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安倍政権が表に出さない「本当の目標」~田原総一朗インタビュー

衆議院総選挙は、自民・公明の与党の圧勝に終わり、安倍内閣が引き続き政権を担うことが決まった。田原総一朗さんは今回の選挙をどう見ているのだろうか。衆院選後にインタビューして、分析してもらった。【大谷広太(編集部)、亀松太郎】

総選挙の目的は「4年間の時間」を確保すること

今度の総選挙は、野党もマスコミも、安倍首相の作戦にまんまと乗せられた。

安倍首相は衆議院を解散するとき、来年10月から実施する予定だった消費税の増税を18カ月先延ばしにするのはとても大事な問題なので国民に信を問う必要がある、と言った。

そのため、野党もマスコミも、今度の総選挙は「アベノミクスの成果」を問う選挙だ、となった。その結果、選挙の争点は「経済、経済」となったが、これは、安倍首相の作戦に乗せられたということだ。その作戦は成功して、自民党は291議席という、ほぼ狙い通りの議席を獲得できた。

安倍首相にとって、今度の解散・総選挙の本当の目的は、4年間の時間を確保することだったと思う。いまから次の総選挙まで4年間の時間を確保して、第一次安倍内閣のときからの悲願である「戦後レジームからの脱却」を完成させるのが狙いだ。

実は、第二次安倍内閣になってからは、「戦後レジームからの脱却」と言わなくなった。なぜかというと、それには国家の問題や安全保障の問題、憲法の問題がからんできて、こういうことを言い出すと支持率が落ちるからだ。

第二次安倍内閣では、こういうことを言わないで、もっぱら「経済、経済」「景気、景気」と言ってきた。これは菅官房長官らの作戦だったと思うが、それが成功した。

「戦後レジームからの脱却」の4つの柱

では、「戦後レジームからの脱却」とはなにか。僕は4本の柱があると思う。

1つ目は、東京裁判の事実上の見直し。東京裁判は、日本の昭和の戦争が侵略戦争だったと決めつけ、A級戦犯を逮捕・起訴し、裁いた。その結果、7人が処刑された。この東京裁判で作られた「東京裁判史観」を変えたいというのがある。

なぜこれを変革したいかというと、靖国問題に結びついているから。安倍首相やその周辺の人々は靖国参拝を正当化したいのだが、そのためには、東京裁判史観を変えるしかないということだ。

2つ目は、憲法改正。いまの憲法は1946年、日本がまだ占領下にあったときに作られたが、安倍首相は「米軍が作り、押し付けた憲法だ」と考えている。

この憲法には、日本の「民主化」と「弱体化」という2つの狙いがあった。言論・表現の自由や結社の自由、宗教の自由といった基本的人権の尊重や、主権在民、男女同権を明記し、日本の「民主化」を進めたのは良かったが、日本の「弱体化」というのは問題だった。その根本として、憲法9条がある。

憲法9条は、日本が軍隊を持たないことを前提にしているが、その後、日本は自衛隊を発足させた。その結果、いまの憲法下では、自衛隊が非常にあいまいな存在になっている。この憲法9条を改正して、日本を「戦争のできる国」にする。それが安倍首相の目指すところだ。

3つ目は、対米従属からの脱却。いまの日米安保条約は片務条約で、日本が危機に陥ったときにアメリカが日本を救うことになっているが、逆にアメリカが危機に陥ったときに日本は何もしないというルールだ。

そのため、戦後の日本はずっと対米従属でやってきた。つまり、アメリカの言うことは何でも聞き、主体的な外交戦略をもたないというスタイルだ。これを変えて、日本とアメリカを対等に近い関係にしたい。そのためには、憲法を改正して日本をもう少し強い国にしようというのが、安倍首相の考え方だ。

4つ目が、教育基本法の改正。これも、憲法と同じく、占領下の日本にアメリカが押し付けた法律という側面がある。そして、その内容は、国民の権利や自由が強調されていて、国家や家庭に対する義務や責任が希薄という特徴がある。この辺を作り直したいということだ。小中学校での道徳の正式教科化はその一貫といえる。

「本当の目標」を前面に出すと、国民に受け入れられない

このような4本の柱からなる「戦後レジームからの脱却」。これを本格的にやるために、安倍首相は4年間の時間を確保することに成功した。

今回の総選挙では、この「戦後レジームからの脱却」とほぼ同じ内容を正面から訴えた「次世代の党」が惨敗した。やはり、この問題を前面に出すと、国民には受け入れられないということだ。

だからこそ、自民党は総選挙で「戦後レジームからの脱却」をテーマにしないで、「経済、経済」で押し通した。そして、その作戦がまんまと成功した。

衆院選では大勝したが、これからしばらくは、この「本当の目標」を表に出さないだろう。まだ、先に参議院選挙が控えているからだ。参院選で6割以上の議席を確保するまでは、表に出さないと思う。

野党やマスコミは相当しっかりしないと、安倍政権にしてやられてしまう可能性がある。

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