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「福祉は施しではない」 千葉市が目指す子育て支援と高齢者政策 千葉市・熊谷俊人市長に聞く市政改革の足跡(3) - 柳瀬 徹

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「呟く市長」の目指すもの

――半歩先にある像を目指して言葉を選ばれて、発信されているんですね。

熊谷:人間は、主体的に取り組んだときに、一番成果が上がると思っています。人にやらされると、結局はロクな仕事にはならない。しつこいくらいに語りかけて、気がついたら同じ方向を向いていた、それが理想かなと思っています。財政のことも、最初はそれほど関心のなかった人たちが、今は私以上に財政を気にするようになってきています。

熊谷:これは私自身の反省なのですが、就任1年目は時間もなかったので、トップダウンで行ったことも多かったんです。ただ、このやり方だと職員の中には中途半端な仕事をするようになる者もいるんですね。公務員は基本NOとは言いません。とりあえずはやってくれるのだけれど、納得してやっているわけではない場合、パフォーマンスはあまり良くなくて、うまくいかなかった事業もいくつかありました。

 強制ではなく納得が必要なんですね。しつこくは言うけど、1回目から強制はしないことを心がけています。2回目、3回目と少しずつ強く求めていく。千葉市の職員は人の良い方が多いので助かっています。

――ツイッターでの対話会なども継続されていて、市政の透明化にはどの首長にもまして熱心ですが、議論が「荒れる」ことへの懸念はありませんか?

熊谷:リスクとしてはありますよね。できる限り建設的な議論をするしかないのですが、私は議論は平行線でも構わないと思っているんですよ。

 人間は、なかなかその場では納得できないこともあります。それまでずっと考え続けてきて「こうだ」と思っていることについて、違う意見を言われて「はい、そうですね」と改められる人はそうはいません。

 その瞬間にその人を説得することはできなくても、そのやり取りを見ている人たちが考えてくれれば、それでいいと思っています。傍目八目なときに、人は冷静になれる。そのときに自分なりに価値判断しておけば、自分が当事者になったときにも、ある程度冷静に対処できると思うんです。

 リスクはあるかも知れないけど、これは自分にしかできないことだとも感じています。私は「千葉市長」という立場は言論プラットフォームなのだと思っています。千葉市に関わる情報がここに集約されるので、共通データベースにもなる。ここにみんながアクセスして、市について情報を得て、あるいは提案できる、そんなプラットフォームとして機能していれば、あとは私のアカウントなんてどうなってもいいんですよ(笑)。

 私の考えがいつも正しいという気はありません。私なりに考えていることを、見ている人が判断基準を持てるように伝えていく。こういう事情とこういう要素があってこのような決断になった、ということを明らかにするためにやっています。140字しか書けないので少々つっけんどんになってしまうのはお許しをいただきたいのですが(笑)。

 ツイッターの便利だと思うところは、市政についての反応がリアルタイムでわかることです。言ってみればリアルタイム視聴率のような感覚で、リツイート(RT)の数もわかるし、RTした人がそのあとに何を言っているかも追うことができる。私はエゴサーチはしないんですけど、私のツイートをRTした人がそのあと何を言っているかは、時間のあるときには見るようにしています。何を感じてRTしたのかがわかるので、市政についてのマーケティング上、大変に助かるツールなんです。SNSだけではなく対面でのコミュニケーションでも、どういう風に説明すれば納得されやすいかも、ツイッターはヒントを与えてくれています。

 ツイッターは政治家にとって格好の自己鍛錬ツールなんです。ツイッターは怖いです。怖いからこそ鍛えられる。私はかなり育ててもらっていると思います。

 私もツイッターで「失敗しちゃったな」とか「こうしたほうがよかったな」と思ったことは無数にあります。それが発想の改善につながりますし、日常の業務でも記者会見でも、こういった取材でも活かしているつもりです。ここまで養成してくれるツールが自由に使えるわけですから、政治を志す人はみんなやればいいのにと思います(笑)。

 SNSでダメなパターンはだいたい共通していますよね。公益的な目的なのか、私的な目的なのかは透けて見えてしまいます。驕りも見えてしまう。私も驕っている瞬間に呟いたものは、あとから反省することになりますが、失敗も残るのがすごくいいんですよ。時間を置いて改めて見るのは辛いのですが、戒めにもなりますから。

 良い時代に市長をやらせてもらっているな、と思いますね。ツイッターがない時代に市長になっていたら、私の場合はやりたいことの半分もできていなかったかも知れません。5年早くてもツイッターはありませんでしたから、まさにジャストタイミングだったんですね。

(11月19日(水)千葉市役所内 市長室にて収録)

熊谷俊人(くまがい・としひと)
1978年奈良県天理市生まれ。父の転勤に伴い千葉、大阪、兵庫に移り住む。2001年3月に早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業し、NTTコミュニ ケーションズ株式会社入社。2006年、民主党の市議会議員候補公募に応募、合格。翌年4月の千葉市議会議員選挙(稲毛区)に立候補、当選。さらに 2009年に千葉市長選挙に立候補、当選。31歳の市長は当時の全国最年少であり、政令指定都市としては歴代最年少。2013年の千葉市長選で再選され る。千葉市中央区に妻と二人の子と暮らす。ツイッターアカウントは https://twitter.com/kumagai_chiba


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