- 2014年12月29日 16:15
オンラインアシスタントの質にこだわる「Zirtual」
雑務というのはどれだけ出世しても減らないものだ。クライアントとのアポイント調整、スケジューリング、出張の航空チケット手配など自分でやれば結構な業務量になる。そんな雑務を引き受けてくれるアシスタントや秘書を採用したいと思うマネージャーは多いだろう。しかし、採用するとなれば面接をセッティングしたり、良い秘書を採用するのには時間と手間がかかる。
そんな忙しい事業家や企業のエグゼクティブ向けに救いの手を差し伸べるオンラインのアシスタントサービスを提供するサイトが米国にいて近年熱い注目を集めている。このオンラインのアシスタントサービスを利用すれば人を採用する必要がなく、採用にかかる時間、手間を省くことができるのだ。
そのようなオンラインのアシスタントサービスの中で最も注目を集めているサイトの代表格とも言えるのが「Zirtual」だ。同サイトは競合と比較すると安いとは言えないが、業界の中でも特にアシスタントの採用に厳しいテストを課しており、それにより質の高い人材を維持することで知られている。
2011年1月に米国カリフォルニア州のサンフランシスコにおいて設立。これまでにZapposのCEOのTony Hsiehを筆頭とする事業家や投資家から総額230万ドル(約2億7600万円)の投資を受けている。
Ebay転売屋での経験から事業の発想を得る
Zirtualの創業者はMaren Kate Donovan(以下ドノバン)氏。自由な考え方を尊重してくれる両親の元に育った彼女は、自分の願うことはたいてい叶うのだということを行動・考え方の指針として持っており、子供時代から将来は起業家としてビジネスをする姿を常に思い描いていたという。
同氏は2003年にネバダ大学に進学すると、子供時代からの目標だった起業家としてのキャリアをスタートさせるべく、タイやバリから買いつけた宝石やアクセサリーをEbayにおいて転売する事業を開始した。
ところがこの事業は、買いつける宝石やアクセサリーに関するリサーチ業務にかなり多くの時間を掛ける必要があった。リサーチ業務は重要な仕事ではあるが、起業家としてすべきことは他にもたくさんあると考えていたドノバン氏は、少々高めのお金を払ってでもアウトソーシングをしたほうが良いと考え、リサーチを代行してくれる英語の上手なフィリピン人を見つけ、リサーチ業務を代行してもらうことにした。
これにより自分のなすべき業務に集中でき、生産性があがったことを実感したドノバン氏だったが、英語を話すことができ、人件費が安いインドやフィリピンの人々をアシスタントとして採用する中で、勤労スタイルのちがいによるトラブルが起きやすいと感じるようになった。
そこで大学を卒業している米国内在住のアシスタントを採用しはじめたことが、のちのZirtualの強みを築く上での土台となったという。
同氏はアシスタントを採用してビジネスをしていることを何度かブログ記事で取り上げており、そのブログを見た読者からどのようにアシスタントを採用しているのか質問されることも度々あった。持ち前の起業家としての嗅覚からこのアシスタント採用のノウハウがひょっとするとビジネスになるのではないかと感じたドノバン氏は、その可能性を探るために、質問してきた読者に自分が選抜した良いアシスタントを1人200ドルで紹介することを提案してみた。
すると200ドル払ってでも質の高いアシスタントの仲介をお願いしたいという人が案外おり、市場規模はそこそこあるという予測を立てることができた。そこでドノバン氏はネバダ大学卒業後の2010年より起業準備に入ると、翌年の1月には自ら選抜したアシスタントが提供するアシスタントサービスを起業家や企業のエグゼクティブに販売するサイトとしてZirtualを設立することとなったのである。
厳しいテストをパスした最高のアシスタントを提供
Zirtualでは米国内居住で大学を卒業しているアシスタントにオンライン上で業務を指示し実行させることができる。なお1顧客につき1人のアシスタントが担当するとのこと。
これまで事業家はスケジューリングや出張の手配、リサーチなどの業務は自分でするか、会社で秘書を採用するなどしなければならなかったが、同サイトのサービスを利用すればそれらの業務のアウトソーシングできるのが利点だ。
アシスタントに頼める業務はスケジューリング、リサーチ、予約、購入、出張などの旅行の手配、データ入力、メール返信、折り返し電話、筆記、校正、原稿整理・編集、プレゼン資料の修正、ソーシャルメディアへの投稿・リサーチとなっている。ただし会計やデザイン、プロジェクトマネジメントとった業務は行っていない。
