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C-2は民間転用輸出はやるやる詐欺

 今月号の月間「航空ファン」でC-2の特集がありましたが、全体的に空自広報の主張をそのまま報じたような記事が多く、批判的な視点でのものはありませんでした。
 
 特に長谷部憲司氏の「C-2の開発経緯と技術的特徴」では、
「C-Xの開発時には不整地滑走要求されていなかったというが、C-1の後継機ということを考えれば、当然想定されているだろう」

 というくだりは問題です。ぼくは今年も川重の関係者にこの件を尋ねましたが、そのような事実はありません。空自が要求に出さないものを勝手にメーカーがやったら問題です。まして現状のように不具合続出で開発が遅れていれば尚更です。
 これは筆者の願望に過ぎません。一種の世論操作であり、読者を惑わすだけです。
 程度の悪い軍オタがこれを根拠に「C-2は不正地運用できる」とか主張しちゃいそうです。

 また未だに民間転用機にも前向きな記述が見られましたが、これは実際は絶望的です。

 過去あちこちで書いておりますが、C-2はエアバスのA400Mのように、開発に平行して耐空証明をとっておりません。民間機として売るとなると全く新たに耐空証明を取らないと行けません。多用されているコンポーネントもこれまた証明を取らないといけません。

 開発に平行してやっていれば、まだしも新たに耐空証明をとるとこれは手間も費用も何倍もかかります。また国産コンポーネントに変えて、実績のある海外製品を多用する手もありますが、そうなると設計やらやり直しです。飛行試験もこれまたやり直しです。
 しかも川重はその経験がない。

 そもそも官需とボーイングなどの下請けなどで、リスクをとらないことがセカンド・ネイチャーとなっている川重がそこまでコストをかけてやるはずもありません。
 民間転用に多額のコストをかければ、その採算は遠のきます。しかも売れたのが僅か数機で終われば、何十年も部品の供給とアフターサービスを行なわないといけません。そうなれば長年にわたって赤字を垂れ流すことになります。

 しかも世界中にアフターサービスの拠点を作らないといけません。これにも費用がかかります。MRJでどれだけ三菱が費用と手間をかけているか見れば、大型航空機の販売がどれだけ大変かはわかろうというものです。
 つまり民転機ビジネスは絵に描いた餅です。それは川重もはなっから承知しているでしょう。

 実際に同社の関係者も民転機の商売は事実上不可能だと漏らしておりました。

 これらのことから考えれば、川重がまともに民転機ビジネスを考えているとは思えません。単に政府の音頭にのって、「民間市場を目指してコストを下げます」という、ポーズをとっているだけでしょう。
 ですからまともに営業するわけでもなく、航空ショーあたりでSJACのパビリオンでちょっと出展し、パンフを配るのもアリバイ工作に過ぎないでしょう。ですが民転のためのマーケティングは政府のカネで行なわれております。それで潤う人たちもいるのでしょうが、これこそ税金をドブに捨てているようなものです。


 可能性があるのはUAEなどから問い合わせが来ていますが、軍用としての輸出でしょう。が、それも不整地での運用ができない「民間機」とわかれば、どうでしょうか。それでも買いたいという奇特なユーザーはいないでしょう。

 更に言えば、この特集ではペイロードの減少などに関してはあまり、突っ込んだ分析をしておりません。防衛省のLCC報告書にも本誌記事のC-2のペイロードはC-1の3倍とありますが、であれば24トン程度です。ところが今年空幕長にこの件を尋ねましたが30トンだと仰っておりました。24トンと30トンでは随分と開きがあります。
 不具合のあった構造を強化するならば、当然重量増加が想定されます。実際に26トン程度とする報道も過去ありました。
 それでも空自は30トンの看板を下ろしていまません。


 官やメーカーのいうことを全部そのまま原稿にするならば、それはMAMORのような広報誌のお仕事です。我々の商売は疑ってなんぼです。

 官に不都合な記事はかかず、そのような質問も行なわず、願望と希望を混在した記事を専門誌が書けば、政治家も含めてかなりの人間が信じるでしょう。
 であれば自衛隊の装備は世界最高レベルという無邪気に信じ、後は予算を増やすだけとばかりに騒ぐ政治家やら「保守の論客」が増殖するわけです。果たしてそれが国益になるでしょうか。
 

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
「駐在武官」を機能させるために必要なこと
増員だけでは強化にはならない
http://toyokeizai.net/articles/-/55366

『なぜ自衛隊は「暴発する機銃」を使うのか』
2014年11月09日
http://toyokeizai.net/articles/-/52889

アパッチ攻撃ヘリの調達、なぜ頓挫?
問われる陸自の当事者能力
2014年11月02日
http://toyokeizai.net/articles/-/51971

オスプレイ選定の不透明、対抗馬は商用機?防衛省は「複数候補から選んでいる」と強弁
2014年10月26日
http://toyokeizai.net/articles/-/51614

御嶽山への自衛隊派遣、口を挟むとサヨク?必要なのは事実に基づく冷静な議論
2014年10月05日
http://toyokeizai.net/articles/-/49744

戦傷者は「想定外」という、自衛隊の平和ボケ
「国内では銃創や火傷は負わない」との前提
2014年09月17日
http://toyokeizai.net/articles/-/47994

strong>WEBRONZA+に以下の記事を寄稿しました。
厚生年金強制加入は、景気をさらに悪くする
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014111400007.html?iref=webronza

Japan in Depth に以下の記事を寄稿しました。
【防衛省・高機動パワードスーツ開発は税金のムダ】~装備開発の在り方、抜本的に改めよ
http://japan-indepth.jp/?p=12178

【防衛駐在官の質の向上を図れ】~外務省出向システムでは機密情報が防衛省や内閣府に届かない?~
http://japan-indepth.jp/?s=%E6%B8%85%E8%B0%B7%E4%BF%A1%E4%B8%80

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