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MLB新コミッショナーの驚きの初仕事

ご存知の方も多いと思いますが、現MLBコミッショナーのアラン・“バド”・セリグ氏は今年いっぱいで退任し、来年1月よりロブ・マンフレッド氏が新コミッショナーに就任します。既に水面下では実質的にマンフレッド氏がトップとしてリーダーシップを発揮しているようですが、その初仕事の内容を知ってとても驚きました。

これは既にSBJなどいくつもの専門誌が報じているものですが、現状のビジネス環境に合わせて大きな組織改編を行うというものです。中でも象徴的な人事は、これまで15年近くMLBのビジネス部門のトップとして手腕を発揮したティム・ブロズナン氏に代えて、MLBのネット事業を統括するMLBAMのトップであるボブ・ボウマン氏を据えるというものです。

これは、業界を知る人にとっては衝撃的な人事です。なぜか?

MLBにはMLBAM以外にも、MLB PropertiesやMLB Enterprisesなどいくつもの関連会社があるのですが、その中にあってMLBAMは異色の存在です。これは、日本でもネット企業のカルチャーが他の伝統的企業とは異なるのに似ていて、良く言えば若くて自由闊達な、悪く言えば強烈なエゴを持った尖った人材が集まって出来ている会社です。

多くの関連会社がMLB本部のあるミッドタウンのパークアベニューに身を寄せているのに、MLBAMだけ「シリコンアレー」とも呼ばれGoogleなどがオフィスを置くチェルシー地区にあるのもこのためかもしれません。社員も若くイケイケな感じです。リーグ機構の職員は皆スーツでビシッと決めていますが、BAMのオフィスに行っても皆カジュアルで、スーツを着ている人を探すのは大変です。

これは日本でも同じだと思いますが、ネット企業の若手起業家が大企業の経営者から距離を置かれるような感覚でしょうか。だから、BAMはMLB内でも敵が多く、その存在を疎ましく思っている人も少なくなかったのです。しかし、設立から10年で、全国放送の放映権料に匹敵する7億ドル(約840億円)以上の市場を創り上げたMLBAMには、誰も表だって文句を言えなかったわけです。

普通に考えれば、テレビとネットを統合して、メディアとしてシナジーを考えながらビジネス戦略を練っていくのが常識なのでしょうが、実はMLBではテレビ放映権とネット事業権がこれまで統合管理されていませんでした。テレビはMLB本体(ブロズナン氏管轄)、ネットはBAM(ボウマン氏管轄)でバラバラにビジネスが展開されていました。

ただ、BAMがMLB本体(正確にはMLB Properties)に気兼ねなく強力にネットビジネスを推進することができた背景には、「テレビとインターネットビジネスはカニバライズしない(食い合わない)」というコンセンサスが米国スポーツ界では既に確立されている点は指摘しておくべきでしょう。

で、この度、マンフレッド新コミッショナーが誕生と共に断行したのが、テレビ事業とネット事業の統合でした。そして、そのトップに据えられたのがネット事業のトップだったボウマン氏だったというわけです。

これは、見方を変えれば、オールドビジネスからニュービジネスへの新陳代謝を行ったということです。この人事により、ブロズナン氏はMLBから去らざるを得なくなりました。この辺りは非情にも見えますが、コミッショナーの職務はMLBの最高経営責任者(CEO)として、その事業価値を高めることです(これはメジャーリーグ協約に明言されています)。これはコミッショナーにしかできない仕事でしょう。

MLBは今季過去最高の90億ドルの売上を予測し、現在の為替ベースでは、初めて1兆円の大台に乗せたことになりました。20年前のMLBでは、ちょうどストが起こって売上が12億ドルに減じた年でした。20年で7.5倍の計算ですが、この間収益源別に売上構成を分析してみると、中でも大きく収益を伸ばしているのがテレビとネットです。

ボウマン氏がMLBビジネスのトップになることで、今後MLBは更にメディア企業としての性格を強め、収益を伸ばしていくものと思われます。その布石は打たれました。米国スポーツビジネスの成長を支えている一端は、こうしたダイナミズムなんだなぁということを改めて実感した次第です。

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