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リコール続出! ホンダは「タカタ問題」を乗り切れるか?

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ホンダが抱える品質問題の本質

昨年秋に発売した主力モデル「フィット」が1年のあいだに5回ものリコールを重ねるなど、品質問題に苦しんでいるホンダ。アメリカをはじめ世界で大きく取りざたされているタカタの安全装置、SRSエアバッグの欠陥問題は、まさに弱り目に祟り目といったところだろう。

タカタは創業者である故・高田武三氏の一族が経営の実権を完全に掌握している独立系企業。取引先もグローバルに広がっているが、ホンダとタカタの関係はその中でも特別なものがあった。ホンダは1987年、高級車の初代「レジェンド」に日本車として初めてエアバッグを搭載したことで知られているが、タカタはその重要な開発パートナーであった。

レジェンド以降もホンダはエアバッグが膨らむ際の乗員への攻撃性を減らす技術やバイク用エアバッグなど、独自のエアバッグ技術を世に送り出し、高く評価されてきた。その中にはタカタとの共同特許によるものも少なくない。ホンダは伝統的に、部品メーカーとの資本関係を必要以上に強めず、性能要求に合う部品を適当に調達するという方式を取ってきた。その中でタカタは単にエアバッグを膨らませるためのユニットを作るだけの下請けにとどまらない、ホンダにとって数少ない“盟友”のような存在だったのである。

そのホンダが今、急速に“脱タカタ”を進めている。本田技術研究所関係者のひとりは「自分たちが原因の欠陥を何とかするのに手一杯なところに、タカタの問題も出てきたとあれば、対処は非常に難しい。もちろん問題収束までタカタからの供給が細ることを見越した代替という意味合いもありますが、今の調達先の変更はそれ以上の規模」と語る。

伊東孝紳社長は自社のリコールに続き、タカタの件についてパブリックコメントをまったく出さないまま、突然日本経済新聞の単独インタビューに応じ、その中でタカタの経営支援を示唆する発言を行った。しかし、「ホンダ社内での伊東さんの温度感と全然違う。リップサービスの可能性は否定できない」(前出の本田技術研究所関係者)と、懐疑的な声も少なからず聞こえてくる。

タカタ問題はアメリカの圧力か

今回のタカタの問題は、もちろんトラブルに関する対処が甘かったという部分もある。現に死亡事故の原因になったと分析されている事例もあるという事実はきわめて重いものだ。一方でタカタ製の部品については、過去に欠陥が顕在化するたび、部品を使用している自動車メーカー各社がリコールを行ってきた。今になって過去にさかのぼって問題を解決すべきと要求しているアメリカの当局も、そのリコールによる欠陥是正を認めてきたのだ。業界の中には「アメリカは過去、TPP(環太平洋包括経済連携協定)で日本の安全基準をアメリカに合わせろと要求したのに日本に突っぱねられたことがある。タカタの事例は、再度のゴリ押しに利用されている可能性もある」と見る向きもある。

エアバッグは自動車技術の中でも、発明されてからそれほど長い年月が経っているわけではなく、経年劣化についてはタカタ製のみならず未知数な部分が多い。また、実際に作動させたら中の炸薬が爆発して使えなくなるため、検査も難しい。アメリカの“圧力”に対し、日本の自動車業界は結束してエアバッグの品質保証や老朽部品の取り扱いのガイドラインなどを積極提示するなどして対抗すべきところである。

タカタと最大の盟友関係にあるホンダは今のところ、そのアクションに消極的である。その表れのひとつは、現在ホンダが会長を務める日本自動車工業会の動きの鈍さだ。池史彦会長は「エアバッグの品質保持のあり方について検討すべきかどうか議論をはじめたところ」と、業界のまとめ役であるべき自工会がほとんどアクションを起こせていない実情を明かした。

また、タカタの件については個別企業の問題として、自工会としてはタッチしない方針であるという。アメリカで問題の火の手が上がってからすでに半年以上が経過するが、ホンダは今もって業界を巻き込んでエアバッグの問題を解決しようという仕掛けに動けていないのだ。

部品メーカーとの関係の再構築

もちろんホンダとしては、この問題をタカタのものとして片付け、別の部品メーカーに鞍替えすれば、現在進めている調査リコール以上の傷は負わずにすむかもしれない。そうなると、エアバッグに限らず各分野の部品メーカー側から見れば、ホンダはいざというときに頼りにならないというイメージを与えてしまう可能性が大きい。今日の自動車開発は、完成車メーカーの技術だけで進められているわけではなく、部品メーカーからの技術提案は競争力強化になくてはならないものとなっている。その部品メーカーに対する求心力を維持できなければ、競争力は下がってしまう。

伊東社長は、昨年秋のフィット以来、続出している品質問題について徹底強化を社内に指示しているが、一方で世界販売600万台、国内販売103万台という目標を達成できないことがほぼ確実になったことから、利益を出すことが難しくなってきており、それを何とかカバーしようと開発部門を含む全社に“倹約令”を出している有り様だという。

「ホンダはハイブリッドシステムやエンジン、CVTのリコールとタカタの問題は別だと考えていますが、根っこは同じ。開発部門である本田技術研究所のプライドが高すぎて、部品メーカーと本当にいい関係を築くということをやってこなかった。今やらなければいけないのは、伊東さんの体面を保つためにタカタを切ったり益出しをしたりすることではなく、部品メーカーとの関係を再構築することなのに」(ホンダ幹部)

品質問題でブランドイメージを大きく損なってしまったホンダ。タカタ問題を今後に生かすことができるかどうか。

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