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第1回「出版業界気になるニュース2014年回顧」

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 ブログ『見て歩く者』で、毎週月曜日に「出版業界関連の気になるニュースまとめ」という記事を配信している、フリーライターの鷹野凌と申します。ブログでは個人的に気になった業界ニュースを週10本くらいピックアップし、気になった理由、これまでの経緯説明、感想、ツッコミ、応援などのコメントを付けています。

 DOTPLACE編集長の内沼晋太郎さんから依頼を受け、今後はこの「気になるニュースまとめ」を月1ペースで連載をさせていただくことになりました。第1回目は年末ということもあり、2014年の出版業界を振り返ってみます。

 なお、私個人の興味に依るピックアップなので、著しく電子出版関連に偏っていることを予めお断りしておきます。また、私が書いた記事も結構混ざってます。そりゃそうです。だってライターの私が興味を持って追いかけている分野なんですから。

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7月に行われた第21回東京国際ブックフェア開会式の様子

年初にはこんな予測をしていた

 まず、私が年初に予測していた2014年の動きについて。私が注目していた動き、と言ってもいいかもしれません。簡単にまとめると、以下の5つです。

(1)電子図書館界隈に注目が集まる
(2)タブレットの大型化と高解像度化
(3)PC向けビューワのリリースと(4)電子雑誌の盛り上がり
(5)メジャーなマンガ誌が紙と電子を同時配信し始める
(6)セルフパブリッシングの作家やサービスが脚光を浴びる

 PC向けビューワのリリースと電子雑誌の盛り上がりは表裏一体と捉えていたので、1つにまとめていました。この記事では、別々に検証します。

(1)電子図書館界隈に注目が集まった?

 これは、電子取次のメディアドゥが2013年11月20日に東京証券取引所マザーズ市場に上場したので、2014年は大きな動きを見せるだろう、というところからの予測です。メディアドゥは電子図書館サービスで世界最大手のOverDriveと2012年に業務提携しており、日本への展開準備を進めていました

 実際2014年には、メディアとOverDriveは2014年5月13日に、これまでより一歩進めた戦略的業務提携を発表し、国際電子出版EXPOや図書館総合展にも出展、慶應義塾大学メディアセンターとの実証実験も開始しています。
 ▶メディアドゥ、米OverDriveと戦略的業務提携――電子書籍を「買う」「借りる」推進 – ITmedia eBook USER ※2014年5月13日
 ▶世界ナンバーワン電子図書館システム「OverDrive」の実力 -INTERNET Watch ※2014年7月8日
 ▶メディアドゥ、OverDrive電子図書館システムの実証実験を慶應義塾大学メディアセンターと開始 – ITmedia eBook USER ※2014年11月5日

 「OverDriveがそろそろやってくる」ことは以前から噂になっており、日本でもそれに対抗するかのように、KADOKAWA、講談社、紀伊國屋書店が2013年に日本電子図書館サービス(JDLS)を立ち上げました。こちも2014年10月14日から山中湖情報創造館で電子書籍貸し出しサービスの実証実験を開始しています。
 ▶山中湖情報創造館で電子書籍貸し出しサービスの実証実験がスタート – ITmedia eBook USER ※2014年10月15日

 大学図書館向けには、人文社会系出版社6社が今後の新刊は積極的に電子版も出し、丸善「Maruzen eBook Library」と京セラ丸善システムインテグレーション「BookLooper」で配信するという動きがあります。大学図書予算の約6割が欧米系電子ジャーナルに食われているらしく、それを取り戻すための施策のようです。従来は、学術系出版社コンテンツの電子化がなかなか進まないことがネックになっていると言われており、こうした動きは電子図書館サービス普及拡大への鍵になることでしょう。
 ▶出版6社の学術書を紙版・電子版セットで提供へ – ITmedia eBook USER ※2014年9月12日

