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「世界に躍進する韓国企業に学ぼう」(日経社説)〜ナッツリターン騒動で思い出した4年前の日経社説のトンデモ主張

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 4年前、当時躍進する韓国経済・韓国企業を称賛し、日本も韓国に学ぼうというとんでもない論説が日本を代表する経済紙、日本経済新聞に掲載されました。

 2010年3月4日付け日経新聞社説は普段2本掲げる社説を一本に絞って長文の「世界に躍進する韓国企業に学ぼう」という論説を掲げていました。

社説 世界に躍進する韓国企業に学ぼう(3/4)

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20100303ASDK0300403032010.html

 すでにリンクは切れていますが、後学のために当ブログとしてその全文を再掲いたしましょう。

 社説冒頭で韓国企業の世界市場での躍進ぶりを「韓国企業の台頭ぶりに驚かされる」という描写で取り上げます。

 韓国企業の世界市場での躍進が目立っている。電機、電子産業を中心に、日本企業の低迷を尻目に競争力格差が開く。韓国勢の強さを謙虚に受け止め、学ぶべきものは学ぶ必要があるのではないか。

 日本国内では目立たないが、世界に目を向けると、韓国企業の台頭ぶりに驚かされる。薄型テレビの2009年の世界シェアは、1位がサムスン電子、LG電子も2位に浮上した。半導体でもパソコンなどに使うDRAMでサムスンが1位だ。

世界シェア上位相次ぐ

 フィンランドのノキアがトップの携帯電話も、2位のサムスン、3位のLGが世界販売を伸ばしている。乗用車は現代自動車が成長市場の中国で2位、インドでも快走する。

 業績も好調だ。サムスン電子の09年の連結営業利益は前の期に比べ9割増の10兆9200億ウォン(約8700億円)。10年3月期の営業利益予想が日本の電機業界で最も大きいパナソニックでさえ1500億円だ。

 サムスンとの収益力の違いは明らかで、09年に円換算で約3300億円の営業利益をあげたLG電子にも及ばない。日本の電機の営業利益見通しは大手9社を束ねても6400億円どまりだ。

 そして、通貨ウォン安の追い風が、日本と競合製品が多い韓国企業にとって輸出市場での価格競争力を強めることになったことに触れた上で韓国企業は「3つの自助努力」をしていると指摘します。

 もっとも、為替効果という外部要因だけで韓国企業が競争力を増したとみるのは間違いだ。3つの自助努力がある。まず不況下での積極投資を含めた大胆かつ迅速な経営判断、次に高付加価値の商品を集中的に投入する販売戦略、そして先進国のみならず、アジアやアフリカも含めた新興・途上国市場をくまなく取り込む地道な海外戦略だ。

 そして人口が日本の半分に満たず、経済規模も日本のおよそ5分の1の韓国は海外市場に活路を求めるしかないと続きます。

 人口が日本の半分に満たず、経済規模も日本のおよそ5分の1の韓国では、企業は海外市場に持続的成長の活路を求めるしかない。現にLG電子の海外従業員は全体の7割近くを占め、LGやサムスン電子の海外売上高比率は8割を超える。

 韓国は国内市場の競争で競合企業が少ないのも特徴だ。1997年のアジア通貨危機を契機に、政府主導で大胆な事業集約を進めた結果である。現在、現代自動車グループの国内シェアは7割を超える。国内の同一業種で多くの企業がしのぎを削る日本と違い、韓国企業は国内で稼いだ利益を研究開発や設備投資、さらには海外市場開拓に回せる。

 韓国の強みは競合企業が少ないことだと結論付け、日本も競合企業集約を計るべきだと社説は結ばれています。

日本も競合企業集約を

 経済産業省によれば、韓国は日本より国全体の市場規模が小さいにもかかわらず、主要企業1社当たりの国内市場規模は、乗用車が日本企業の1.5倍、携帯電話は2.2倍だ。日本では携帯電話でシャープなど主要6社が競うが、韓国はサムスン、LGの2社が圧倒する。

 日本は人口が減り内需縮小が避けられない。競合企業が国内で消耗戦を続け、わずかな余力しか海外に振り向けられないようでは、韓国企業に追いつけない。業種別の再編集約を通じ、規模の利益を通じた集中投資や海外への資源配分を強める経営戦略も、真剣に検討すべきだ。

 うむ、一社が市場を独占する韓国財閥経済を盲目的に称賛しています。

 経済産業省によれば、韓国は日本より国全体の市場規模が小さいにもかかわらず、主要企業1社当たりの国内市場規模は、乗用車が日本企業の1.5倍、携帯電話は2.2倍だ。日本では携帯電話でシャープなど主要6社が競うが、韓国はサムスン、LGの2社が圧倒する。

 そして日本も韓国の財閥企業を見習って「業種別の再編集約」を「真剣に検討すべき」と結ばれています。

 日本は人口が減り内需縮小が避けられない。競合企業が国内で消耗戦を続け、わずかな余力しか海外に振り向けられないようでは、韓国企業に追いつけない。業種別の再編集約を通じ、規模の利益を通じた集中投資や海外への資源配分を強める経営戦略も、真剣に検討すべきだ。

 このとんでもない日経社説を読んだ当時、当ブログはこの社説に猛反論を試みました。

2010-03-09■「世界に躍進する韓国企業に学ぼう」(日経社説)に反論する~韓国経済の抱えている大きな問題点に触れていない

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20100309

 当時のエントリーより抜粋。

(前略)

 4日付けの日経社説は「世界に躍進する韓国企業に学ぼう」と主張します。

 この社説は大企業基準の経営戦略にだけとらわれている点で私は同意できません。

 単純に韓国のように企業集約して一部大企業だけが業績を伸ばすとすれば、副作用も大きいと考えるからです。

 このような施策は当然ながら富の偏在が起こります、総体としての健全な国家経済が育ちにくい、それどころか貧富の格差は確実に拡大し、国家としての経済バランスを欠いてしまいます。

 日本は国家戦略としては安易に「世界に躍進する韓国企業に学」んではいけないと思います。

 ・・・

 韓国経済の現状は日本にとって「他山の石」としなければならないと思います。

 日本経済新聞は今でも「世界に躍進する韓国企業に学ぼう」と主張するのでしょうか。



(木走まさみず)

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