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クールジャパンはなぜ「クール」なのか?失敗にささえられてきたメイド・イン・ジャパン商品 ‐ 後藤百合子

■圧倒的なプレゼンスをもつ日本発キャラクター

「日本人はキャラクターを作るのが本当にうまいと思う」という言葉を聞いたのは、シンガポールで30年以上文具やバラエティーショップを経営されてきたある女性経営者の方からです。

たしかに今年40歳になったサンリオのハローキティを筆頭に、サンエックスのリラックマやNHKのどーもくんに至るまで、シンガポールの街中を歩いていると日本発のキャラクターを見ない日はありません。もちろん、アナ雪やミッキーマウスなどディズニーキャラクターなども人気なのですが、こちらは映画やテレビなどメディアミックスで売り出している商品であり、純粋にキャラクターのみのビジネスでこれだけのボリュームをもっているのは、おそらく世界中で日本製キャラクターだけではないでしょうか。

最近シンガポールで特に気になるのは、エアコン世界最大手ダイキン工業のぴっちょんくんのキャラクターで、バス停の看板広告やタクシーの車体広告など、とにかく圧倒的な量の広告を展開しています。5歳になる我が家の娘もこのキャラクターを見かけるたびに「ぴっちょんくん!」と叫びます。子供の頃からこれだけ潜在意識に刷り込まれると、彼女が大人になってエアコンを買うときには、まず「ぴっちょんくん」ブランドを選ぶのは間違いないと感じます。これもやはり日本製キャラクターのもつ力だと思います。

■ハローキティの陰には死屍累々のキャラクターたちが

ではなぜ日本はこのようなキャラクター大国になれたのでしょうか?

その秘密はサンリオのホームページにありました。「キャラクターを探す」という項目をクリックすると、出てくるわ、出てくるわ、なんと200以上のキャラクターが登場します。しかも、ハローキティやマイメロディなど現在まで愛され続けるキャラクター以上に、名前も聞いたことがないか、記憶の彼方にしか残っていないようなキャラクターが目白押し。まさに40歳のキティの陰には、このように「売れなかった」キャラクターが死屍累々の状態なのです。

逆に、キティは静かに消えていったキャラクターたちを踏み台にして進化を繰り返し、ここまでの長寿の人気を保ってきたのだともいえるでしょう。ただそれは決してサンリオ内キャラクターだけとの戦いではなく、同じくキャラクター商品大手のサンエックスのキャラクターや、ジプリ映画キャラクター、くまモンをはじめとする人気ご当地キャラたちなどとも熾烈な戦いを展開してきたのです。

■アニメもラーメンも競争は同様

今月上旬にはシンガポールでアジア最大級のアニメ・フェスティバルが開催され、東南アジア各地からアニメファンが詰めかけました。私も初日に会場近くに行ったのですが、いつもはビジネスマンしかいないショッピングモールをコスプレ姿のティーンエージャーたちが闊歩し、異様な熱気に包まれていました。彼らは日本のアニメや漫画を実によく知っており、趣味が高じて日本語を勉強したり日本に留学したりする人たちも多いと聞きます。

ここまで日本のアニメや漫画が人気を集める理由も、キャラクタービジネスと大差ありません。年2回東京ビッグサイトで開かれるコミックマーケットには3万5千ものサークルが参加し、60万人近くが来場しますが、このうち実際にデビューして漫画家になれる人たちはほんの一握り。晴れてデビューを果たしても編集者と二人三脚で青春のすべてを犠牲にし、いかに「売れる漫画を描くか」にこだわりぬいていく中で、さらに選ばれた人たちだけが、世界で名を知られる漫画やアニメを産みだすことができるのです。

同じことはいま世界で起こっている日本ラーメンブームにも言えるでしょう。競争が激しければ激しいほど、負けた人も含めて参加者が多ければ多いほど、熾烈な競争を勝ち残った一握りの商品やお店が市場で大ブームを呼ぶのです。

■1勝9敗どころか我が社は1勝100敗

ファーストリテイリングの柳井会長は『一勝九敗』という本の中で、失敗を恐れず挑戦し続けることこそが成功を産む、という経営哲学を語っておられます。アパレル業界というハイテクでも時代の最先端でもないシビアな経営環境で生き残り、成長し続けてきた柳井会長のだけに、この言葉には大きな重みがあると思います。

振り返って我が社を見れば、私が社長になってからの15年余り、商品アイテムはたった数百だったのが現在では8,000アイテム近くになりました。自慢ではないですが、そのうちヒットしている商品はほんのわずかで、大部分はあまり売れていないか、ほとんど売れていません。自社でいえば1勝100敗です。しかし、自信をもっていえるのは、その売れない100アイテムの商品を作らなかったら、1つのヒット商品は絶対に産まれなかったということです。そしておそらく、その1つのヒット商品がなかったら我が社はこれまで生き延びることができませんでした。(最近では数少ないヒット商品に、海外ユーザーからの引き合いも増えてきています)

■失敗は「クール」だ!

少子高齢化に伴い、これからの日本では市場も供給する作り手側の人数もどんどん減っていくことが確実になっています。そんな環境の下で、これまでと同様、もしくはこれまで以上に「クール」なメイド・イン・ジャパン製品、日本発商品を世界に広げていくためには、作り手である我々がこれまで以上に失敗を恐れず、挑戦し続けることが最も重要だと思います。

いっぽう、「失敗を恐れない」と口にするのは簡単ですが、誰しも失敗して他の人たちから揶揄されたり非難されるのは本能的に避けたいと思うものです。失敗への恐怖心を克服して、失敗を繰り返してもチャレンジし続ける人を心底から励まし、支えていく社会を意識的に作っていくことこそが、岐路にたつ現在の日本に生きる我々に求められているのではないでしょうか。

【参考記事】
■大韓航空ナッツ事件にみる社員と経営者のあるべき関係について
http://sharescafe.net/42563755-20141224.html
■製造業の海外生産がいよいよ曲がり角に。
http://sharescafe.net/42400271-20141214.html
■トヨタ自動車空前の黒字でも日本人の給料が上がらない理由
http://sharescafe.net/42315695-20141209.html
■「最初から辞めるつもり」で働いてみる - リクルート社38歳定年制が生み出したもの
http://sharescafe.net/42200885-20141202.html
■インフレと少子化で目減りする年金。いよいよ導入される「マクロ経済スライド」
http://sharescafe.net/42119799-20141128.html

後藤百合子 経営者

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