジャンプが、CGM(Consumer Generated Media)を始めるとは。
 ▶「週刊少年ジャンプ」をサイマル配信する新アプリ「少年ジャンプ+」公開 -INTERNET Watch ※2014年9月22日
 ▶『週刊少年ジャンプ』デビューも夢じゃない、「少年ジャンプルーキー」プレオープン – ITmedia eBook USER ※2014年11月28日

 冷静に考えてみれば、例えばDeNAの「マンガボックス」が「マンガボックス インディーズ」を始めたり、NHN PlayArtの「comico」は「デジタルのトキワ荘」を目指していたりと、新興IT企業が新人の発掘育成機能を持とうとしているわけですから、出版社自身がやらないわけにはいかない、ということなのでしょう。
 ▶DeNA、「マンガボックス」にマンガ投稿機能–賞金付きランキングイベントも – CNET Japan ※2014年3月28日
 ▶コミックはエンターテインメント――comicoはマンガをこう変える – ITmedia eBook USER ※2014年6月13日

 結局、2014年には講談社「週刊少年マガジン」は電子化されませんでしたが、年明け早々に何か動きがあるようです。謎のティザーサイトがオープンしています。
 ▶1月5日“マガジン”に何かが起こる、講談社が謎のティザーサイトをオープン – ITmedia eBook USER ※2014年12月24日


 2014年はこれ以外にも、電子コミック関連の新サービスが次々登場しています。主に、出版社によるウェブコミック(紙のマンガ誌休刊と裏腹)配信と、新興IT企業による雑誌的な無料マンガアプリと、過去のマンガを読み放題アプリで提供する動き、そして海外向け配信です。動きが多すぎて情報を追いかけるのが大変なほどです。
 ▶KADOKAWA漫画200作品、無料読み放題「ComicWalker」スタート 名作フルカラー化、海外向けに多言語化 – ITmedia ニュース ※2014年3月3日
 ▶「ヤバいぐらいの手応え」 300万DLの無料漫画アプリ「マンガボックス」樹林伸編集長に聞く、ビジネスの展望と「夢」 (1/4) – ITmedia ニュース ※2014年3月17日
 ▶マンガを実況する時代「Dモーニング」の新バージョンに電子書籍の未来を見た(エキサイトレビュー) - エキサイトニュース(1/2) ※2014年4月11日
 ▶「漫画版YouTubeを」――読者が漫画ファイルをアップ、作者の許可得て無料公開 Jコミ「絶版マンガ図書館」で海賊版を撃滅へ (1/2) – ITmedia ニュース ※2014年7月10日
 ▶LINE マンガが700万ダウンロード突破――開始から15カ月 – ITmedia eBook USER ※2014年7月23日
 ▶マッグガーデンの『コミックブレイド』がWebへ移行、『月刊コミックガーデン』の創刊も – ITmedia eBook USER ※2014年8月5日
 ▶『進撃の巨人』も『東京喰種』も:人気のマンガを毎日更新、「LINE マンガ連載」がスタート – ITmedia eBook USER ※2014年8月13日
 ▶時間制で全巻無料・読み放題!! ドリコムが漫画アプリ「ドロップコミック」を今秋リリース – ねとらぼ ※2014年8月26日
 ▶“オモシロそう”が原動力――裏サンデーが始める3つの取り組み – ITmedia eBook USER ※2014年9月8日
 ▶LINE、マンガ海外配信 講談社・小学館と年内に :日本経済新聞 ※2014年10月8日
 ▶ソフトバンクが無料漫画アプリに参入 Jコミとタッグ「ハートコミックス」 “ソシャゲ風”ビジネスモデルで (1/2) – ITmedia ニュース ※2014年10月27日
 ▶BOOK☆WALKERが海外向けサイト立ち上げ、『らき☆すた』などの英語版配信 – ITmedia eBook USER ※2014年10月29日
 ▶カヤック、読み放題マンガアプリ「フルコミ」リリース――第1弾は「キャプテン」 – ITmedia eBook USER ※2014年11月4日
 ▶竹書房の漫画4誌が月額500円で読み放題「まんがライフ GIGA」、無料作品も – ケータイ Watch ※2014年11月17日

 これだけいろいろな動きがあるというのは、「電子コミック事業が儲かるから」に他なりません。いまの電子書籍市場は、完全に電子コミックが牽引しています。こういった動きが2015年には、文字モノにも普及していくといいのですが。

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