利用料金は月額となり、その月内に何時間の仕事を依頼するかで変わってくる。月16時間の業務を依頼する場合はアントレプレナープラン399ドル(約4万8000円)、月32時間であればエグゼクティブプラン749ドル(約9000円)、月55時間の場合は1119ドルのVIPプラン(約13万4000円)だ。
これらのプランは1年契約することも可能で、その場合15%のディスカウントが適用される。また1年契約の場合に限って毎月あたり169ドル(約2万円)で1ヶ月に8時間業務を頼むことができるベーシックプランを利用することもできる。
オンラインのアシスタント業務代行サービスとしては、フィリピンのアシスタントに最安で1時間あたり6ドルで業務を頼めるというサイトもある。Zirtualは最安で1時間あたり最低20ドル以上かかるため、料金だけで比較すると競合より劣勢に立たされがちだ。
そのためZirtualは単なる価格競争に巻き込まれないような戦略をとっている。ドノバン氏がかつて業務をフィリピンやインドなど国外のアシスタントに依頼していた際、労働観の違いからたびたびトラブルが発生していたため、人材は米国内の大卒者とすることを前提とし、適正を見極めるために以下のような厳しいテストを行っているのだ。
1.候補者のボイスメール提出
候補者は複数の質問に口頭で答え、その応答を60秒で音声録音したボイスメールを提出する。これによって候補者の積極性、人あたりの良さを診断する。
2.性格分析テスト提出
このテストによってアシスタントの仕事に適しているか、顧客によって主にアシストする業務の種類が変わることもあるためどのようなタイプの業務をすることに適しているのか診断する。
3.模擬タスク提出
アシスタント業務に関連した、リサーチ業務、アポイントメント調整業務、メール返信業務、出張手配業務などの模擬タスクを候補者に課し、タスク遂行能力を診断する。
4.候補者へのインタビュー
最後にZirtual CEOのドノバン氏自らがGoogleハングアウトを通じてインタビューを候補者に行う。アシスタント業務への意欲を見て採用するかどうか決定する。
5.トレーニング
上記の選抜を通り抜けた候補者に対してZirtualによるトレーニングがさらに施される。ただこのトレーニングの内容は企業秘密とのことだった。
これらのテストの結果、Zirtualのアシスタントとして採用される人は応募者全体の1-2%に過ぎないという。ドノバン氏はこうした厳格な人材採用により、この仕事に適した最高のアシスタントを確保することができていると語る。
この先の事業展開を予測
また、同氏はこのようにも言っている。
多くの会社がなぜ人材採用するときに従来のレジュメを使った採用を続けているのかわからないわ。このやり方は、本当にその仕事をしたい人を選ぶのに適しているように思えないのよ。Zirtualのアシスタント候補者のテストでは、実際に候補者に仕事をしてもらって、その結果で判断するようにしているわ。
- ドノバン氏
この発言から、僕はZirtualは最終的には臨時のオンラインアシスタントに限らない人材マッチングへの展開を考えているようにも感じた。
当初は「仕事の質や、労働観などを重視したマッチングをするオンラインアシスタントサービス」を提供し、そのアシスタントをそのまま正規メンバーとして採用したい企業へは、その人材をそのまま仲介する、なんていうサービスへと発展させていくというシナリオは想像に難くない。
高品質なオンラインアシスタントサービスの先には、どのような事業展開が待っているのだろうか。
折しもテレワーク(在宅勤務)も浸透し始めている。時代の波に乗り、大きくブレイクする可能性を秘めたサービスではないだろうか。今後の動向が楽しみな事例の1つだ。
P.S. 今年もありがとうございました。
今年も当ブログ「海外ECサイト事例に学ぶ、売上アップのノウハウ」をご愛読いただき、ありがとうございました。
アクセス解析ツールによると、今年は28万人の方にお読みいただいたようです。このブログの効果は会社にとってとても大きなもので、今や全てのお仕事のご依頼はブログの読者の方から、、となりました。しんどいですが、辞められなくなりました(笑)
また、このブログがヒントとなり、事業を立ち上げたというご連絡も数件いただきました。もともとコンテンツマーケティングのために始めたブログではありますが、一部の人には少なからず良い影響があったようですごく嬉しかったです。
来年、この会社は大変身する予定です。が、ブログはこれまでと変わらず淡々と更新していきたいと思います。
来年もご愛読のほど、何卒よろしくお願いいたします。
良いお年をお迎えください!^^
株式会社ネットコンシェルジェ
代表取締役 尼口友厚
#新年は5日より再開いたします。