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原子力発電所の炉心溶融における政府の情報提供のあり方を問う

改めて地震や津波で被災された方々にお見舞いを、また、亡くなられた方々にお悔やみを申し上げます。被災地の早期の復旧を祈念しています。

さて、地震や津波に関しては一向に専門外で、東京大学や京都大学の地震研究所の先生方のお説は頭を素通りしてしまうんですが、やっぱり気になったのは原子力発電所に関する情報です。まず、以下の画像は朝日新聞のサイトから引用しています。福島第1原発及び第2原発からの避難範囲を示しています。

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私はメディア論や心理学などはまったくシロートなんですが、情報は正確かつタイムリーであるべき、と考えています。「タイムリー」とは必ずしも「迅速」と同値ではありません。例えば、極端な例では、荻生徂徠が赤穂浪士の処分に関する議論について30年後に公表と柳沢吉保に進言した、と言われていますし、当時としてはタイムリーだった可能性があります。他方、正確性については客観的に担保されるべきであることは言うまでもありません。

しかし、福島第1原発については、第1に、正確性の点において、政府からの発表が混乱していたように私は受け止めています。12日夜の8時半ころの時点の枝野官房長官の発表を聞く限り、私は炉心溶融 = Meltdown が発生しつつあると私は理解しました。多くのメディアでもそのように報じられていたように記憶しています。しかし、その後の CNN では藤崎大使はメルトダウンを一所懸命に否定していました。両者を併せて見ている人も少なくないと感じましたが、明らかに政府から発表される情報は整合的ではありませんでした。その意味で、どちらかが間違っていて正確性に欠けていたと言えます。その後、枝野官房長官ではなく、藤崎大使から発表された情報に寄せる形で修正されたような気がします。政府による意図的な情報の隠匿や歪曲はなかったように感じていますが、落ち着いた時点で何らかの方法により検証する必要があるかもしれません。
第2に、タイムリーであったかどうかもやや疑問が残ります。私が20キロ避難を耳にしたのは夜の8時半ころでしたが、当然ながら、とっぷりと日は暮れていました。避難範囲が10キロから20キロに変更されたんですから、平均的に5キロ、最大で10キロの移動が要求されたわけですが、3時半過ぎに水素爆発があってから、この避難範囲の拡大がなされるのが5時間後であったと言うのはタイムリーとは言いかねます。停電している中で、せめて日没と言う自然現象くらいは認識すべきだったような気がします。

第3に、正確性に関連して、政府発表に使用した用語が適正であったかも考えるべきです。原発に関して「格納容器の健全性」くらいであればともかく理解出来ましょうが、後に「水素爆発」とより正しい表現に変更するのであれば、「爆発的事象」ではなく「水素爆発の可能性」といった分かりやすい言い方で国民に伝えるべきです。「炉心溶融」についても、CNN では明確に "meltdown" と表現しているんですから、日本語でも聞き慣れない専門用語より「メルトダウン」の方が国民の間により正確に伝わったように私は受け止めています。

特に、最後の点について、一般には分かりにくい専門用語を散りばめるのは、「よらしむべし、しらしむべからず」の時代の政府のやり方です。国民の側のリスクを受容する能力はかなり成熟した一方で、政府の側のリスクを発信する能力にそれほど向上が見られないと考えるのは私だけでしょうか。政府発表は国民の間でパニックを防止するためにもっとも重要な情報手段です。コスモ石油の事故に関するチェーンメールは私も受け取りましたが、こう言った種類の怪しげな情報に対抗するためには、正確な情報をタイムリーに提供するのがもっとも効率的です。これに失敗すれば、極めて非効率で強権的な実力行使によりパニックを防止するしかありません。また、政府の発表をメディアが咀嚼して国民に伝えるわけですが、メディアは国民の側で選択の余地が十分あり切換えコストも決して高くない一方で、少なくとも短期には政府の選択の余地は限られます。政府のより成熟したリスク管理能力と情報発信が求められます。

映画「チャイナ・シンドローム」と同時期に発生したことで知られるスリーマイル島の事故の後、米国は今に至るまで30年余りに渡って原子力発電所の新規建設が出来ていません。原発に関する正確でタイムリーな情報提供がなされないと、日本も同じことになる可能性があります。同時に、世界の目が日本の原発情報に集まっていることも見逃すべきではありません。

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