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一歩ずつの成長なんてナンセンス──無印良品に学ぶチーム開発「王道の捨て方、理想の商品の作り方」

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前例なき超スピード開発をもたらした「2つの脳」

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空気清浄機の制作はどうやって始まったんですか?



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中国のPM2.5という環境問題に対して、社長の金井からも「皆さんのお役に立てるものを無印良品で作ろう」というところが始まりでした。無印良品の店舗は近年グローバル展開しており、中でも中国には100店舗以上を構えています。

10年ほど前に、OEMで製品開発した空気清浄機がありましたが、ここ数年で深刻化するPM2.5や花粉などに対応できるスペックで新たに開発しようということになりました。

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金井社長肝いりのプロジェクトとなると、社内や周囲を巻き込んで説得しなくても進んでいった?



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この空気清浄機は、実は、家電メーカーのバルミューダ様と共同開発をしたものです。ですから、社内の説得というより、協業していただいた社外のお取引先様の巻き込みにパワーを要する部分がありましたね。

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プロジェクトに着手した時期、また、どれくらいの開発期間を経てのリリースでしたか?



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今回はスーパースピード開発でした。2013年の春夏にプロジェクトが走り出して、2013年12月に本格スタートして、翌年6月には仕様が固まりましたから、開発期間は約半年間くらいでしたね。現状の中国の環境に向けて、1日でも早く世の中のお役に立てる製品を出したかったのと、今年の12月に予定している中国の旗艦店オープンに合わせて物づくりをする狙いがありました。

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社外の会社と連携し、関わる先が増えることで速度が落ちると想像してしまいますが、逆に早まったのですか?



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早まりました。今回、僕らは製品のコンセプトや品質基準、バルミューダ様が技術設計といった具合に同時並行的に進めることで、開発期間を半分に短縮することができました。

日本の大手家電メーカーさんの組織は一般的に、営業窓口、マーケ部門、デザイン部門、設計、品質管理など縦割りです。チームからチームへと橋渡しするやり方はていねいな分、時間もかかりますが、それがなかったんですよね。

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2つのチームを率いるプロジェクトを回す中で、気を付けていたことはありますか?



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無印良品の思いや見据えているゴールを、しっかりコミュニケーションすることを心がけました。それにより、開発の進行のスピードが一気に増しました。

無印良品とバルミューダ様が共に目指すゴールについて、バルミューダ様の寺尾社長とも何度もお話させていただきました。バルミューダ様と無印良品と、脳みそが2つになったわけです。

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脳みそが2つ?



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今回の空気清浄機では、2枚の近接したファンが逆回転するものを使っています。これは、無印良品が過去に開発したUSBのデスクファンの「小さなパワーで風を前方に大きく飛ばす」という考え方を応用したものです。バルミューダ様に提案してみたところ、コンパクトながらパワーも出る今回の空気清浄機が誕生しました。

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アイディアやコンセプトに強い良品計画さんと、技術力が高いバルミューダさんの共同開発ならではの商品だったのですね。



夢と現実で綱引き、最終的に理想に引っ張るリーダーシップ力

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チームづくりについて教えてください。プロジェクトリーダーとしてのミッションや役割はどんな感じでしたか?



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大事なのは夢というか、これを目指しているというビジョンに立ち戻ることですかね。



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開発を進めて行くと、たくさんハードルが出てきてつまづいてしまうんですよね。コスト的に無理だとか、品質的にアウトだから今週は難しいとか。そういうハードルに直面します。そこでもう一度、良品計画、バルミューダ様を含めて全員であそこまで絶対にいくぞ! というゴールを一緒に見続けるチーム作りが、リーダーとしての役割だという風に思います。

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チームに対してビジョンを伝えて浸透させていくために、特に気をつけていたことはありますか?



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ベタですが、常にコミュニケーションをとることです。開発チームは、全員すごく近くにいるので、進ちょくの話など目の前のことを雑談のように話しながら、2015年、2016年の話をしたりしています。

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大伴さんはチームをポジティブに率いていくのですね。



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かもしれません。社長の金井からは「お前は楽園ばかり見過ぎだ」と言われるくらいなんです(笑)。そういう面では、1つずつ地道に塗り替える部分を見てくれるメンバーにも支えられています。

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夢や長期のビジョンに対して、現実を見据えた上でブレーキを踏んでくれるメンバーの方もいらっしゃるんですね



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はい。例えば商品部の品質管理責任者は、実現可能性を見るのが仕事ですよね。そういった人とわたしのような夢に向かってリードする人、お互いの綱引きがあるから成り立っていると思います。リアルなことばかり話していても、ありがちな製品しか生まれなくて、夢と現実で綱引きをする。最終的に、現実を踏まえて理想に引っ張るような感じです。

飛べ──「100を101に」はナンセンス、全員が130を目指す

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前例のない空気清浄機の開発だったと思います。リスクを恐れない文化があるのですか?



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そうですね。むしろ、失敗をするくらいまでのリスクをとる行動力の方が求められます。「安心が一番ですから、101、102と少しずつ成長しましょう」というのはナンセンスで。

社内でも、よく「現場力」と言う話をするんですが、現場でしっかり考えてリスクをとるのであれば、「稟議を上げて来なさい。ちゃんとGOするから」というスタンスです。

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段階的に開発を進める王道の手法にこだわり、新しい発想ができていない企業も少なくありません。新しいイノベーションを生み出すヒントはありますか?

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そんなおこがましいことは言えませんが……。社長の金井を中心に、会社全体が「飛ぶこと」を望んでいるのが無印良品なんですよね。

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「飛ぶこと」ですか。個人のチャレンジ精神は必要となり、自然と後ろ向きになってしまいがちですよね…



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無印良品では、経営者自身が常に飛ぶことを考えているので、そのマインドが社員にも伝わっているんだと思いますね。その企業が一番強いところの曲線を101、102と緩やかに上ることはできても、いきなり130には飛べないでしょう。

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生活者が求めているものをとことん追求することもキーですよね。



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そうですね。お客様に喜んでいただいて、共感していただくことが先決です。売上げは、必ず後からついてくると思っています。売上げを作るために物づくりをした瞬間に、きっと、やはり横並びの製品ができてくると思うんです。

でも、そこに答えはありません。「この商品は本当にこのままでいいのか?」と当たり前を疑問視し、自分に対してしっかりマーケティングをする。これからも、生活者の皆さんに製品をお届けしたいと思っています。

文:三橋ゆか里/撮影:橋本直己/編集:吉田将来

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