 一方、公共図書館向けの電子図書館サービスはまだまだ助走段階であり、『電子図書館・電子書籍貸出サービス 調査報告2014』(植村八潮 編著、野口武悟 編著、電子出版制作・流通協議会 著/ポット出版)によると、電子書籍サービスを実施している公共図書館は38館5%、実施予定なしが539館73%というのが現状です。
 ▶図書館向け電子書籍貸出サービス普及への課題 – マガジン航[kɔː] ※2014年11月13日

 ただ、大日本印刷系の図書館流通センターが、コツコツ地道に利用館を増やしています。特に、4月からブラウザビューワ閲覧に切り替え、アプリのインストールという煩わしい工程をなくしたことが功を奏しているようです。2014年に導入された三田市立図書館、札幌市中央図書館などでは盛況で、関係者も確かな住民ニーズを感じているようです。
 ▶神戸新聞NEXT|三田|電子書籍の利用好調、1カ月で800人超え 三田市立図書館 ※2014年9月11日
 ▶札幌市中央図書館、電子書籍の貸出サービスをスタート – ITmedia eBook USER ※2014年10月30日

 こちらも問題はコンテンツ不足と言われており、図書館の蔵書・貸出情報検索サービス「カーリル」の調査によると半数近くが「All About」の本(?)という状態になっているそうです。私はこのニュースを見たとき、楽天Koboがスタートした2012年の夏のことを思い出しました。つまり、電子図書館サービスの現状は、一般向け電子書店に比べると2年ほど遅れていることになるでしょうか。
 ▶電子図書館サービスの蔵書、今のところ半数近くが“All About本” -INTERNET Watch ※2014年10月27日

 もっとも、2013年の電子書籍市場は8割が電子コミックだったそうで、2014年もその割合が大きく変わっているとは思えません。つまり、「文字モノ」を中心に考えると、電子書店も電子図書館も、あまり大きく状況に変わりはないのかもしれません。
 ▶日本の電子出版物の売り上げ構成比率は5.7%〜電子書籍市場の約8割をコミックが占める | OnDeck ※2014年7月15日

 その他にも、国立国会図書館による「図書館送信」が始まったり、オーディオブックの貸し出しが始まったりと、さまざまな動きがあった1年でした。2015年は、いよいよ電子図書館サービスが助走段階から離陸段階に移る年なのではないかと思います。
 ▶入手困難資料のデジタル版、全国の図書館で閲覧可能に 国会図書館が配信 著作権法改正で – ITmedia ニュース ※2014年1月10日
 ▶オトバンク、公共図書館でオーディオブックをレンタル可能に – ITmedia eBook USER ※2014年7月2日

(2)タブレットの大型化と高解像度化が進んだ?

 こちらの予測は、iPhone 6 の大型化とともに、12.9インチ解像度3840×2160ピクセルのタブレット「iPad Pro」が開発中で2014年中に投入という噂が流れていたことを根拠にしています。ノートパソコンのバリエーションは、11インチと14インチが多いです。だからタブレットも、片手で持てる7インチ級、持ち運びに便利な10インチ級、持ち運びにはちょっと辛いけど大画面で楽しめる12~14インチ級というバリエーションに落ち着くと予想。大型 iPad の投入が端緒となり、他社からも次々と大型タブレットが発売されると考えたのです。

 ところが結局、iPhone 6 / 6 plus や Android でも、スマートフォンでは5インチ超えの大型・高解像度端末が次々投入されたものの、大型 iPad は2014年には登場しませんでした。Microsoftの Surface Pro 3 が12インチを出しましたが、Google Nexus や Kindle Fire シリーズは9~10インチどまり。予測は見事に外れました。

 ただ、今度は12.2インチの大型 iPad という噂が再浮上しており、来年こそタブレットの大型化が始まる年になるのではないかと思います。2012年の iPad 第3世代が652gだったのに対し、2014年のiPad Air 2は同サイズで437gです(どちらもWi-Fiモデル)。端末の軽量化はどんどん進んでいますから、来年登場する12インチ級タブレットは600gを切るくらいになるのでは。
 ▶12.2インチの大きなiPad Air詳細情報。登場は来年4月~6月? : ギズモード・ジャパン ※2014年11月30日

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